【R18】【挿絵多い】理想の女

まへまへ

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第12話 第一土曜日が近づいた夜。

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第一土曜日が近づいた夜。

夜勤に出かける前の麗子が、クローゼットを開けながら一平に声をかけた。

「黒肌のシリコンスーツは一つしかないから、今度は一平に貸してあげるね。私は別のラバーにするから」

一平は少し間をおいて、落ち着いた声で返した。

「……俺が、あのスーツを?」

「そうよ。せっかくだし体験してみて。気分転換くらいになるんじゃない?」

麗子は軽い調子で笑う。

彼女にとって、それは“一平が少し遊ぶ”程度の意味しかなかった。

だが、一平の胸の奥では別の熱が静かに燃えていた。

(完成度を……極限まで再現するチャンスだ)

麗子はまだ知らない。

一平がこっそりネットショップで白いカラコンや赤い網タイツ、ラバーのキャットスーツを注文し、自分用に揃えていたことを。

そして、麗子の変身をずっと間近で見てきたからこそ、その手順も小物も頭に刻み込まれていることを。

「私は赤いキャットスーツにしよっかな。あと、チョーカーとかゴシックっぽいアクセも試してみたいし」

麗子はあれこれ組み合わせを考えて、楽しそうに鏡に向かっている。

「そっか。じゃあ俺は……シリコンスーツで、ね」

一平は努めて自然に返す。

麗子は振り返りもせず、「うん、それで十分」と軽く言った。

彼女は、一平が自分と同じ完成度を目指しているなど、露ほども疑っていない。

――だからこそ、一平の胸は高鳴った。

(麗子を驚かせたい。俺も“理想の女”になってみせる)

麗子が「夜勤行ってきまーす」と手を振って出ていくと、静まり返った部屋に残された一平は、鏡の前で自分の姿を思い描きながら深く息をついた。

「次の第一土曜日……俺の一人の時間が、二人の時間に繋がる。」





ーーー次の第一土曜日。



麗子は昼からの勤務がなく、久しぶりに半日休みを与えられた。

一平はまだ仕事で夕方まで帰ってこない。

静かな部屋に一人きりになった麗子は、何度も時計を見ては微笑んでいた。

(今日は一緒に過ごせる。夕飯もゆっくり食べられる。しかも第一土曜日……)

台所に立ち、冷蔵庫を開ける。

肉や野菜を並べながら、自然と口元が緩む。

「シチューにしようかな。それとも、ちょっと豪華にステーキ?……ふふ、どっちにしても一平は絶対喜ぶ」

包丁を握る手にも、ウキウキしたリズムが宿っていた。

久しぶりに二人で囲む食卓。

そして、その後に待っている――二人の時間。

(黒肌スーツは一平に貸すから、自分は……どうしようかな)

台所で鍋をかき混ぜながら、麗子はふと立ち止まった。

(そうだ! 顔は“アキっぽい”感じで、黒のラバーで合わせてみよう。一平の理想の女も、たまにはなってあげないと)

想像するだけで、頬が熱くなる。

鏡の前でフィメールマスクを被り、金髪のウィッグを揺らす自分――。

その姿を見て驚く一平の顔が浮かび、思わず吹き出してしまった。

「ふふっ、絶対びっくりする……」

料理の湯気に包まれながら、麗子の胸はときめきでいっぱいだった。

麗子は、クローゼットの前で立ち止まった。

(今日は“アキっぽい”感じで……金髪美女のラバー姿。うん、それで決まり)

黒いラバーを丁寧に身にまとい、金髪のウィッグを整える。鏡に映る姿は、普段の自分とはまるで別人。

(これで、一平が帰ってきたら……絶対、ニタニタするに違いない)

その想像だけで、口元がゆるんでしまう。

「ふふっ……バカみたい」

そう呟きながらも、胸の奥は高鳴りっぱなしだった。

今夜は、この姿のまま夕食を一緒に食べよう。

そう決めた麗子は、テーブルに料理を並べ、時計をちらりと見上げる。

(早く帰ってこないかな……)

彼を驚かせる瞬間を思い浮かべながら、一人でくすくす笑い続けていた。


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