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第一章 ーFirst Attackー
第9話 『しまなみの魔女、家族と戯れる』
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■家族みたいな仲間たち
来島海峡大橋の原付道を走り抜け、6台のバイクが一列になってスロープを慎重に降りる。海風が少し強く吹いているが、皆の顔は明るい。スロープを下りきると、そこには大島の一般道が広がっていた。
先頭のCB125Rを軽やかに操る凛の背中を追いながら、志保はヘルメットの中で微笑む。
「この後、島に降りて一般道を渡るのね?島ごとにこの繰り返しなのは、なかなか大変ね」
後ろを走るCT125の彩花が、ミラー越しに笑いながら答える。
「そうや!だけど、原付道はこの面倒くささがええねん。橋渡って、降りて、島の景色を堪能して……。んで、時折チラッと寄り道したりしてな!」
その言葉に凛もインカム越しで同意する。
「そう!あたしもしまなみ原付道のそういうとこ、すごく好きなんです!」
志保は口元を綻ばせながら、周囲に広がる風景を見渡す。海沿いの道、島の緑、そしてどこまでも続く青空。
「……確かに、高速道は便利だけど、島をあっという間に通り過ぎちゃう分、情緒も何もない感じよね。こうして島をのんびり渡りながら景色や寄り道を楽しむ……うふふ。あなたたちが原付二種に夢中になるのも、何だか分かる気がするわ」
凛は嬉しそうに言った。
「まだまだしまなみは入り口です!一緒に楽しみましょう、志保さん!」
「ええ、そうね。うふふ――」
⸻
■よしうみいきいき館にて
6台のバイクが「よしうみいきいき館」の駐車場に並んで停められる。背後には雄大な来島海峡大橋が架かり、空の青さと海の煌めきが風景に溶け込んでいた。
橋をバックに記念撮影をする6人。タイマーをセットしたスマホのシャッターが、皆の笑顔を切り取った。
ふと志保が、隣にいた凛の方へ向き直る。
「凛さん、ずっと気になってたのだけど……私に敬語は使わなくて良いわよ?」
凛は目を見開き、戸惑いを見せる。
「えっ……でも、それは……」
志保は柔らかく微笑む。
「私、今はあなたの憧れる“しまなみの魔女”じゃないの。折角あなたたちの仲間になったのだから、これからはそのつもりで接してくれると嬉しいわ」
少しの沈黙のあと、凛はまっすぐに志保を見つめ返す。
「……分かった。これからもよろしく、志保さん!」
「ええ、こちらこそ」
二人のやり取りを見ていた琴音も、少し緊張したような表情を見せる。
「わ、わたしはさすがに無理ですよ……変に崩すとお姉みたいになっちゃう!」
すかさず彩花が眉を吊り上げた。
「ウチみたいになるって、どういう意味やねんコラ~!」
「キャ~!!」と琴音がその場から逃げ出し、姉妹の追いかけっこが始まる。
「待たんかいコラ~~!!」
「あはは、あの二人、またやってる!」
笑う凛。そしてそんな伊吹姉妹の姿を見ながら、結が呟く。
「……本当にね。でも残念。琴音ちゃんのたまに出てくる関西弁、可愛いのに」
そして志保に向き直る。
「そうそう、志保さん、みんなにタメ口解禁したんだね!」
志保は頷き、遠くの海を見ながら答える。
「私としては、みんな仲間……というより、家族みたいなものだから。もっと砕けた関係になれたら嬉しいなって」
「家族……うん、そうだね」結の顔が柔らかく緩む。
「志保さん、あたしも家族?」と凛。
「もちろん、二人とも可愛い可愛い私の家族よ」
「志保さ~ん!!」感極まった凛と結が同時に志保に抱きつく。
「ふふふ、二人とも甘えんぼさんねぇ……」
その時、「お姉痛い~!!」と叫ぶ琴音の首根っこをつかんで戻ってきた彩花が、一連の光景に目を細める。
「何や何や? 何が始まったん?」
悠真が肩をすくめながら答える。
「あ~、二人とも志保さんの溢れる母性に当てられてる途中」
「う~ん、あの母性の塊みたいな結ちゃんでもああなるか……さすがは志保さん、元々母親だっただけはあるな~。結ちゃんも凛ちゃんもデレデレやん」
「ふふ……正に“母は強し”だね」
「……多分意味合い違うんやないか、それ」
⸻
■再出発、そして寄り道の誘い
志保と抱き合っていた二人も、彩花の「ほらほら、二人とも志保さんに抱きついとらんと、とっとと出発すんで~!」の声で、はっとしてバイクに戻っていく。
6人は再びそれぞれの相棒に跨がり、エンジンをかける。
結が前を見据えて叫ぶ。
「それじゃ、出発するよ!しまなみブルーのみんな、ご安全に!!」
「ご安全に!!」6人の声が揃い、再びしまなみの道へと走り出す。
⸻
走りながら、彩花がインカム越しに言った。
「今日は行かんけど、こっからやったら亀老山展望台が近いで」
「亀老山展望台だったら、若い時に何度か行ったことあるわよ。あそこから見える今治の景色、本当に良いわよね」と志保。
「若い時って……志保さん、今でも充分若いやんか」
「うふふ、彩花さん、お上手ね~。そうだ!今度彩花さんには特別サービスで、特訓メニュー増やしちゃうわね!」
「なんでや!!普通、サービスって減らすとこやろそこ!!」
インカムの向こう側で笑い声が弾ける。
しまなみの空は高く、どこまでも澄んでいた――。
新たなるしまなみブルーの旅は、まだまだ続いていく。
To be continued...
