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番外編 王女と隣国の王子様(1)
しおりを挟む私は、この国の第一王女エリザベート・アーデルハイト。
お兄様が生まれてから、なかなか子宝に恵まれず。
やっと生まれた第二子だからなのか、私は蝶よ花よと育てられた。
そのせいなのかはわからないが...両親や兄から可愛いがられ育った私は、大変お転婆で自由奔放に育ってしまった。
王族に生まれたからには、もちろん通常の勉強や地理、諸外国についての講義、外国語の講義、マナーの講義、社交の講義など...様々な勉強をしなければならない。
お転婆で自由奔放な私ではあるが、勉強はさほど嫌いではなかった。むしろ好きな部類だ。
しかし、王族に生まれて絶対に避けて通れないものがある...。
それは婚約である。
私は幼い頃から結婚に憧れがあった。
白馬の王子様のような...素敵で優しい方に嫁ぎたいと願っていた。
なのに現実は厳しかった。
我が国アーデルハイトは、両隣を軍事大国に挟まれている。
間に氷の大河と氷の氷山がある為、簡単に攻め込む事は出来ないのだが...いざ攻め込まれることがあれば戦力が足りない。
我が国のちょうど真上に位置する大国、ロワール王国。
我が国と軍事協定を結んでいる国なのだが、その国の第一王子が私と同じ年ということで婚約話が舞い込んできた。
顔合わせで初めてロワールの王子レジャックと会ったのだが...第一印象は最悪...としか言い様がなかった。
私は、昔から髪色にコンプレックスがある。
お母様は真っ赤で綺麗な深紅の髪色でお父様は綺麗な金色、お兄様は綺麗な金色なのに...私だけ両親の髪色を混ぜたようなオレンジ色の髪なのだ。
幼い頃は、泣くほどこの髪色が嫌いだった。
なのにレジャック王子は、私の事を初対面で“オレンジ頭”と呼んだのだ。
全く紳士的じゃない!普通初対面の女性にいきなり”オレンジ頭”なんて呼ぶ?
しかも...私のコンプレックスなのに...。
私は情けない事に...彼の言葉を聞いて泣き出してしまったのだ。
いきなり泣き出してしまった私に戸惑った彼は、私にオレンジ色のハンカチをぐいぐい押し付けてきた。
泣いてる女性にもっと優しく出来ないのかしら...。
でも渡されたハンカチはオレンジのいい香りがした。
こんな事で簡単に許さないんだから...。
それからもちょこちょこ彼は遊びに来た。
来るたびに持ってくるお菓子はオレンジピールが入ったお菓子やオレンジを使ったお菓子...紅茶までオレンジの香りのする紅茶。嫌味かしら...。
でも話してみると悪いやつではないのよね。
だから完全に嫌いにはなれなくてモヤモヤするの。
それに持ってくるお菓子もお茶も味は美味しいのよね。
初めて会った時は、お互い13歳だった。
それから4年ほど彼との交流は続いた。
4年もたつと段々彼にも慣れてきた。
最初の印象は最悪だったけど...彼と共に過ごした日々は嫌じゃなかった。
段々大人に近付くにつれて、彼は紳士的に振る舞うようになってきたし...私の事もちゃんと1人のレディーとして接してくれるようになった。でも相変わらず持ってくるお菓子はオレンジのお菓子だったけどね。
レジャックは私の話もちゃんと聞いてくれるし、まず彼の話は楽しいのだもの。
それに...ここ数年でレジャックはすごくカッコ良くなったの。
背も伸びて...もともと顔立ちは良かったけど、今は絵本に出てくる王子様みたいな美男子に成長した。
綺麗な金髪を靡かせた横顔は悪くないと思う。
彼には絶対秘密よ?
まあ...うちのお兄様には負けるけど...。
たぶんすごくカッコ良くなったと思うの。
もちろんお兄様の次によ?
でも...そんな時、あの事件が起きたの。
いよいよ学園を卒業する時が近付くと結婚の言葉をちらほら聞くようになった。
昔とは違って、最近は、彼との結婚も前ほど嫌だと思わなくなった時だった。
ある時、お父様に呼ばれて執務室へ向った時に言われたの。
「エリザ。いよいよレジャック王子との結婚の話を進めようと思うんだが...エリザは心の準備はできているか?
前は、レジャック王子の事が嫌だとよく聞いたけど...。
最近は聞かなくなったし、私が見る限りだと二人ともとても仲が良さそうじゃないか。今でもレジャック王子が嫌かい?」
お父様は私の目を見てレジャックが今でも嫌か?と聞いてきた。
今は嫌じゃない...。
今はむしろ....。
「もうレジャック様の事は嫌じゃありません。もう心の準備は出来ています。結婚の話を進めて下さって大丈夫です。」
もうとっくに心の準備は出来ていた。
もうとっくにレジャック様の事を愛している自分に気づいていた。ただ...恥ずかしくて伝えられなかったの。
最初の出会いがあんなだったから...。
今更好きだなんて言っていいのかわからなかった。
最初にあんな態度をとってしまったのに...彼は優しかった。
ずっとずっと今まで私を大切にしてくれて...そんな彼にいつしか私も惹かれていた。
ずっと私の気持ちが恋に変わるまで待っていてくれた彼。
最初出会ったあの時も...幼いながらに私の髪を褒めようとしてくれたのだと後で気づいた。
だって彼は...オレンジが大好きだから。
だから...彼の大好きなオレンジの髪が嬉しかったんだと思う。
だって...彼の私物オレンジ色ばかりなんだもの。
オレンジを使ったお菓子を毎回持って来てくれたのも...オレンジの紅茶も...あれは彼の気持ちだったの。
彼はずっと私の事が好きだよって伝えてくれていたの。
気づいたのは最近なんだけどね。
彼不器用だし、照れ屋だから...あまり口に出してくれないけど...
不器用ながらもずっとずっとそうやって私に気持ちを伝えていてくれたの。
だって贈り物には必ずオレンジ色のリボンやオレンジ色の箱、オレンジ色の飾りが使われていて...彼からもらったプレゼントを大事にしまってある部屋を見たらオレンジ色だらけだったんだもの...。4年たってやっと彼の気持ちに気づいたわ。
分かりにくいのよ...。でも気づいた時はすごく嬉しかった。
4年間ずっとずっとそうやって私に気持ちを伝えていてくれたんだもの...。
結婚するなら...彼がいい。レジャックじゃなきゃ嫌だ。
私は自分の気持ちに気付くのも...彼の気持ちに気付くのも遅すぎたのかもしれない...。だってあんな事になってしまったのだから。
もっと早く気持ちを伝えていたら良かったのに...。
今は後悔しかない。
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完結有難うございます!
楽しみに読んでいたので少し寂しいですしもう少し二人のイチャイチャを書いてくれたら嬉しいかったのですが…!
又番外編で書いてくれたら嬉しいです。
リサ様
ご感想ありがとうございます😆💕✨
本編は完結ですが番外編でも二人のその後や王女様目線のお話などまだヘルムートとシルヴィア出てきますのでお楽しみに( o´ェ`o)✨
番外編だから書ける激甘なお話など糖度高めのお話になる予定です(((o(*゚∀゚*)o)))
こんばんは。始めまして。お互いに初恋を実らすとは、何とも稀有な出来事ですね。事実、初恋を実らす事は、どんな人間でも難しいのに。やっと2人が両想いになれて何よりです。2人とも、お幸せに。断罪の前半で誤字がありましたので、報告しておきます。
①いじわるでは許されない→意地悪では済まされない
みき様
ご感想ありがとうございます😆💕✨
そして誤字訂正もありがとうございます😭✨
誤字すぐ訂正しますε=(ノ・∀・)ツ
初恋ってなかなか実らすのは大変ですよね😅
しかも拗れに拗れていた二人なので💦
しかし...初恋拗らせマンのヘルムートはそう簡単に諦める男ではなかったのでヘルムートの粘り勝ちでしょうかね😅
たぶんシルヴィアだけが思っていたならきっと諦めてしまっていたかもしれません😥
あとちょっとで完結予定ですので最後までお付き合いいただけたら幸いです。
誤字や脱字変換ミス多いので報告ありがとうございました😢
また見つけたら教えていただけると助かります💦
ご感想ありがとうございます😆✨
シルヴィアはヘルムートがいるので安心!!ですが、王女様が……
隣国の王子様とは破談になってしまったのでしょうか。
これから是非幸せになって欲しいです。
他作品をこちらで失礼します。
是非是非「砂漠の宝花」もよろしくお願いします。
こぎつねコンコン様
ご感想ありがとうございます😆💕✨
まだ完結ではないのでヘルムートとシルヴィアさんのお話の後に王女様目線のお話を予定してます(*^^*)
王女様の秘密など王女様目線で語られるのでぜひお楽しみいただければと思います( o´ェ`o)✨
砂漠の宝花もありがとうございます😆✨
お話がちょっとダークだからどうかな?って思っていたので更新ためらっていたのでご感想ありがとうございます😭✨
全体的にちょっとずつ更新していきますのでしばしお待ちください(*^^*)