12 / 46
第12話 第一土曜日が近づいた夜。
しおりを挟む
第一土曜日が近づいた夜。
夜勤に出かける前の麗子が、クローゼットを開けながら一平に声をかけた。
「黒肌のシリコンスーツは一つしかないから、今度は一平に貸してあげるね。私は別のラバーにするから」
一平は少し間をおいて、落ち着いた声で返した。
「……俺が、あのスーツを?」
「そうよ。せっかくだし体験してみて。気分転換くらいになるんじゃない?」
麗子は軽い調子で笑う。
彼女にとって、それは“一平が少し遊ぶ”程度の意味しかなかった。
だが、一平の胸の奥では別の熱が静かに燃えていた。
(完成度を……極限まで再現するチャンスだ)
麗子はまだ知らない。
一平がこっそりネットショップで白いカラコンや赤い網タイツ、ラバーのキャットスーツを注文し、自分用に揃えていたことを。
そして、麗子の変身をずっと間近で見てきたからこそ、その手順も小物も頭に刻み込まれていることを。
「私は赤いキャットスーツにしよっかな。あと、チョーカーとかゴシックっぽいアクセも試してみたいし」
麗子はあれこれ組み合わせを考えて、楽しそうに鏡に向かっている。
「そっか。じゃあ俺は……シリコンスーツで、ね」
一平は努めて自然に返す。
麗子は振り返りもせず、「うん、それで十分」と軽く言った。
彼女は、一平が自分と同じ完成度を目指しているなど、露ほども疑っていない。
――だからこそ、一平の胸は高鳴った。
(麗子を驚かせたい。俺も“理想の女”になってみせる)
麗子が「夜勤行ってきまーす」と手を振って出ていくと、静まり返った部屋に残された一平は、鏡の前で自分の姿を思い描きながら深く息をついた。
「次の第一土曜日……俺の一人の時間が、二人の時間に繋がる。」
ーーー次の第一土曜日。
麗子は昼からの勤務がなく、久しぶりに半日休みを与えられた。
一平はまだ仕事で夕方まで帰ってこない。
静かな部屋に一人きりになった麗子は、何度も時計を見ては微笑んでいた。
(今日は一緒に過ごせる。夕飯もゆっくり食べられる。しかも第一土曜日……)
台所に立ち、冷蔵庫を開ける。
肉や野菜を並べながら、自然と口元が緩む。
「シチューにしようかな。それとも、ちょっと豪華にステーキ?……ふふ、どっちにしても一平は絶対喜ぶ」
包丁を握る手にも、ウキウキしたリズムが宿っていた。
久しぶりに二人で囲む食卓。
そして、その後に待っている――二人の時間。
(黒肌スーツは一平に貸すから、自分は……どうしようかな)
台所で鍋をかき混ぜながら、麗子はふと立ち止まった。
(そうだ! 顔は“アキっぽい”感じで、黒のラバーで合わせてみよう。一平の理想の女も、たまにはなってあげないと)
想像するだけで、頬が熱くなる。
鏡の前でフィメールマスクを被り、金髪のウィッグを揺らす自分――。
その姿を見て驚く一平の顔が浮かび、思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、絶対びっくりする……」
料理の湯気に包まれながら、麗子の胸はときめきでいっぱいだった。
麗子は、クローゼットの前で立ち止まった。
(今日は“アキっぽい”感じで……金髪美女のラバー姿。うん、それで決まり)
黒いラバーを丁寧に身にまとい、金髪のウィッグを整える。鏡に映る姿は、普段の自分とはまるで別人。
(これで、一平が帰ってきたら……絶対、ニタニタするに違いない)
その想像だけで、口元がゆるんでしまう。
「ふふっ……バカみたい」
そう呟きながらも、胸の奥は高鳴りっぱなしだった。
今夜は、この姿のまま夕食を一緒に食べよう。
そう決めた麗子は、テーブルに料理を並べ、時計をちらりと見上げる。
(早く帰ってこないかな……)
彼を驚かせる瞬間を思い浮かべながら、一人でくすくす笑い続けていた。
夜勤に出かける前の麗子が、クローゼットを開けながら一平に声をかけた。
「黒肌のシリコンスーツは一つしかないから、今度は一平に貸してあげるね。私は別のラバーにするから」
一平は少し間をおいて、落ち着いた声で返した。
「……俺が、あのスーツを?」
「そうよ。せっかくだし体験してみて。気分転換くらいになるんじゃない?」
麗子は軽い調子で笑う。
彼女にとって、それは“一平が少し遊ぶ”程度の意味しかなかった。
だが、一平の胸の奥では別の熱が静かに燃えていた。
