魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第四章 二つの卵と夢

62 不器用

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「ええっ!?パパの仕事が終わったばかりだっていうのにもうノエルくんは帰るのか?泊まっていけば良いじゃないか!」

「彼は未成年だそうよ。親が心配するでしょう」

 父リーマスがショックを受ける隣で、母が冷静に自分の意見を述べる。母ソワンが話すことはいつも正論なので、何も言い返せない。

 どういうわけかコレットに付いてアルベスティを訪れたレオンは、夕食を食べたら帰ると主張した。彼の言い分では「夜になると親戚が戻ると言っていたのを思い出した」らしい。

 とうもろこし農家を生業とするクライン家では、夕食の際にもたくさんの穀物が並ぶ。母には悪いけれど、王家の人間であるレオンが食するにはいかんせん質素過ぎるのではないか、という不安で胸がドキドキした。


「とても美味しいです。料理長は一流ですね」

「この家の料理長は私よ、気に入ったならいつでも食べに来たらいいわ。次はご両親にも断った上で」

「ありがとうございます」

 気難しい人間だと思っていた母が、そんなことを言うからコレットはこっそり驚く。父もまた丸い目を更に丸くして妻の顔を見ていた。

「コレットは上手く先生をしているの?」

 母の質問にレオンは笑顔で頷く。

「はい。生徒思いの良い先生です。熱心に指導してくださるので、僕たちも先生を慕っています」

「………そう」

「僕は、コレット先生が担任で良かったと思います。同じ熱量で他人の人生を考えてくれる人は、なかなか居ませんから」

「不器用なだけよ、この子は」

 母ソワンはそう言って席を立った。
 機嫌を損ねたのでは、とコレットがその背中を目で追っていると、父リーマスがこそっと口元を手で隠して内緒話をするように顔を寄せる。


「コレット、少し前に手紙をくれただろう?」

「へ?」

「ほら、応用魔法の……パスバードだっけ?あれが家まで飛んで来てさ、お前の近況を父さんたちに教えてくれたじゃないか!」

 そういえば、ハインツと話した際にそんな話が出た気がする。コレットが遠方に手紙を送るためにパスバードの登録を済ませていた、と彼は教えてくれたのだ。

 巻き戻り前のことなのでハッキリは覚えていないけれど、父がそう言うならばそうなのだろう。ぼんやりと頷く前で、リーマスは目尻を下げる。

「母さん、とても喜んでたんだよ。飛んで来た鳥を返さずに飼うって言い出してね……説得するの大変だったなぁ」

「お母さんが……?」

「素直じゃないんだよね。若い頃からああいう感じなんだけどさ。今だってきっと、ノエルくんの言葉が嬉しくて、一人で泣いてるんじゃないかな」

 目を閉じてビールを煽る父の姿を見つめた。
 そんなこと、今まで知らなかった。

「まったく……不器用なのはどっちだろうね」


 見慣れた料理が、じわっと涙で滲む。

 二十二年間過ごしたアルベスティの家は、変わらない姿でそこにあった。魔法使いになりたくて、なりたくて、がむしゃらに勉強をしてきたけれど。

 もしかしたら、コレットが教師になったことを一番喜んでくれていたのは。


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