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幼き復讐者。
しおりを挟む目覚めたとき、部屋はまだ夜の気配を残していた。
わたしは静かに身を起こし、小さな足で窓辺まで歩く。
指も、髪も、肌も――すべてが懐かしい。けれどそれ以上に、胸の奥に宿る確かな感覚があった。
(……本当に、戻ってきた)
庭園の中央には、まだあの忌々しい噴水がない。
レネリアが“見栄えが良くなるから”と設置させたのは、この翌年の春だった。
(あれに何度突き落とされたかしら)
ふと込み上げた笑みを噛み殺す。
静かな夜の庭――この姿の方が、ずっと好きだった。
あの頃よりも今のわたしの方が、冷たくて、ずっと“生きている”。
『……実感、湧いたか?』
頭の奥に、低く甘い声が響く。
ディアブロ――契約を交わした悪魔。
魂を喰らい、願いを叶える闇そのもの。
「ええ……ありがとう、ディアブロ」
『礼なんざ要らねぇっつたろ。お前がどれだけ“美味くなるか”を味わう準備だからな。
それに、あいつらにどんな罰を与えていくのか――興味もあるしな』
喉の奥で笑うその声音には、毒と蜜のような甘さが滲んでいた。
『にしても――お前、俺のこと怖くねぇのか?
お前の魂、ちゃんと覗かせてもらったが……震えて泣いて、ただの“弱虫”だったじゃねぇか』
わたしは一瞬、黙って――そして、口元を静かに吊り上げる。
「……あなたより、人間の方がよっぽど怖いわ」
『ほぉ?』
「あなたは、わたしに何もしてない。むしろ、助けてくれた。
気まぐれだったとしても……それは変わらない」
空気がわずかに揺れる。
ディアブロの気配が、まるで玩具を見つけた子供のように艶めき、近づいてきた。
「それに――、わたしがあなたを楽しませて、復讐に燃え、もっともっと“熟して”いけば……
その魂の味も、いっそう良くなるんでしょう?それならあなたは私を今喰べる事は絶対しないもの」
囁いたその瞬間、空間がぴりりと変化した。
ぞくりと、背筋を撫でる熱。
気配が、背後にふっと立つ。
『……最高だな、お前』
耳元に触れるような距離で、吐息とともに囁く声。
唇が首筋に落ちそうなほど近く、濡れたような声音で。
『久々に当たりだと思っていたが――ふぅん、もう香りが変わってやがる。
怒りと欲望に染まって、じわりと熟してきやがった……はあ、そそる』
「……あなたのお眼鏡に叶うといいけれど」
挑発的な微笑みと共に返すと、悪魔は喉の奥で笑った。
『いいぜ。契約以上の“楽しみ”になりそうだ』
「わたしもよ。あなたに喰われるその瞬間まで――もう、我慢なんてしない」
すっと瞳を細める。
(さあ、始めましょう。わたしと、悪魔の復讐劇を)
◆◇◆
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