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第51話 エピローグ
エピローグ
結婚式は挙げなかった。
一平が施設で生まれ育ったこともあり、形式にこだわるよりも、二人の日常を一つひとつ大切にする方が自然だったからだ。
麗子は病院に勤め始め、慣れない環境で忙しい日々を過ごしていた。
それでも帰宅すれば、そこには必ず一平がいて、何気ない会話や笑い合いが待っている。
愛する人と共に生きる生活は、想像していた以上に楽しく、そして心を満たしてくれるものだった。
けれど、麗子の胸の奥には誰にも言えない秘密がひとつ残っていた。
ポーチの奥底――小瓶が、まだ一本。あの薬は、まだ残っている。
一平には決して話していない。
そうして迎えた、第一土曜日の夜。
仕事を終えて一平が帰宅の扉を開けたその瞬間――彼は目を疑った。
リビングの中央に立っていたのは、赤いラバーに全身を包み、赤い網タイツを絡ませ、白いカラコンに無表情な瞳を宿した化け物の麗子だった。
黒い肌、赤い髪、牙を覗かせながら、ゆっくりと口元を吊り上げる。
「おかえりなさい、一平……」
その声は甘く、妖しく、どこか楽しげで。
一平は腰を抜かして床に尻もちをつき、呆然と目を見開いた。
麗子は無表情な顔のまま、けれど瞳の奥で嬉しさに潤みながら、一歩ずつ彼に近づいていく。
「お、おい……麗子……まさか、また……!」
一平が青ざめたその瞬間。
麗子はパッと後ろに隠していた紙を突き出した。
大きな字で「ドッキリ!」と手書きされた看板。
「びっくりした? これね、新しく発売された黒肌フィメールマスクとシリコンスーツの黒肌バージョン! 初任給で買っちゃったの!」
楽しそうに説明する麗子。
白いカラコンの奥で、目だけは嬉しそうに潤んでいる。
一平はその場にへたり込み、思わずため息をついた。
「……麗子、お前……これからの新婚生活、俺、不安しかないんだけど……」
「なにそれー! 失礼しちゃう!」
麗子はケラケラ笑いながら、手にした「ドッキリ!」の看板をパタパタ揺らした。
一平もつられて笑ってしまう。
どこか騒がしくも愛おしい、新婚生活の夜が始まろうとしていた。
――終わり。
結婚式は挙げなかった。
一平が施設で生まれ育ったこともあり、形式にこだわるよりも、二人の日常を一つひとつ大切にする方が自然だったからだ。
麗子は病院に勤め始め、慣れない環境で忙しい日々を過ごしていた。
それでも帰宅すれば、そこには必ず一平がいて、何気ない会話や笑い合いが待っている。
愛する人と共に生きる生活は、想像していた以上に楽しく、そして心を満たしてくれるものだった。
けれど、麗子の胸の奥には誰にも言えない秘密がひとつ残っていた。
ポーチの奥底――小瓶が、まだ一本。あの薬は、まだ残っている。
一平には決して話していない。
そうして迎えた、第一土曜日の夜。
仕事を終えて一平が帰宅の扉を開けたその瞬間――彼は目を疑った。
リビングの中央に立っていたのは、赤いラバーに全身を包み、赤い網タイツを絡ませ、白いカラコンに無表情な瞳を宿した化け物の麗子だった。
黒い肌、赤い髪、牙を覗かせながら、ゆっくりと口元を吊り上げる。
「おかえりなさい、一平……」
その声は甘く、妖しく、どこか楽しげで。
一平は腰を抜かして床に尻もちをつき、呆然と目を見開いた。
麗子は無表情な顔のまま、けれど瞳の奥で嬉しさに潤みながら、一歩ずつ彼に近づいていく。
「お、おい……麗子……まさか、また……!」
一平が青ざめたその瞬間。
麗子はパッと後ろに隠していた紙を突き出した。
大きな字で「ドッキリ!」と手書きされた看板。
「びっくりした? これね、新しく発売された黒肌フィメールマスクとシリコンスーツの黒肌バージョン! 初任給で買っちゃったの!」
楽しそうに説明する麗子。
白いカラコンの奥で、目だけは嬉しそうに潤んでいる。
一平はその場にへたり込み、思わずため息をついた。
「……麗子、お前……これからの新婚生活、俺、不安しかないんだけど……」
「なにそれー! 失礼しちゃう!」
麗子はケラケラ笑いながら、手にした「ドッキリ!」の看板をパタパタ揺らした。
一平もつられて笑ってしまう。
どこか騒がしくも愛おしい、新婚生活の夜が始まろうとしていた。
――終わり。
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