35 / 52
35.罪と罰 ※
しおりを挟む「……っん、あ、っああ…!」
「すごいねぇ。どんどんお尻に入っていっちゃう。こういう道具は使ったことがない?初めてなんだね」
「いたぃ、抜いて、」
「そんなこと言って、いつももっと太いのを挿れているんだろう?王女に聞いたよ。君のパートナーは狼の獣人だそうだね」
「あんっ!」
胸を触られた拍子に、尻に入っていた丸いボールが一つ外へ出た。いくつもの玉が連なったようなデザインのそれは男のお気に入りのようで、楽しそうに舐め回した後で男は僕の尻にそれらを挿入していった。
もう何個ナカに入ったのか分からないけれど、苦しくて吐きそうだ。排泄に使う穴をこんな玩具で弄ぶなんて下品も良いところ。嫌で嫌でたまらない。
本当に、嫌なのに。
「あ、またイっちゃったね。さっきも約束したけどイく時はちゃんと言わなきゃ。それにしても厭らしい子だ」
「……っんん!」
男の手が勃ち上がった僕の肉塊を撫でる。
どうしようもなく嫌でも、反応してしまう自分に涙が出た。おそらくさっき塗られた変な香油に催淫作用があったのだろう。そんな便利なものがあると、兎のレニも言っていたっけ。
こんな風に見ず知らずの男に試されるぐらいなら、ダリアと試してみたかった。彼は嫌がるかもしれないけど。
何度目かの吐精を終えて、僕はぐったりとベッドに突っ伏する。もう眠ってしまいたい。いっそ目なんて覚めなくても良い。全部全部夢で、楽しかったことだけ覚えていれば。
目を閉じてわずかに感じた幸福を掻き消すように、身体の上に汗ばんだ肌が触れるのを感じた。首を捻って見上げるとニタッとした笑みを浮かべて男が僕を見ている。
しっかりしないと、こんなヤツに良いようにされてちゃダメだ。勇気をもって振りかざした拳は空を切って、代わりに強烈な平手打ちを喰らった。唇が切れたのか血の味が口内に広がる。
二度目の衝撃に備えて目を閉じたところで、部屋の扉が開いた。
「楽しんでる?」
「………っ!」
ミーシャは穏やかな表情で数歩足を進めて、すぐに顔を顰めて立ち止まった。
「この部屋くさいわ。オスの匂いがする」
「あぁ、すみませんねぇ。こいつが撒き散らすもんで」
「バレンティン侯爵、好きにしてとは言ったけれど部屋を汚すのはいただけないわ。綺麗にして返してね」
「へへっ、分かりました。おい、ほら舐めろ!」
グッと頭を掴まれてシーツに出来たシミの上に押し付けられる。僕は涙でぐしゃぐしゃになった顔をもう誰にも見られたくなくて、そのまま顔を上げられなかった。
情けない。弱くて愚かだ。
愛情乞食というミーシャの表現はきっと正しい。
僕はこんな風にされている今でも、ダリアに会いたくてたまらない。とてもじゃないけど会える顔じゃないし、ダリアは僕の姿を見て嫌いになるかもしれない。
それでも、賢い王女の言う通りに僕が都合の良いダリアの暇潰しだったとしても、僕はダリアのそばに居たい。
「汚い…醜いわね。女みたいな顔して抱かれて」
「これは貴女が!!」
「アンタは偽物よ。どっちでもない。女にもなれないし、男でもない。残った価値はこれぐらいでしょう?」
「……っあ!」
頭を垂れた陰茎をぐりっと踏まれて声が出た。
後ろで男がモゾモゾと動いて、僕の尻に濡れた何かが触れた。ギョッとして固まる。
「ちょっと、私の目の前でそのような汚物を出さないでもらえる?次の客に回しても良いのよ」
「わぁ、それだけはご勘弁を!こんな上玉の男はなかなか男娼でも居ないんです。息子を宥めるのも良い加減疲れちゃいまして……」
「ああそう。分かってると思うけど、他言は許さないから」
「もちろんです。私にとってミーシャ様は神様も同然!」
僕の尻を撫で続けながら男はそんなことを言う。
王女に醜態を見られている今も耐え難いけれど、王女が去ったらきっとこの男は僕を犯す。来たるべき地獄を思えば、この腐った会話を聞き続ける方がマシだった。
大きく肩で息をしながら、ただ時間が流れるのを待つ。
中身のない賞賛が暫く続いていよいよ王女がその場を去ろうとした時、閉じていたはずの扉がゆっくりと開いた。
「………っな、え、どうして…?」
ミーシャの驚いた声に、僕は入り口の方に顔を向ける。
もう誰だって良い。一人ぐらい観客が増えたところで何も変わらない。誰も助けてくれないなら、いっそここで僕を終わりにしてやくれないか。
しかし、頭から水を被ったように僕は硬直した。
とろんと落ち込んでいた眼を大きく見開く。
「ミーシャ、これはどういうことだ?」
そこには激しい怒りを宿したダリアが立っていた。
34
あなたにおすすめの小説
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる