【完結】悪役令嬢に転生しましたが、聞いてた話と違います

おのまとぺ

文字の大きさ
62 / 95
第五章 祈りの王都ダナ

60.悪役令嬢は宴に行く

しおりを挟む

 王妃エスティ・アイデンの誕生日を祝う会合は夕方から夜にかけて開かれるということで、私たちは太陽が傾きかけた頃合いを見計らってネイブリー邸を出発した。

 私は髪を夜会巻きにして、白いマーガレットの花を飾りに付けている。ドレスは控えめにとお願いしたけれど、母であるモーガンは張り切ってふわふわのお姫様のようなピンク色のドレスを用意してくれた。こんなお姫様ドレスを自分が着る日が来るなんて、という驚きを感じながら膝の上で手を擦り合わせる。

「アリシア、すごく綺麗だね」

 隣に座るニコライが嬉しそうに褒めてくれるので、私はくすぐったい思いを隠すように下を向いて礼を伝えた。

「なんだか不思議な気分だわ。私がアリシア・ネイブリーとして王宮へ足を運ぶって信じられない」
「君はアリシアのファンなんだから、楽しんでその役柄を演じれば良いんだよ。その方が殿下も喜ぶだろうし」
「どうしてエリオット様が出てくるの?」
「殿下は君の婚約者なんだろう?」
「そうだけど…彼は今、他の女の子を王宮に囲っているのよ?それに彼自身が恋心を暴露してたわ」

 どうだろうね、とニコライは曖昧な相槌を打って、窓の外に目を向けると黙り込んでしまった。私は急に訪れた気不味い沈黙に首を傾げながら鞄の中身をチェックする。

 貴族令嬢というものは、あまり多くのものを持ち運ばなくても良いようで、小さな小さなそのハンドバッグの収納力はあまりに頼りない。お化粧直し用の口紅に、縁にレースが付いたハンカチ、サラにもらった御守りのネックレスもなんとなく着けて来てしまった。クロノスいわく術者が死んだら魔力も消えてしまうらしいから、もう追跡も不可能なはずだ。

 偽物だというそれに何の力もなくても、サラが私のことを思ってこれを渡したのではなくても、気休めぐらいにはなってくれるから。現に今まで死なずにここまで来ることが出来たし、験担ぎじゃないけれど、何かの役に立ってくれるのではないかと思っていた。リナリーがどんな反応をするのかも気になる。


 考えごとをしていたせいか、車はあっという間に王宮に到着した。時代が違えば「血税の無駄遣い」と非難されそうな豪華な門構えを潜って、綺麗に整えられた庭の脇に停車する。

 先に降りたニコライの手を取って私は車から降りた。一足先に出発していた両親は既に建物の中に入っているようで、見当たらない。夜になるとライトアップするのか、並んだパラソル付きのテーブルには小さなキャンドルが置かれていた。

「緊張している?」
「当たり前でしょう、もうバックバクよ」
「それは良くないね。君は稀代の悪役令嬢なんだから、胸を張って威張り散らさないと」
「ふふっ、確かにそうね」

 二人で笑い合って入り口へと続く階段を上る。
 あの扉を開けたら、そこにはリナリーやエリオットが居る。リナリー・ユーフォニアは驚くだろうか。それとも例の穏やかな微笑みを見せてくれる?

 知りたい答えは、もうすぐそこまで迫っていた。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...