来島海峡大橋の原付道を走り抜け、6台のバイクが一列になってスロープを慎重に降りる。海風が少し強く吹いているが、皆の顔は明るい。スロープを下りきると、そこには大島の一般道が広がっていた。
先頭のCB125Rを軽やかに操る凛の背中を追いながら、志保はヘルメットの中で微笑む。
「この後、島に降りて一般道を渡るのね?島ごとにこの繰り返しなのは、なかなか大変ね」
後ろを走るCT125の彩花が、ミラー越しに笑いながら答える。
「そうや!だけど、原付道はこの面倒くささがええねん。橋渡って、降りて、島の景色を堪能して……。んで、時折チラッと寄り道したりしてな!」
その言葉に凛もインカム越しで同意する。
「そう!あたしもしまなみ原付道のそういうとこ、すごく好きなんです!」
志保は口元を綻ばせながら、周囲に広がる風景を見渡す。海沿いの道、島の緑、そしてどこまでも続く青空。
「……確かに、高速道は便利だけど、島をあっという間に通り過ぎちゃう分、情緒も何もない感じよね。こうして島をのんびり渡りながら景色や寄り道を楽しむ……うふふ。あなたたちが原付二種に夢中になるのも、何だか分かる気がするわ」
凛は嬉しそうに言った。
「まだまだしまなみは入り口です!一緒に楽しみましょう、志保さん!」
「ええ、そうね。うふふ――」
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■よしうみいきいき館にて
6台のバイクが「よしうみいきいき館」の駐車場に並んで停められる。背後には雄大な来島海峡大橋が架かり、空の青さと海の煌めきが風景に溶け込んでいた。
橋をバックに記念撮影をする6人。タイマーをセットしたスマホのシャッターが、皆の笑顔を切り取った。
ふと志保が、隣にいた凛の方へ向き直る。
「凛さん、ずっと気になってたのだけど……私に敬語は使わなくて良いわよ?」
凛は目を見開き、戸惑いを見せる。
「えっ……でも、それは……」
志保は柔らかく微笑む。
「私、今はあなたの憧れる“しまなみの魔女”じゃないの。折角あなたたちの仲間になったのだから、これからはそのつもりで接してくれると嬉しいわ」
少しの沈黙のあと、凛はまっすぐに志保を見つめ返す。
「……分かった。これからもよろしく、志保さん!」
「ええ、こちらこそ」
二人のやり取りを見ていた琴音も、少し緊張したような表情を見せる。
「わ、わたしはさすがに無理ですよ……変に崩すとお姉みたいになっちゃう!」
すかさず彩花が眉を吊り上げた。
「ウチみたいになるって、どういう意味やねんコラ~!」
「キャ~!!」と琴音がその場から逃げ出し、姉妹の追いかけっこが始まる。
「待たんかいコラ~~!!」
「あはは、あの二人、またやってる!」
笑う凛。そしてそんな伊吹姉妹の姿を見ながら、結が呟く。
「……本当にね。でも残念。琴音ちゃんのたまに出てくる関西弁、可愛いのに」
そして志保に向き直る。
「そうそう、志保さん、みんなにタメ口解禁したんだね!」
志保は頷き、遠くの海を見ながら答える。
「私としては、みんな仲間……というより、家族みたいなものだから。もっと砕けた関係になれたら嬉しいなって」
「家族……うん、そうだね」結の顔が柔らかく緩む。
「志保さん、あたしも家族?」と凛。
「もちろん、二人とも可愛い可愛い私の家族よ」
「志保さ~ん!!」感極まった凛と結が同時に志保に抱きつく。
「ふふふ、二人とも甘えんぼさんねぇ……」
その時、「お姉痛い~!!」と叫ぶ琴音の首根っこをつかんで戻ってきた彩花が、一連の光景に目を細める。
「何や何や? 何が始まったん?」
悠真が肩をすくめながら答える。
「あ~、二人とも志保さんの溢れる母性に当てられてる途中」
「う~ん、あの母性の塊みたいな結ちゃんでもああなるか……さすがは志保さん、元々母親だっただけはあるな~。結ちゃんも凛ちゃんもデレデレやん」
「ふふ……正に“母は強し”だね」
「……多分意味合い違うんやないか、それ」
⸻
■再出発、そして寄り道の誘い
志保と抱き合っていた二人も、彩花の「ほらほら、二人とも志保さんに抱きついとらんと、とっとと出発すんで~!」の声で、はっとしてバイクに戻っていく。
6人は再びそれぞれの相棒に跨がり、エンジンをかける。
結が前を見据えて叫ぶ。
「それじゃ、出発するよ!しまなみブルーのみんな、ご安全に!!」
「ご安全に!!」6人の声が揃い、再びしまなみの道へと走り出す。
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走りながら、彩花がインカム越しに言った。
「今日は行かんけど、こっからやったら亀老山展望台が近いで」
「亀老山展望台だったら、若い時に何度か行ったことあるわよ。あそこから見える今治の景色、本当に良いわよね」と志保。
「若い時って……志保さん、今でも充分若いやんか」
「うふふ、彩花さん、お上手ね~。そうだ!今度彩花さんには特別サービスで、特訓メニュー増やしちゃうわね!」
「なんでや!!普通、サービスって減らすとこやろそこ!!」
インカムの向こう側で笑い声が弾ける。
しまなみの空は高く、どこまでも澄んでいた――。
新たなるしまなみブルーの旅は、まだまだ続いていく。
To be continued...
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