しまなみブルー ー風のSHIFTー 〜中型で挫折した元バイク女子が原付二種に乗ったら仲間と出会って友情も恋も人生も全部シフトアップしてた件〜
通りすがりのしまなみライダーTAKA☆
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第6話 過去編『凛と悠真の出会い』―― 斜めの地平線、傾く心
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Scene.01 放課後、駐輪場にて
放課後の波方工業高校。
夕陽が校舎の壁を赤く染め、部活動の声が遠くから聞こえてくる。
その喧騒の外れにある駐輪場では、ひときわ目立つバイクが周囲の注目を集めていた。
マットシルバーのCB125R。
光を受けて静かに輝くその車体は、無駄のないラインと力強い存在感を放っている。
「……うわ、やっぱカッケェな……橘さんのバイク」
「今日も決まってるわ、あれ……映画に出てくるキャラみたい」
そんなひそひそ声も、橘凛には届いていない。
ヘルメットを片手に制服の上から黒いライディングジャケットを羽織り、視線を逸らすこともなく、CBへと歩を進める。
彼女にとって、周囲の視線は雑音でしかなかった。
凛は無言でCBにまたがる。金属がわずかにきしむ音さえも心地よい。
エンジンをかける準備をする彼女の姿は、静かな緊張感を帯びていた。
その様子を――
植え込みの陰からじっと見つめていた**ひとりの“少年”**がいた。
(……やっぱ、かっこいい……)
長めの前髪から覗く大きな瞳。
整った顔立ちと華奢な身体は、誰が見ても“女の子”にしか見えない。
彼の名は三浦悠真。
心は女の子、でも制服は男子。
誰にも言えない秘密を抱え、この学校に通っている。
⸻
Scene.02 視線の正体
CBのシートに腰を下ろした凛は、ふと視線を感じた。
(……さっきから、見られてる)
駐輪場の周囲はすでに静かで、生徒の姿もない――はずだった。
けれど、鋭い感覚が“何か”を捉えていた。
ヘルメットを被るふりをしながら、凛は一瞬の動きで振り向いた。
「……そこ、誰?」
「ひっ……!」
植え込みの影から立ち上がったのは、制服の男子――しかし、ひどく中性的な雰囲気を纏った人物だった。
「お、お、俺……じゃなくて、ボク、あのっ……!」
凛は一歩近づき、目を細める。
「……アンタ、ストーカー?」
「ち、違いますっ! ただ、バイクが……!」
駆け寄ってきた凛が、じっと彼の顔を覗き込む。
悠真の心臓が高鳴った。
「……女?」
「……っ!」
「――じゃない、よね。制服、男子だし」
悠真はぎくりと肩を震わせ、下を向いた。
「……変、ですよね、ボク……」
⸻
Scene.03 沈黙とエンジン音
短い沈黙が二人の間を満たした。
凛は何も言わずCBに跨り、キーを差し込む。
金属音とともに、CB125Rが低い鼓動を響かせる。
その音が、まるで合図のように凛を口を開かせた。
「……アンタ、バイク乗りたいの?」
「……え?」
「さっきから、ずっとあたしのCB見てた。目がマジだった」
悠真の喉が詰まり、やがて絞り出すように言った。
「……乗ってみたい、です。ずっと、ずっと憧れてて。でも、実家が厳しくて……バイクに乗りたいなんて、言えなくて」
凛は少しだけ視線を逸らし、静かに頷いた。
「……名前、なんていうの?」
「……三浦、悠真。ボク、悠真って言います」
「悠真。いい名前じゃん。……じゃあ、悠真。乗ってみる?」
「……え?」
「タンデムでいいなら、乗せてあげる。CB125Rに」
⸻
Scene.04 最初で最後の風
静かな裏道。車通りも人影も少ないコース。
空は茜色に染まり、風は優しく二人を包む。
凛のCB125Rが静かにエンジンを回す。
