逆ハーレムを押し付けられた姫が掴んだただ一つの幸せ

海野すじこ

文字の大きさ
1 / 7

責任を押し付けられました。

しおりを挟む



私は、エルガドル王国でただ一人の王女。エリザベート・エルガドル。

国王である父は、正妃である母を深く愛していた。

しかし、子供は私一人しか産まれず、私が産まれた後は、子宝には恵まれなかった。

世継ぎの問題もあるので、臣下達は側妃を勧めたが、父は頑なに側妃を娶ろうとはしなかった。

妃は正妃だけで良いと。

妻だけを一途に愛す父は、夫であればとても良き夫だった事だろう。

ただの夫であるならばだが···。

しかし、父はこの国の国王である。
世継ぎがいなければ、側妃を娶るのが義務だ。

だが···父は頑なに側妃を娶ることを嫌がった。

母も、自分以外の女を側に置く夫など見たくないと大反対した。

父も母も、王族としては失格だった。
王族としての義務を果たさなかったのだから···。


そして、父はその責任のすべてを私に押し付けたのである。

「世継ぎなら一人いるじゃないか。姫が女王になり、複数の夫を見繕ってやれば良い。」と。

そうして私は、生まれた時から複数の夫を持つことを強いられたのだった。

私は、幼い頃から時期女王として育てられた。

子供がする量ではない量の勉強、社交や王族としてのマナー、ダンス、他国の地理や歴史、外国語の勉強、自国の貴族について等···。

一国の主になるに恥じない教養を詰め込まれた。

その量は、寝る時間を削らなければならないほど、膨大な量を学ばなければならず、時にストレスで吐くほどだった。

毎日泣きながら勉強に勤しんだ。

空いた時間には、国内の有力貴族の令嬢達とのお茶会や、パーティーに参加せねばならず···1日の終わりには気絶するように眠り、また翌日同じような予定を繰り返した。

世継ぎは私一人だった為、万が一何かあってはいけないと、必要な時にしか外に出る事は許されず、私に許されたものなど何一つなかった。


何よりも嫌だったのが、私の未来の夫候補を集めたお茶会だった。

夫候補のお茶会には、国内の有力な家の子息達が上位貴族、下位貴族関係なく集められた。

家を継げない次男や三男の彼等からすれば、大出世のチャンスだ···。

ここぞとばかりにアピールをしてくる。

媚を売る者、剣の腕を自慢する者、肉体や外見の美しさを自慢する者など···。
中には、性のテクニックを自慢してくる者もいて、私はこの時間が一番苦痛だった。

何故なら、彼等は決して私自身を見てはいない。

私の見た目も中身も関係なく、彼等は時期女王である私・・・・・・・・にしか興味がないのだから。出世の道具としてしか見ていない。

そんな相手をどうして愛せるというのだろうか?
愛のない結婚の為に相手を選ぶ···なんて虚しい時間なのだろう。


私は、父や母のように、ただ一人だけを愛し、そして愛される···そんな関係に憧れていた。

私を本当に愛し、大事にしてくれる人間と結婚したい。そしてそんな素敵な旦那様に尽くしたい。
贅沢な生活でなくとも良い。

愛がある生活がしたいと···。


それが無理でも、せめてちゃんと私を見てくれる方と夫婦になりたいと願っていた。

しかし現実は、そんな甘い夢は許されない。

この国の世継ぎは、私しかいないのだから···。
将来を見据えた相手を選ぶ義務がある。

国内のパワーバランスを考えてなのか、最低五人の夫を選べと言われている。

国の未来を左右する相手なので、慎重に選ばなければならない。愛など無くとも、国を共に支えてくれる人間でないとならないのだ。

愛のない相手を五人を選ばなくてはならないのか···。

心がまるで凍り付くかのように冷えていく。

無駄な会話に時間を使う余裕もないので、ある程度候補は事前に決めてある。

後は、会ってから決めようと思っていた。

