魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第四章 二つの卵と夢

59 一人旅



 王都から電車に乗ってサガンまで。
 サガンからは陸路より空路の方が速いから、奮発してコレットは航空券を買った。前回、サマーキャンプで学校からバスでマゼンタスまで向かった際はほとんど一日を移動に使ってしまったのだ。

 生徒たちの疲れ具合を思い返すに、あの移動方法はあまり得策とは言えない。

 サマーキャンプの参加者である学生たちは、予定より早く切り上げられた合宿に心残りはありそうだったものの、事情が事情なので納得したようだった。帰ってすぐに保護者向けの手紙を作ったけれど、まさか「悪魔に襲われました」と書けるわけもなく、森の地形に不慣れであったためと説明した。


 ルピナス・アーベルはすでに退院したらしい。
 シモンズ邸のあるペルケマリアから王都に戻って、三度ほど学校に顔を出した。通例の魔力の供給と、サマーキャンプで起こったことを受けての会議への参加だったけれど、ミドルセン曰く「結界の強度を上げるから今まで通りの対応で良い」とのこと。

 黒の魔導書グリモワールが世に出たらどうなるかぐらい、コレットでも分かる。

 しかし、プリンシパルの最高責任者である校長がそう言うのならば、教師陣は信じるしかない。新たに腕の立つ魔法使いを雇うという案もあったが、ミドルセンはあまり賛成ではなさそうだった。

 窓の外を白い雲が通過する。
 コレットは心地良い眠気に目を閉じた。



「………おい」

 突然だけど、夢の中でも明確に「夢を見ている」と分かることがある。経験から言うと、これは夢。

 夢だと分かっている夢は不思議なもので、意識が半分目覚めているような感覚がある。人の声や空気の匂いがやけに現実的に感じるのだ。今回で言うと、爽やかなシトラスの香りは悪くない。

「いったいいつまで寝てるつもりだ。もう俺たち以外の乗客が降りたぞ、良い加減目を開けろ」

「大丈夫です……夢なので」

 言った瞬間、むぎゅっと頬が引っ張られる。
 あまりの痛みにコレットは飛び起きた。

 いつの間にやら飛行機は目的地に到着したようで、機内はすっからかんになっている。入り口に立つ添乗員が困った顔でこちらを見ているのを発見して、慌てて立ち上がった。

「コレット先生、よだれが付いてますよ」

「っふぁ……!?」

「嘘です」

 経験値から判断すると、これは夢。
 だってコレットの一人旅に同伴者は居ない。

 だけどもどうだろう。

 視線を下げれば、座席にゆったりと腰掛けるのはまだ幼いレオン、というかコレットの慣れ親しんだノエル・ブライスの姿だった。

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