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第三章 辺境伯の箱庭
極地会第十九回目(議事録)
司会:皆様、本日も暑い中お集まりいただきありがとうございます。
ベン・ダウ公爵:本当だ。ついさっきまでプールサイドで美女たちとバカンスを楽しんでたってのに、何で今はオレの前に干からびたジジィが座ってんだよ。最悪の気分だ、チェンジ。
バジル・グリーン公爵:お前も老いれば分かることだが、真の強さは孤独と共にある。
オーランド・デボワ伯爵:それ、良い言葉ですねぇ。今度妻の前で使わせてもらいますよ。
ディノス・ディノ公爵:今日はご夫人は不参加ですか?
オーランド・デボワ伯爵:ええ。なんでも、先日のマゼンタスの件で腰を痛めたらしくて。リンレイ氏ごと重たい檻を運んだんだから、当然かな。可哀想に屋敷の中でもずっと車椅子生活さ。
ディノス・ディノ公爵:なるほど、それじゃあリンレイ公爵の片腕は手品で消してるわけではないんですね。いつ生えてくるのかワクワクしていたが。
(リンレイ公爵が魔術を行使しようとしたため、事務局員が注意を促す。両者席を立ったが、不発のままで再び着席)
シン・リンレイ公爵:レオン・カールトンが姿を見せたんだ……!檻を壊すために外から爆発させるしかなかった。あの男が魔術を使うのを見たことがある者は居るか?まるで悪魔のようだ。
バジル・グリーン公爵:本家本元に言われるようじゃあ、よっぽどだ!是非見てみたいのぅ。魔剣で弾き返せると思うか?
ベン・ダウ公爵:抜く前に潰されて終わりだな。
(グリーン公爵のグラスが破裂。事務局員が清掃作業に当たる。公爵には口頭で注意を促す)
司会:さて、極地会のメンバーであられる皆様においては気になるところかと思いますが…… ついに黒の魔導書の場所が割れました。
オーランド・デボワ伯爵:やった!賭けは僕の一人勝ちだ!!
ディノス・ディノ公爵:残念ですね。あの程度の教師まで情報が行き渡っているなんて。てっきりプッチとミドルセンにしか共有されてないとばかり……
オーランド・デボワ伯爵:みんな僕に8000万ミラベルを送金してくれよ!今この場で現金払いでも良いし、デボワ家の口座に振り込んでくれても良い!嬉しいなぁ、こんなに嬉しいのはシャーロットが自分から僕にキスしてくれた時以来だ。
ベン・ダウ公爵:興味はねぇが、ちなみにそれはいつのことだ?
オーランド・デボワ伯爵:今朝のことさ!
ベン・ダウ公爵:そうか、死ね。
(ダウ公爵が魔具を取り出したため強制退場。デボワ伯爵は水のおかわりを注文。)
司会:会議を進行します。魔導書はメンバーの皆様の読み通り、プリンシパルの地下で監視されているようです。しかし、必ず何か迎え撃つための策が施されているはず。
ディノス・ディノ公爵:分かっていることです。金を剥き出しで保管する銀行はない。リンレイがやったように我々が学校に潜入しますか?
バジル・グリーン公爵:否、それは難しいだろう。今回の件を受けてプリンシパルも外からの侵入者に警戒するはずだ。ミドルセンがまだボケていなければ、だが。
司会:駒を使いますか?
ディノス・ディノ公爵:駒?
司会:はい。使い勝手の良いものを、何セットか調達しています。マスターからの指示で。
オーランド・デボワ伯爵:マスターだって?それは何処かでこの会議を傾聴している出資者のことか。極地会なんてセンスのない名前を付けたことは恨むけれど、金払いの良い男は好きだよ。ありがとう!
ディノス・ディノ公爵:男か女か分かりません。我々はマスターに会ったことがないのですから。
オーランド・デボワ伯爵:こういう細かい気配りが出来るのは男って決まってるんだ。女は着飾ることに必死で見せかけの愛ばかりだからねぇ。
バジル・グリーン公爵:夫婦喧嘩でもしたか?
オーランド・デボワ伯爵:いいや。僕はそんな空っぽの女たちが大好きなもんでね、妻に不満はない。
司会:それでは、駒を使用する準備を進めさせていただきます。会議の開催が頻繁で申し訳ありませんが、今が大事な時期ですので、どうかご理解を。
ディノス・ディノ公爵:問題ないよ。君もご苦労なことだね、仲介は楽ではないでしょう。
司会:いえいえ。すべては極地会の目指す、公平な正義と魔術の復興のためです。
(リンレイ公爵を除いて参加者は全員離脱。事務局員へグラスの回収を指示。)
シン・リンレイ公爵:君も大変だな。誰に付いているんだ?
司会:私は司会ですので無色透明、自我はありません。極地会の運営をスムーズにサポートすることが使命です。
シン・リンレイ公爵:近頃王都で気味の悪い死体がいくつか上がっていると聞く。被害者は皆、全身の血を抜かれてミイラのようになっているとか。
司会:書記、録音を止めて退室してください。ここから先はオフレコです。
【出費】メンバー五人への水代(デボワ伯爵は二杯分)。グラスの修繕費用はダウ公爵家に請求。
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