【R18】【挿絵多い】異形の彼女 

まへまへ

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第51話 エピローグ

エピローグ

結婚式は挙げなかった。

一平が施設で生まれ育ったこともあり、形式にこだわるよりも、二人の日常を一つひとつ大切にする方が自然だったからだ。

麗子は病院に勤め始め、慣れない環境で忙しい日々を過ごしていた。

それでも帰宅すれば、そこには必ず一平がいて、何気ない会話や笑い合いが待っている。

愛する人と共に生きる生活は、想像していた以上に楽しく、そして心を満たしてくれるものだった。

けれど、麗子の胸の奥には誰にも言えない秘密がひとつ残っていた。

ポーチの奥底――小瓶が、まだ一本。あの薬は、まだ残っている。

一平には決して話していない。

そうして迎えた、第一土曜日の夜。

仕事を終えて一平が帰宅の扉を開けたその瞬間――彼は目を疑った。

リビングの中央に立っていたのは、赤いラバーに全身を包み、赤い網タイツを絡ませ、白いカラコンに無表情な瞳を宿した化け物の麗子だった。

黒い肌、赤い髪、牙を覗かせながら、ゆっくりと口元を吊り上げる。

「おかえりなさい、一平……」

その声は甘く、妖しく、どこか楽しげで。

一平は腰を抜かして床に尻もちをつき、呆然と目を見開いた。

麗子は無表情な顔のまま、けれど瞳の奥で嬉しさに潤みながら、一歩ずつ彼に近づいていく。

「お、おい……麗子……まさか、また……!」

一平が青ざめたその瞬間。

麗子はパッと後ろに隠していた紙を突き出した。

大きな字で「ドッキリ!」と手書きされた看板。

「びっくりした? これね、新しく発売された黒肌フィメールマスクとシリコンスーツの黒肌バージョン! 初任給で買っちゃったの!」

楽しそうに説明する麗子。

白いカラコンの奥で、目だけは嬉しそうに潤んでいる。

一平はその場にへたり込み、思わずため息をついた。

「……麗子、お前……これからの新婚生活、俺、不安しかないんだけど……」

「なにそれー! 失礼しちゃう!」



麗子はケラケラ笑いながら、手にした「ドッキリ!」の看板をパタパタ揺らした。

一平もつられて笑ってしまう。

どこか騒がしくも愛おしい、新婚生活の夜が始まろうとしていた。


――終わり。
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