マフラーから吐き出される音は低く落ち着いていて、心地よい緊張感が漂う。
「後ろ、しっかり掴まってて。腰じゃなくて、あたしのジャケットでもいい」
「は、はい……」
悠真はそっと後ろに乗り、震える指で凛のジャケットの端を掴んだ。
「いくよ」
スロットルが開き、バイクは風を切って走り出した。
⸻
Scene.05 夕焼けと、斜めの地平線
日が傾き、街全体がオレンジ色に染まっていく。
凛の操作は滑らかで、バイクは軽やかに加速と減速を繰り返す。
悠真は後ろで身体を預け、全身が風に溶けていく感覚を覚えた。
そして、カーブに差し掛かる。
(わっ……)
バイクが大きくリーンする。悠真の体も自然と傾き、視界が斜めに流れる。
その時――
「……うわ……」
坂道の先に広がる、海沿いの景色。
オレンジに染まった空と、光る水平線。
その全てが斜めに滑り落ちるように流れていった。
「すごい……世界が……傾いてるのに、倒れてない……!」
悠真の声が、ヘルメットの中で震えていた。
凛はバックミラー越しにその様子を見て、わずかに微笑んだ。
「それが、バイクの魔法。怖いけど、気持ちいいでしょ?」
「はい……はいっ……!」
バイクが風を引き裂くたび、悠真の中の何かがほどけていく。
(ボク……バイクに、乗りたい。自分の手で、この風を感じたい)
⸻
Scene.06 バイクショップの灯りの下で
ライドを終え、学校の近くのバイクショップの前で停車する。
夕焼けはすでに夜の色へと変わり始めていた。
凛はヘルメットを脱ぎ、悠真の方を見た。
「……乗りたくなった?」
「……はい。乗りたいです。もっと、走りたい……」
凛は静かに頷き、真剣な眼差しを向ける。
「うちの店、原付二種もある。アンタに合うバイク……探してやる」
悠真はその言葉に目を見開き、次の瞬間、真っ直ぐに凛を見返した。
「お願いしますっ……!」
⸻
――斜めの地平線は、
心をまっすぐにする魔法だった。
To be Continued...
放課後の波方工業高校。
夕陽が校舎の壁を赤く染め、部活動の声が遠くから聞こえてくる。
その喧騒の外れにある駐輪場では、ひときわ目立つバイクが周囲の注目を集めていた。
マットシルバーのCB125R。
光を受けて静かに輝くその車体は、無駄のないラインと力強い存在感を放っている。
「……うわ、やっぱカッケェな……橘さんのバイク」
「今日も決まってるわ、あれ……映画に出てくるキャラみたい」
そんなひそひそ声も、橘凛には届いていない。
ヘルメットを片手に制服の上から黒いライディングジャケットを羽織り、視線を逸らすこともなく、CBへと歩を進める。
彼女にとって、周囲の視線は雑音でしかなかった。
凛は無言でCBにまたがる。金属がわずかにきしむ音さえも心地よい。
エンジンをかける準備をする彼女の姿は、静かな緊張感を帯びていた。
その様子を――
植え込みの陰からじっと見つめていた**ひとりの“少年”**がいた。
(……やっぱ、かっこいい……)
長めの前髪から覗く大きな瞳。
整った顔立ちと華奢な身体は、誰が見ても“女の子”にしか見えない。
彼の名は三浦悠真。
心は女の子、でも制服は男子。
誰にも言えない秘密を抱え、この学校に通っている。
⸻
Scene.02 視線の正体
CBのシートに腰を下ろした凛は、ふと視線を感じた。
(……さっきから、見られてる)
駐輪場の周囲はすでに静かで、生徒の姿もない――はずだった。
けれど、鋭い感覚が“何か”を捉えていた。
ヘルメットを被るふりをしながら、凛は一瞬の動きで振り向いた。
「……そこ、誰?」
「ひっ……!」
植え込みの影から立ち上がったのは、制服の男子――しかし、ひどく中性的な雰囲気を纏った人物だった。
「お、お、俺……じゃなくて、ボク、あのっ……!」
凛は一歩近づき、目を細める。
「……アンタ、ストーカー?」
「ち、違いますっ! ただ、バイクが……!」
駆け寄ってきた凛が、じっと彼の顔を覗き込む。
悠真の心臓が高鳴った。
「……女?」
「……っ!」
「――じゃない、よね。制服、男子だし」
悠真はぎくりと肩を震わせ、下を向いた。
「……変、ですよね、ボク……」
⸻
Scene.03 沈黙とエンジン音
短い沈黙が二人の間を満たした。
凛は何も言わずCBに跨り、キーを差し込む。
金属音とともに、CB125Rが低い鼓動を響かせる。
その音が、まるで合図のように凛を口を開かせた。
「……アンタ、バイク乗りたいの?」
「……え?」
「さっきから、ずっとあたしのCB見てた。目がマジだった」
悠真の喉が詰まり、やがて絞り出すように言った。
「……乗ってみたい、です。ずっと、ずっと憧れてて。でも、実家が厳しくて……バイクに乗りたいなんて、言えなくて」
凛は少しだけ視線を逸らし、静かに頷いた。
「……名前、なんていうの?」
「……三浦、悠真。ボク、悠真って言います」
「悠真。いい名前じゃん。……じゃあ、悠真。乗ってみる?」
「……え?」
「タンデムでいいなら、乗せてあげる。CB125Rに」
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Scene.04 最初で最後の風
静かな裏道。車通りも人影も少ないコース。
空は茜色に染まり、風は優しく二人を包む。
凛のCB125Rが静かにエンジンを回す。
マフラーから吐き出される音は低く落ち着いていて、心地よい緊張感が漂う。
「後ろ、しっかり掴まってて。腰じゃなくて、あたしのジャケットでもいい」
「は、はい……」
悠真はそっと後ろに乗り、震える指で凛のジャケットの端を掴んだ。
「いくよ」
スロットルが開き、バイクは風を切って走り出した。
⸻
Scene.05 夕焼けと、斜めの地平線
日が傾き、街全体がオレンジ色に染まっていく。
凛の操作は滑らかで、バイクは軽やかに加速と減速を繰り返す。
悠真は後ろで身体を預け、全身が風に溶けていく感覚を覚えた。
そして、カーブに差し掛かる。
(わっ……)
バイクが大きくリーンする。悠真の体も自然と傾き、視界が斜めに流れる。
その時――
「……うわ……」
坂道の先に広がる、海沿いの景色。
オレンジに染まった空と、光る水平線。
その全てが斜めに滑り落ちるように流れていった。
「すごい……世界が……傾いてるのに、倒れてない……!」
悠真の声が、ヘルメットの中で震えていた。
凛はバックミラー越しにその様子を見て、わずかに微笑んだ。
「それが、バイクの魔法。怖いけど、気持ちいいでしょ?」
「はい……はいっ……!」
バイクが風を引き裂くたび、悠真の中の何かがほどけていく。
(ボク……バイクに、乗りたい。自分の手で、この風を感じたい)
⸻
Scene.06 バイクショップの灯りの下で
ライドを終え、学校の近くのバイクショップの前で停車する。
夕焼けはすでに夜の色へと変わり始めていた。
凛はヘルメットを脱ぎ、悠真の方を見た。
「……乗りたくなった?」
「……はい。乗りたいです。もっと、走りたい……」
凛は静かに頷き、真剣な眼差しを向ける。
「うちの店、原付二種もある。アンタに合うバイク……探してやる」
悠真はその言葉に目を見開き、次の瞬間、真っ直ぐに凛を見返した。
「お願いしますっ……!」
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――斜めの地平線は、
心をまっすぐにする魔法だった。
To be Continued...
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