最初の夫候補は、クライスラー公爵家次男。
エアハルト・クライスラー。年齢は19歳。

彼は物腰柔らかく、真面目で勤勉。
男女問わず紳士的で、爽やかな好青年だ。

皆の、理想の王子様像を具現化したような···見目麗しく、輝く黄金の髪に碧眼。甘いマスクの貴公子である。

彼ならば···きっと、皆から愛される良きパートナーになってくれるだろう。

次の夫候補は、クラウツェン侯爵家三男。
レオナール・クラウツェン。年齢は18歳。

彼は王国騎士団の団長のご子息である。
騎士団長である父親に憧れてか···幼い頃から騎士団に混ざり、毎日稽古している。

とても寡黙で、真面目な印象の青年である。

いかにも武人らしい鍛え上げられたガッチリとした体躯に、端正な顔立ち。

烏のように真っ黒な漆黒の髪を後ろに流している。
深海のように深い青色の瞳は、何もかもを見透かされているような気持ちになる。

私は少し、彼が苦手だった。

力は強いし、声は大きい。
女性の扱いがわからないからなのか···わからないが、常に厳しい口調でズバズバものを言う。
表情も微笑すらない。

怖い印象しかないのだ。

しかし夫候補としては、身分も申し分なく、とても優秀なので候補に入った。

その次の夫候補は、ラインフェルト子爵家三男。
ドミニク・ラインフェルト。年齢は20歳。

彼の家は、小さな商家から大商会へと成り上がった···所謂成り上がり貴族。

彼自身も、幼い頃から父や兄と共に、商売のいろはを学んで来たからか、頭の回転も早く世渡り上手だ。

燃えるような癖のある長い赤髪。新緑を思わせる鮮やかな緑の瞳。商人の息子らしい物腰の柔らかさ。女子受けの良さそうな甘いマスク。そして年齢らしからぬ色気。

その異常なまでの色気は、たくさんの女性を夢中にさせているという。

相手が例え高位貴族だろうと、臆することのない、物怖じしない性格。

若干女性関係に不安はあるが、外交も支えてくれる良きパートナーになってくれそうではある···ただ一番ネックなのは彼の身分だろう。

正直、彼を夫候補にするのは少し悩んだ。

しかし、彼の家には借りがあるのだ。

彼の家は、十数年前の大飢饉の際に、我が国の民を救うために、多大な貢献をした事により、子爵の爵位を賜った新興貴族である。

つまり、この国にとって彼の家は大恩人なのだ。

爵位は一番低いが、そういった事情から夫候補に入った。

次の夫候補は、ヴォルデマール伯爵家次男。
イーヴォ・ヴォルデマール。年齢は最年長の23歳。

彼は、この国の大神官のご子息である。

大神官の血を受け継いでいるからか、彼自身も神聖力が高く、魔法適性も高い。

魔術師団の団長になるのでは?と期待されている。


まるでエルフのように美しい顔立ち、珍しい水色の髪に、琥珀色の瞳。長い水色の髪は、束ねてサイドに流している。眼鏡が穏やかそうで、知的そうな彼に似合っている。

王族と同等、または王族以上に力のある、国教の大神官様のご子息である彼も···そういった理由で夫候補に入った。

あと一人の夫候補は、宰相のご子息ではあるが···今は外交に行っている。

明日、外交から帰ってくるそうで、本日の茶会には参加していなかった。

夫候補と直接話をしたが···やはり夫候補は事前に決めた者達で良さそうだ。
他がお話しにならない状態だったのもあるが···。

あと一人の候補は、後日改めて会うとして···後は本人達の気持ちを優先させたい。

特殊な理由だからこそ、嫌なことを強制したくはなかったし、私も結婚するならば···少しでも良い婚姻関係を築きたい。

例え愛することができなくとも、愛されることがなくとも···。

彼等も私も不幸になるような婚姻は避けたい。





















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...