22 / 79
広がる苦さ、求めるは光
しおりを挟む
広がる苦さ、求めるは光
(ほんとにいいのかな....)
自分の我儘だと言った。それがどういう意味かなんて怖くて聞く気にならなかったけど。
味見もさせてもらえて、お金まで貰えるなんて私にこんな幸運が降り注いでいいんだろうか?
ご飯を作りながら考えていると玄関のドアが開く音がした。
「ただいま。」
「メア.....おかえり。どうしたの。」
妹は意気消沈しているようだった。今朝のレオの一言がまだ効いているのかもしれない。
「....彼氏が浮気してたの。信じられない。」
「そんな....いい人だって言ってなかった?」
「優しかったんだもん。優しい言葉もかけてくれるし....」
泣き出してしまったメアに作りかけていたスープの火を慌てて止める。
「大丈夫よ。次はもっといい人を見つけたらいいんだから。」
「....じゃああの人紹介してくれる?」
「あの人?」
「朝お姉ちゃんを迎えに来てた人」
「え、でも貴女レオくんに言われて傷ついたんじゃ....」
「でもあんなにかっこいい人いないもん。冷たい目もかっこよかった。」
胸がざわついた。妹のために全て譲ってきた。おもちゃも、服も、母の愛も。
心に苦いものが込み上がってくる。
「それなら....一度聞いてみるけど。あまり期待しないでね。」
「何で?お姉ちゃんの彼氏なの?」
「違うけど....」
「それならいいじゃない。ね、会わせてよ。」
「....明日聞いておくね。ご飯、もうすぐ出来るからシャワー浴びてらっしゃい。」
「はーい」
可愛いメア。レオだって朝はあんなこと言ったけどメアと話せばメアの可愛さに気づくかもしれない。
「はぁ....」
「セラ姉?どうしたの?」
「ライ!」
ライが帰ってきていたことすら気づかなかった。配達業をこなすライの帰りはセラよりも遅いことが多い。
「大丈夫?顔色悪いけど。」
「あ、ううん。大丈夫よ。ご飯出来てるから。」
「今日どっか出かけた?エリシアたち?」
「いや、違う友達。」
「.....男?」
ライはセラの周りの男に敏感だ。働かない母親とメアのことをセラ以上に嫌うライはセラの心配ばかりする。
「そうだけど、変な人じゃないから。」
「...どんな人なの?」
「同じクラスの人。クローネンカカオの息子さんで、仕事もくれるって言うのよ。」
「は?それって......」
眉間に皺を寄せたライは何も言わない。
「セラ姉はその人のことどう思ってるの?」
「どうって.....優しい人よ。朝もメアの嫌味に怒ってくれたし....」
「またメアがなんか言ったわけ?」
「少しだけ。大したことじゃないんだけど。でもメアはその人に会いたいんだって。」
「は?意味わかんねえ。メア彼氏いるだろ。」
「何か今日浮気されたらしいのよ。落ち込んでるから優しくしてあげて。」
「どうせすぐ新しいの見つけてくるんだから優しくしなくていいよ。セラ姉はメアに甘すぎる。」
「仕方ないでしょう?」
「.....まあなんでもいいけど俺も会ってはみたいかな、その人。」
「何でライが会いたがるのよ。」
「仕事くれたんだろ?礼言わなきゃ。」
そう言うライは感謝を述べたい人の顔ではなかった。
「もう....恋人でもないのに家に呼んだら迷惑でしょ。再来週また家の前まで来てくれると思うけど。」
「ならその時挨拶するよ。ご飯食べよ。メアなんか待ってらんない。」
「シャワー長いものねえ。ライ、貴方先に食べなさい。お腹空いたでしょ。」
「そうさせてもらうよ。」
ご飯を食べて、ベッドに潜り込もうとした時、その存在を思い出した。
「あ、そうだ....」
買ってもらったぬいぐるみ。
『これと寝たら寂しくないだろ?』
横に置くと、寂しいなんて思ってなかったはずなのに安心する気がした。小さなぬいぐるみを抱きしめて心の不安を抱え込む。
いつも消えてくれない、心に居座る影。
明日、屋上に彼は来てくれるだろうか。
影を晴らしてくれる光が、恋しくなった。
(ほんとにいいのかな....)
自分の我儘だと言った。それがどういう意味かなんて怖くて聞く気にならなかったけど。
味見もさせてもらえて、お金まで貰えるなんて私にこんな幸運が降り注いでいいんだろうか?
ご飯を作りながら考えていると玄関のドアが開く音がした。
「ただいま。」
「メア.....おかえり。どうしたの。」
妹は意気消沈しているようだった。今朝のレオの一言がまだ効いているのかもしれない。
「....彼氏が浮気してたの。信じられない。」
「そんな....いい人だって言ってなかった?」
「優しかったんだもん。優しい言葉もかけてくれるし....」
泣き出してしまったメアに作りかけていたスープの火を慌てて止める。
「大丈夫よ。次はもっといい人を見つけたらいいんだから。」
「....じゃああの人紹介してくれる?」
「あの人?」
「朝お姉ちゃんを迎えに来てた人」
「え、でも貴女レオくんに言われて傷ついたんじゃ....」
「でもあんなにかっこいい人いないもん。冷たい目もかっこよかった。」
胸がざわついた。妹のために全て譲ってきた。おもちゃも、服も、母の愛も。
心に苦いものが込み上がってくる。
「それなら....一度聞いてみるけど。あまり期待しないでね。」
「何で?お姉ちゃんの彼氏なの?」
「違うけど....」
「それならいいじゃない。ね、会わせてよ。」
「....明日聞いておくね。ご飯、もうすぐ出来るからシャワー浴びてらっしゃい。」
「はーい」
可愛いメア。レオだって朝はあんなこと言ったけどメアと話せばメアの可愛さに気づくかもしれない。
「はぁ....」
「セラ姉?どうしたの?」
「ライ!」
ライが帰ってきていたことすら気づかなかった。配達業をこなすライの帰りはセラよりも遅いことが多い。
「大丈夫?顔色悪いけど。」
「あ、ううん。大丈夫よ。ご飯出来てるから。」
「今日どっか出かけた?エリシアたち?」
「いや、違う友達。」
「.....男?」
ライはセラの周りの男に敏感だ。働かない母親とメアのことをセラ以上に嫌うライはセラの心配ばかりする。
「そうだけど、変な人じゃないから。」
「...どんな人なの?」
「同じクラスの人。クローネンカカオの息子さんで、仕事もくれるって言うのよ。」
「は?それって......」
眉間に皺を寄せたライは何も言わない。
「セラ姉はその人のことどう思ってるの?」
「どうって.....優しい人よ。朝もメアの嫌味に怒ってくれたし....」
「またメアがなんか言ったわけ?」
「少しだけ。大したことじゃないんだけど。でもメアはその人に会いたいんだって。」
「は?意味わかんねえ。メア彼氏いるだろ。」
「何か今日浮気されたらしいのよ。落ち込んでるから優しくしてあげて。」
「どうせすぐ新しいの見つけてくるんだから優しくしなくていいよ。セラ姉はメアに甘すぎる。」
「仕方ないでしょう?」
「.....まあなんでもいいけど俺も会ってはみたいかな、その人。」
「何でライが会いたがるのよ。」
「仕事くれたんだろ?礼言わなきゃ。」
そう言うライは感謝を述べたい人の顔ではなかった。
「もう....恋人でもないのに家に呼んだら迷惑でしょ。再来週また家の前まで来てくれると思うけど。」
「ならその時挨拶するよ。ご飯食べよ。メアなんか待ってらんない。」
「シャワー長いものねえ。ライ、貴方先に食べなさい。お腹空いたでしょ。」
「そうさせてもらうよ。」
ご飯を食べて、ベッドに潜り込もうとした時、その存在を思い出した。
「あ、そうだ....」
買ってもらったぬいぐるみ。
『これと寝たら寂しくないだろ?』
横に置くと、寂しいなんて思ってなかったはずなのに安心する気がした。小さなぬいぐるみを抱きしめて心の不安を抱え込む。
いつも消えてくれない、心に居座る影。
明日、屋上に彼は来てくれるだろうか。
影を晴らしてくれる光が、恋しくなった。
0
あなたにおすすめの小説
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
借りてきたカレ
しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて……
あらすじ
システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。
人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。
人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。
しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。
基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる