逆ハーレムを押し付けられた姫が掴んだただ一つの幸せ

海野すじこ

文字の大きさ
3 / 7

他の候補者とは違いました。

しおりを挟む



侍女達に朝から磨かれ、綺麗に仕上げられたが···やはり化粧で隠しても、うっすらクマが残ってしまった。

こればかりは仕方がない。
ベッドに入り、数時間もたたない内に、朝になっていたのだから。

きっと、大臣や宰相も同じだろうと考えたら、思わず苦笑いしてしまった。

王宮の一室で、最後の夫候補に会う事になっている。

宰相のご子息であるから、とても優秀な方だろうと思う。優しい方だといいな。

他の夫候補と会った時感じたが···。
外面は好意的だった。

だけど、本当の心は見せてくれなかった。

優秀である、何かに長けている、判断基準はそれだけ。

それだけしかわからない。

私が知りたいのは、その人の内面と、本当の気持ちなのだけど···。

私自身、出世の道具としてしか見てもらえないから、相手には同じ思いをしてほしくないのだ。

普通の夫婦とは違うかもしれない。
政略での婚姻かもしれない。

けれど、せっかく夫婦になるのだから、私は相手の気持ちや相手の事を少しでも知りたいし、大切にしたい。

こんな私と婚姻を結んでくれるのだ。
そんな彼等を不幸になどさせたくないから。

嫌々家の為に犠牲になったと言うのなら···。
必要最低限で関わらないでほしいのなら···その気持ちに添うつもりだ。

もし嫌でも、帰る場所や、逃げる場がないのならば···別邸を用意する。

家を継ぐわけではない彼等は、断りたくても断れないかもしれない。

そういう場合だってあるのだから···。

どうしても避けられない公務や、パーティーには参加して貰わねばならないが···それ以外は、彼等が心安らげるように配慮するつもりだ。

無理強いはしたくない···。

だから夫候補には、王命で無理矢理従わせるなんて事は絶対にしない。

嫌なら、その気持ちを伝えてくれる方がいい。
彼等が、嫌な思いをするのは嫌だから。

宰相のご子息はどんな方だろうか?

皆のように···笑みを浮かべていても、瞳の奥が笑っていない···あんな目を向けられるのは嫌だな。

部屋に着き、ドアを開ける前に深呼吸をする。

ドアをノックすると、中から人の気配がする。
ちょっと早かったけど、先に来ていた様だ。

恐る恐るドアを開けると、ふわふわとした、白っぽい金髪に、ピンクの瞳をした優しげな青年がこちらに向かって歩いて来た。

最後の夫候補は、ブルクミュラー公爵家次男。
イクス・ブルクミュラー。年齢は18歳。

年齢よりは少し幼く見える。
ややタレ目で、人懐こそうな美青年だ。

昔飼っていた、白い大きな犬に似ていると言ったら、失礼に当たるかもしれないが···彼からは、他の候補と違った柔らかい空気と人懐こさを感じた。

彼となら良い関係が築けるかしら?

少し緊張が解けて気が緩んだのか、立ち眩みがして···前のめりに体勢が崩れた。倒れる──。

そう思った瞬間、ガシッと抱き止められた。

「 大丈夫ですか···? 」

心配そうに覗き込む様な彼の瞳と目が合った。

いけない···。離れないと。

慌てて離れようとする私に、彼は優しく「無理をしないで···。」と体勢を変えて私を抱き抱えた。

近くにあったソファーに、そっと私を横向きに降ろすと、彼は着ていた上着を脱ぎ、私の上に掛けてくれた。

「父から、昨日無理をさせてしまったと聞いています。気にせず少し休んでください。少し目を閉じるだけでも休めると思うので。」

そう言って彼は微笑んだ。

確かに眠れなかったけど···それはいくらなんでも失礼では?と起き上がろうとすると、またクラクラとしてしまい起き上がれなかった。

「すみません···。少しだけお言葉に甘えさせて下さい。」

なけなしの力で声を出したが聞こえたかしら···?

そこで私の意識は途切れてしまった。




次に目を覚ました時、部屋は少し陽が落ちていた。

いけない!

慌てて目を覚ました私はキョロキョロと辺りを見回す。

さすがにこんなに眠ってしまったら、帰ってしまわれたわよね···。

せっかくお時間を取っていただいたのに。
申し訳ない事をしてしまったわ。宰相にもイクスにも後でしっかりお詫びしないと···。


ふと、隣の書斎から光が漏れているのに気付き、書斎に向かうと···書斎の机に、うつ伏せに眠っているイクスの姿があった。

( もう帰ってしまったと思ったのに···ずっと側で待ってくれていたのね···。)

イクスはどうやら、私を待っている間に、自分も眠ってしまったらしい。

穏やかな寝顔で、気持ち良さそうに、スヤスヤと小さな寝息を立てて眠っていた。


( 彼はとても優しい方みたい···。)


会う約束をしていて、私は眠ってしまったのに···。
普通は怒ってもいい筈だ。
それなのに彼は···私を咎める所か、側で私が起きるのを待っていてくれた。

( 彼が待っていてくれたのが····こんなに嬉しいなんて···。不思議。)

気持ち良さそうに眠るイクスを見ていると、今まで感じた事のないような気持ちが、じんわりと胸に広がる。

この気持ちは一体なんなのだろう?

私は、初めて感じる気持ちに戸惑いつつも、眠る彼をもっと見ていたいと思うのだった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...