11 / 25
第11話
しおりを挟む
ルナを保護してから数日が経った。騎士団宿舎の一室で、俺たち三人の生活が始まった。セシリアはルナの世話に甲斐甲斐しく、まるで実の姉のようだった。風呂に入れたり、俺の服を着替えさせたり、俺よりよっぽど手際がいい。ルナもセシリアには少しずつ慣れてきたものの、やはり俺の隣を離れることはなかった。
「お兄ちゃん、これ読んで」
ルナが絵本を俺に差し出す。セシリアがどこかで買ってきてくれたものだ。俺が下手くそな読み聞かせを始めると、ルナは目をキラキラさせながら聞き入っていた。
「むかしむかし、あるところに、可愛いウサギさんがいましたとさ」
俺が読み上げると、ルナは俺の腕にしがみつき、じっと絵を見つめる。
「ウサギさん、お花畑、きれい……」
ルナの無垢な言葉に、俺の心が温かくなる。この子の笑顔を見ると、本当に救われる。
◇
その日の午後、宿舎の部屋にノックの音が響いた。
「はい、どうぞ」
俺が声をかけると、ドアがゆっくりと開き、そこに立っていたのはリリアだった。両手には、紙袋を提げている。
「ケンタさん、セシリアさん、こんにちは!今日の依頼の報告に……って、あら?」
リリアは部屋の中を見て、目を丸くした。俺の隣に座っているルナの姿に気づいたのだろう。ルナは、見慣れないリリアの姿に、俺の背中に隠れるように身を寄せた。
「リリア、どうしたんだ?そんなに驚いて」
俺が尋ねると、リリアは信じられないといった様子で、ルナを指差した。
「あの……その可愛い女の子は……どちら様ですか……?」
リリアの声は、どこか震えていた。俺は苦笑いしながら、簡単にこれまでの経緯を説明した。森でルナを見つけ、保護したこと。そして、記憶をなくしていること。
リリアは俺の話を聞き終えると、すぐにルナの方へと歩み寄った。
「まぁ!大変でしたね……。もう大丈夫ですよ。私がいますからね!」
リリアは優しく微笑みかけ、ルナの頭をそっと撫でようとした。しかし、ルナはびくりと体を震わせ、俺の服にしがみついた。
「大丈夫だよ、ルナ。この人はリリア。俺たちの専属受付だ。優しい人だから、怖くないぞ」
俺が言うと、ルナは恐る恐る顔を上げた。その瞳がリリアと目が合った。ルナはまだ少し警戒しているようだったが、リリアの優しい笑顔に、次第に緊張を解いていく。
「……リリア、お姉ちゃん……?」
ルナがか細い声で尋ねると、リリアは顔をぱっと輝かせた。
「そうよ!私がリリアお姉ちゃんだよ!ルナちゃん、怖くないからね。何か欲しいものとかあるかな?お菓子とか、おもちゃとか?」
リリアは紙袋の中から、色とりどりの可愛らしいリボンや、小さな木彫りの人形を取り出した。ルナの目が、それに釘付けになる。
「これ……くれるの?」
「もちろんだよ!ルナちゃんが元気になったら、もっといっぱい買ってあげるからね!」
リリアはそう言って、ルナにリボンを渡した。ルナは恐る恐るそれを受け取ると、小さな指でリボンをいじり始めた。
セシリアは、そんな光景を静かに見守っていた。彼女の表情には、かすかな笑みが浮かんでいる。
「リリア、助かる。この子も、少しずつこの環境に慣れてくれるだろう」
セシリアが礼を言うと、リリアは嬉しそうに頷いた。
「はい!私にできることなら何でも言ってくださいね!ルナちゃんは、私にとっても大切な家族ですから!」
リリアはそう言って、ルナの頭を優しく撫でた。ルナも今度は拒否することなく、その手に身を任せている。
賑やかになった宿舎で、ルナは俺に常に寄り添い、俺もまたルナの世話を焼くようになる。まるで親子のような関係に、俺は穏やかな喜びを感じた。
◇
ある日、ルナが森で摘んできた小さな花を俺の手にそっと握らせてくれた。
「お兄ちゃん、これ、あげる」
ルナは照れたように俯きながら、花を差し出す。その小さな花は、俺の心を温かく包み込んだ。また別の夜には、絵本を読み聞かせているうちに、ルナは俺の膝の上で安らかな寝息を立てた。その寝顔を見ていると、俺の心に安らぎが訪れた。