(完成度を……極限まで再現するチャンスだ)
麗子はまだ知らない。
一平がこっそりネットショップで白いカラコンや赤い網タイツ、ラバーのキャットスーツを注文し、自分用に揃えていたことを。
そして、麗子の変身をずっと間近で見てきたからこそ、その手順も小物も頭に刻み込まれていることを。
「私は赤いキャットスーツにしよっかな。あと、チョーカーとかゴシックっぽいアクセも試してみたいし」
麗子はあれこれ組み合わせを考えて、楽しそうに鏡に向かっている。
「そっか。じゃあ俺は……シリコンスーツで、ね」
一平は努めて自然に返す。
麗子は振り返りもせず、「うん、それで十分」と軽く言った。
彼女は、一平が自分と同じ完成度を目指しているなど、露ほども疑っていない。
――だからこそ、一平の胸は高鳴った。
(麗子を驚かせたい。俺も“理想の女”になってみせる)
麗子が「夜勤行ってきまーす」と手を振って出ていくと、静まり返った部屋に残された一平は、鏡の前で自分の姿を思い描きながら深く息をついた。
「次の第一土曜日……俺の一人の時間が、二人の時間に繋がる。」
ーーー次の第一土曜日。
麗子は昼からの勤務がなく、久しぶりに半日休みを与えられた。
一平はまだ仕事で夕方まで帰ってこない。
静かな部屋に一人きりになった麗子は、何度も時計を見ては微笑んでいた。
(今日は一緒に過ごせる。夕飯もゆっくり食べられる。しかも第一土曜日……)
台所に立ち、冷蔵庫を開ける。
肉や野菜を並べながら、自然と口元が緩む。
「シチューにしようかな。それとも、ちょっと豪華にステーキ?……ふふ、どっちにしても一平は絶対喜ぶ」
包丁を握る手にも、ウキウキしたリズムが宿っていた。
久しぶりに二人で囲む食卓。
そして、その後に待っている――二人の時間。
(黒肌スーツは一平に貸すから、自分は……どうしようかな)
台所で鍋をかき混ぜながら、麗子はふと立ち止まった。
(そうだ! 顔は“アキっぽい”感じで、黒のラバーで合わせてみよう。一平の理想の女も、たまにはなってあげないと)
想像するだけで、頬が熱くなる。
鏡の前でフィメールマスクを被り、金髪のウィッグを揺らす自分――。
その姿を見て驚く一平の顔が浮かび、思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、絶対びっくりする……」
料理の湯気に包まれながら、麗子の胸はときめきでいっぱいだった。
麗子は、クローゼットの前で立ち止まった。
(今日は“アキっぽい”感じで……金髪美女のラバー姿。うん、それで決まり)
黒いラバーを丁寧に身にまとい、金髪のウィッグを整える。鏡に映る姿は、普段の自分とはまるで別人。
(これで、一平が帰ってきたら……絶対、ニタニタするに違いない)
その想像だけで、口元がゆるんでしまう。
「ふふっ……バカみたい」
そう呟きながらも、胸の奥は高鳴りっぱなしだった。
今夜は、この姿のまま夕食を一緒に食べよう。
そう決めた麗子は、テーブルに料理を並べ、時計をちらりと見上げる。
(早く帰ってこないかな……)
彼を驚かせる瞬間を思い浮かべながら、一人でくすくす笑い続けていた。
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
名もなき春に解ける雪
天継 理恵
恋愛
春。
新しい制服、新しいクラス、新しい友達。
どこにでもいる普通の女子高生・桜井羽澄は、「クラスにちゃんと馴染むこと」を目指して、入学早々、友達作りに奔走していた。
そんな羽澄が、図書室で出会ったのは——
輝く黒髪に、セーラー服の長いスカートをひらりと揺らす、まるで絵画から抜け出したような美しい同級生、白雪 汀。
その綺麗すぎる存在感から浮いている白雪は、言葉遣いも距離感も考え方も特異で、羽澄の知っている“普通”とは何もかもが違っていた。
名前を呼ばれたこと。
目を見て、話を聞いてもらえたこと。
偽らないままの自分を、受け入れてくれたこと——
小さなきっかけのひとつひとつが、羽澄の胸にじわりと積もっていく。
この気持ちは憧れなのか、恋なのか?
迷う羽澄の心は、静かに、けれど確かに、白雪へと傾いていく——
春の光にゆっくりと芽生えていく、少女たちの恋と、成長の物語。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる