しまなみブルー ー風のSHIFTー 〜中型で挫折した元バイク女子が原付二種に乗ったら仲間と出会って友情も恋も人生も全部シフトアップしてた件〜
通りすがりのしまなみライダーTAKA☆
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第14話 『それぞれの”好き”、それぞれの”想い”』
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Scene.01 日曜の午後、整備工場の片隅で
夕暮れ時の今治オートセンター。
整備場には工具の金属音が時折響き、油と金属の匂いが混じった空気が漂っていた。
隼人は作業用の布で手を拭きながら、点検を終えたジスペケを見やった。
「……はい、これ、できたぞ」
バイクのハンドルに跨っていた結が、ぱっと顔を明るくして頷く。
「ありがとう! すっごく調子いい感じだよ!」
「ギアの入りもよくなってるはずだ。あと、リアブレーキが少し甘かったから調整しておいた。次はオイル交換の時期だから忘れるなよ」
淡々とした口調の奥に、整備士としての丁寧な気遣いが滲んでいた。
結は一度バイクから降り、少しだけ迷ったように視線を落とす。
「……あの、隼人くん」
「ん?」
作業服の袖で額を拭いながら隼人が顔を上げる。
「前に言ってくれた“ふたりで走ろう”って……あれ、本気で言ってくれたの?」
「ん? ああ、本気。今日だっていいくらいだ」
軽い調子で言いながらも、隼人の目は真剣だった。
結の胸がほんのり熱くなる。
「……じゃあ、来週、休み取れたら連れてってほしい。私……隼人くんとなら、もっと遠くまで行ける気がするから」
一瞬、整備場に静寂が広がる。
隼人は照れたように視線を外し、わずかに顔を赤くした。
「……よし、じゃあ来週な。しまなみ越えて、広島まで足伸ばすか」
「うん!」
結は力強く頷く。その声は、エンジンの鼓動よりも確かに響いた。
その瞬間、整備工場の空気がどこか柔らかく変わり、春の陽射しのように暖かい空気が二人を包み込んでいた。
⸻
Scene.02 凛のもやもや
同じ日の夕方、凛はガレージでCB125Rのチェーンを磨いていた。
小さな音で動画が流れているが、内容は頭に入ってこない。
タオルを持つ手が何度も止まってしまう。
(……結、兄貴と走る約束したんだ)
数日前、整備工場に寄ったときに見かけた結と隼人の様子。
結が少し恥ずかしそうに笑っていたのが印象に残っていた。
彩花から「結ちゃん、隼人さんとどっか行くって嬉しそうにしてたで」と聞かされた言葉も、胸に引っかかっている。
(別に……悪いことじゃない。結は楽しそうだったし)
そう思おうとしても、心の奥がざわつく。
兄のことを嫌っているわけじゃない。むしろ尊敬している。
でも、結が兄と一緒にいる時の表情を思い出すたび――複雑な気持ちになる。
(なんでこんなに気になるんだろ)
磨き終わったホイールがきらりと光る。
凛は工具を置き、夕焼けを見つめた。
(あたし……ただ、結とまた走りたいだけなのかな)
胸の奥で渦巻く感情に答えは出なかった。
ただ、自分の心が少しずつ揺れていることだけは、はっきりと分かっていた。
⸻
Scene.03 悠真の気づき
同じ夜。
悠真は自室で、暗い中スマホを開いてツーリングの写真を眺めていた。
凛の後ろ姿、ミラーに映る自分の笑顔――走った時間が鮮やかによみがえる。
(ボク……凛ちゃんのこと、“憧れ”だけじゃないんだ)
胸がぎゅっと締めつけられる。
性別のこと、自分自身のこと。
それをすべて受け止めてくれた凛に対して、抱いている気持ちは友情ではなく――もっと強く、深いものだと気づきかけていた。
(でも、伝えたら……壊れちゃうかもしれない)
不安と同時に、凛の存在がどれほど大切かを痛感する。
(凛ちゃんと、もっと走りたい。もっと、話したい)
スマホの画面を胸に抱きしめ、悠真は目を閉じた。
⸻
Scene.04 誰にも言えない気持ち
深夜。
今治オートセンターの2階、凛の部屋。
机の上には整備マニュアルとノートが広がり、作業用のライトが小さく光を放っている。
凛は椅子に腰掛けたまま、工具を握りしめていた。
「……あたし、なんであんなに気になってんだろ。悠真のこと」
ふと、机の端に置かれた写真立てに目が留まる。
そこには幼い自分と兄、そして優しく笑う母が写っていた。
(自分で選んだことだけ走りたいって思ってたのに……今は、誰かのことばかり考えてる)
胸の奥がざわつき、落ち着かない。
「……うざいな、自分」
呟いて、静かに電気を消す。
暗闇の中、凛の心は複雑な感情で揺れていた。
⸻
――それぞれの想いが、静かに走り出す。
誰にも言えない“好き”を胸に、次の旅へ。
To be Continued...
夕暮れ時の今治オートセンター。
整備場には工具の金属音が時折響き、油と金属の匂いが混じった空気が漂っていた。
隼人は作業用の布で手を拭きながら、点検を終えたジスペケを見やった。
「……はい、これ、できたぞ」
バイクのハンドルに跨っていた結が、ぱっと顔を明るくして頷く。
「ありがとう! すっごく調子いい感じだよ!」
「ギアの入りもよくなってるはずだ。あと、リアブレーキが少し甘かったから調整しておいた。次はオイル交換の時期だから忘れるなよ」
淡々とした口調の奥に、整備士としての丁寧な気遣いが滲んでいた。
結は一度バイクから降り、少しだけ迷ったように視線を落とす。
「……あの、隼人くん」
「ん?」
作業服の袖で額を拭いながら隼人が顔を上げる。
「前に言ってくれた“ふたりで走ろう”って……あれ、本気で言ってくれたの?」
「ん? ああ、本気。今日だっていいくらいだ」
軽い調子で言いながらも、隼人の目は真剣だった。
結の胸がほんのり熱くなる。
「……じゃあ、来週、休み取れたら連れてってほしい。私……隼人くんとなら、もっと遠くまで行ける気がするから」
一瞬、整備場に静寂が広がる。
隼人は照れたように視線を外し、わずかに顔を赤くした。
「……よし、じゃあ来週な。しまなみ越えて、広島まで足伸ばすか」
「うん!」
結は力強く頷く。その声は、エンジンの鼓動よりも確かに響いた。
その瞬間、整備工場の空気がどこか柔らかく変わり、春の陽射しのように暖かい空気が二人を包み込んでいた。
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同じ日の夕方、凛はガレージでCB125Rのチェーンを磨いていた。
小さな音で動画が流れているが、内容は頭に入ってこない。
タオルを持つ手が何度も止まってしまう。
(……結、兄貴と走る約束したんだ)
数日前、整備工場に寄ったときに見かけた結と隼人の様子。
結が少し恥ずかしそうに笑っていたのが印象に残っていた。
彩花から「結ちゃん、隼人さんとどっか行くって嬉しそうにしてたで」と聞かされた言葉も、胸に引っかかっている。
(別に……悪いことじゃない。結は楽しそうだったし)
そう思おうとしても、心の奥がざわつく。
兄のことを嫌っているわけじゃない。むしろ尊敬している。
でも、結が兄と一緒にいる時の表情を思い出すたび――複雑な気持ちになる。
(なんでこんなに気になるんだろ)
磨き終わったホイールがきらりと光る。
凛は工具を置き、夕焼けを見つめた。
(あたし……ただ、結とまた走りたいだけなのかな)
胸の奥で渦巻く感情に答えは出なかった。
ただ、自分の心が少しずつ揺れていることだけは、はっきりと分かっていた。
⸻
Scene.03 悠真の気づき
同じ夜。
悠真は自室で、暗い中スマホを開いてツーリングの写真を眺めていた。
凛の後ろ姿、ミラーに映る自分の笑顔――走った時間が鮮やかによみがえる。
(ボク……凛ちゃんのこと、“憧れ”だけじゃないんだ)
胸がぎゅっと締めつけられる。
性別のこと、自分自身のこと。
それをすべて受け止めてくれた凛に対して、抱いている気持ちは友情ではなく――もっと強く、深いものだと気づきかけていた。
(でも、伝えたら……壊れちゃうかもしれない)
不安と同時に、凛の存在がどれほど大切かを痛感する。
(凛ちゃんと、もっと走りたい。もっと、話したい)
スマホの画面を胸に抱きしめ、悠真は目を閉じた。
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Scene.04 誰にも言えない気持ち
深夜。
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凛は椅子に腰掛けたまま、工具を握りしめていた。
「……あたし、なんであんなに気になってんだろ。悠真のこと」
ふと、机の端に置かれた写真立てに目が留まる。
そこには幼い自分と兄、そして優しく笑う母が写っていた。
(自分で選んだことだけ走りたいって思ってたのに……今は、誰かのことばかり考えてる)
胸の奥がざわつき、落ち着かない。
「……うざいな、自分」
呟いて、静かに電気を消す。
暗闇の中、凛の心は複雑な感情で揺れていた。
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誰にも言えない“好き”を胸に、次の旅へ。
To be Continued...
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