「お兄ちゃん、これ読んで」
ルナが絵本を俺に差し出す。セシリアがどこかで買ってきてくれたものだ。俺が下手くそな読み聞かせを始めると、ルナは目をキラキラさせながら聞き入っていた。
「むかしむかし、あるところに、可愛いウサギさんがいましたとさ」
俺が読み上げると、ルナは俺の腕にしがみつき、じっと絵を見つめる。
「ウサギさん、お花畑、きれい……」
ルナの無垢な言葉に、俺の心が温かくなる。この子の笑顔を見ると、本当に救われる。
◇
その日の午後、宿舎の部屋にノックの音が響いた。
「はい、どうぞ」
俺が声をかけると、ドアがゆっくりと開き、そこに立っていたのはリリアだった。両手には、紙袋を提げている。
「ケンタさん、セシリアさん、こんにちは!今日の依頼の報告に……って、あら?」
リリアは部屋の中を見て、目を丸くした。俺の隣に座っているルナの姿に気づいたのだろう。ルナは、見慣れないリリアの姿に、俺の背中に隠れるように身を寄せた。
「リリア、どうしたんだ?そんなに驚いて」
俺が尋ねると、リリアは信じられないといった様子で、ルナを指差した。
「あの……その可愛い女の子は……どちら様ですか……?」
リリアの声は、どこか震えていた。俺は苦笑いしながら、簡単にこれまでの経緯を説明した。森でルナを見つけ、保護したこと。そして、記憶をなくしていること。
リリアは俺の話を聞き終えると、すぐにルナの方へと歩み寄った。
「まぁ!大変でしたね……。もう大丈夫ですよ。私がいますからね!」
リリアは優しく微笑みかけ、ルナの頭をそっと撫でようとした。しかし、ルナはびくりと体を震わせ、俺の服にしがみついた。
「大丈夫だよ、ルナ。この人はリリア。俺たちの専属受付だ。優しい人だから、怖くないぞ」
俺が言うと、ルナは恐る恐る顔を上げた。その瞳がリリアと目が合った。ルナはまだ少し警戒しているようだったが、リリアの優しい笑顔に、次第に緊張を解いていく。
「……リリア、お姉ちゃん……?」
ルナがか細い声で尋ねると、リリアは顔をぱっと輝かせた。
「そうよ!私がリリアお姉ちゃんだよ!ルナちゃん、怖くないからね。何か欲しいものとかあるかな?お菓子とか、おもちゃとか?」
リリアは紙袋の中から、色とりどりの可愛らしいリボンや、小さな木彫りの人形を取り出した。ルナの目が、それに釘付けになる。
「これ……くれるの?」
「もちろんだよ!ルナちゃんが元気になったら、もっといっぱい買ってあげるからね!」
リリアはそう言って、ルナにリボンを渡した。ルナは恐る恐るそれを受け取ると、小さな指でリボンをいじり始めた。
セシリアは、そんな光景を静かに見守っていた。彼女の表情には、かすかな笑みが浮かんでいる。
「リリア、助かる。この子も、少しずつこの環境に慣れてくれるだろう」
セシリアが礼を言うと、リリアは嬉しそうに頷いた。
「はい!私にできることなら何でも言ってくださいね!ルナちゃんは、私にとっても大切な家族ですから!」
リリアはそう言って、ルナの頭を優しく撫でた。ルナも今度は拒否することなく、その手に身を任せている。
賑やかになった宿舎で、ルナは俺に常に寄り添い、俺もまたルナの世話を焼くようになる。まるで親子のような関係に、俺は穏やかな喜びを感じた。
◇
ある日、ルナが森で摘んできた小さな花を俺の手にそっと握らせてくれた。
「お兄ちゃん、これ、あげる」
ルナは照れたように俯きながら、花を差し出す。その小さな花は、俺の心を温かく包み込んだ。また別の夜には、絵本を読み聞かせているうちに、ルナは俺の膝の上で安らかな寝息を立てた。その寝顔を見ていると、俺の心に安らぎが訪れた。
52
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる