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未来の兄が、背負う覚悟
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未来の兄が、背負う覚悟。
「ライ、今日も仕事かよ。」
「うん。そうだよ。」
「お前ほんと休みなくね?遊んだりとかしねーの?」
「別に。俺はセラ姉が笑ってくれればそれでいい。」
「お前....重度のシスコンかよ。」
「何とでも。あ、今日は仕事じゃないか。」
「お、違うの?なら遊びに――――」
「無理。人に会うから。」
友達と、遊びたいと思ったことは働き出してから忘れた。14で働けるようになるまで、働きたくても働けなかった。1人で働くセラ姉を、ずっと見ていた。セラ姉は母親も妹も、父親のことすら悪く言わない。人を理解して諦めてしまうセラ姉はいつも損してばかりだった。
そんな姉が、やっと望んだのだ。一緒にいると、少し恥ずかしそうにして、女の子らしい顔になる。適当な男だったらぶっ飛ばしてしまおうと思ったけれどそんな心配はなさそうだった。
『放課後、ここな。』
メッセージと共に送られて来た場所はクローネンカカオが営業するカフェのようだ。レオの連れだと言うと奥に案内される。
「来たか。」
「遅くなってすみません。」
「俺も来たばかりだ。仕事、毎日入ってるのか?」
「そうですね。無い日の方が少ないです。」
「....あまり根を詰めると倒れるぞ。」
「姉は14から休み無しでした。俺が働き始めてやっとたまに友達と出かけたり出来るようになったんです。」
「....俺はお前に礼を言わないといけないな。お陰でセラと出かけられたわけだから。」
「いいんです。セラ姉のあんな顔初めて見ました。あんな顔が見れるなら、無理してでも行かせます。」
「お前の気持ちはよくわかった。そこで本題だ。」
本題。何かを話すつもりだったのは分かるが結局考えても想像がつかなかった。
「何でしょうか?」
「正直、あの環境はお前のセラにとって劣悪だ。この前みたいにセラがふらりといなくなるのも初めてじゃないんだろ?」
「はい。でもどうしようもないんです。セラ姉や俺では名義人にはなれない。」
「2つの提案だ。俺もこの件について父親と話した。未来の嫁に関わる話だからな。」
未来の嫁。聞き間違いではなくそう言った。この人はライが思っている以上に本気のようだ。
「1つ目にお前をうちの会社で雇うこと。
2つ目に俺の親名義で家を借りてお前とセラ2人で住むこと。来年になればお前は社員寮に、俺はセラと同棲出来る。どう思う?」
想像の斜め上をいく提案に頭がついていかない。
「えっと.....本気ですか?」
「至って本気だ。父親もそれがベストだろうと判断している。」
「恋人とは言え付き合って間もない他人ですよね?」
「そうかもな。でも俺はセラに惚れた時点で未来を決めてる。それは天地がひっくり返っても変わらん。」
その根拠はどこから来るんだ。一歩間違えれば酷く責任感のない言葉に聞こえるのにこの人が言うと妙に説得力がある。
「しかし....母にはどう言えば?こんな提案を聞けば癇癪を起こすのは必須です。」
「お前の仕事の件は簡単だ。新しい条件のいい職場が見つかったとでも言えばいい。家の件の方は……話さない方がいいだろうな。荷物、大してないよな?母親がいない日に学校を1日休んで引っ越す。帰って来たらもぬけの殻だ。」
「.....母のことです。学校まで乗り込んできます。」
「君のお父さんと連絡を取った。」
「え?」
「養育費の件も、お前たちが働いてる件も何も分かっていなかった。養育費の件を聞いたら激怒していたよ。確かに離婚原因は父親だ。だが養育費を使い込んでいるとなれば母親もタダでは済まない。お前たち2人を避難させた後、父親が話をつけに行く予定だ。」
「そこまでしてもらうわけには....これはうちの問題です。」
「残念ながらそうじゃない。セラの身の安全はアインハルト家、引いてはクローネンカカオ社の優先事項だ。」
本気だ。ライがどんなに頭を悩ませ、苦しんでも出来なかったことをこの人はセラのために持てる全てを使ってやろうとしている。
「.....俺は、仕事の役に立つでしょうか。」
「職場でのお前の勤務評価はすこぶる良い。セラも言うくらいだ。今から働き始めれば20を過ぎる頃には立派な社員になってくれているだろう。」
「.......分かりました。お願いします。ですが....このご恩は必ず返します。」
「うちで働いてセラを寄越してくれることがなによりの恩返しだ。お前もまだ15だ。ちゃんと人生を謳歌しろ。俺みたいにダメにならずに。」
そういう彼は何かを悟った大人に見えた。
「ライ、今日も仕事かよ。」
「うん。そうだよ。」
「お前ほんと休みなくね?遊んだりとかしねーの?」
「別に。俺はセラ姉が笑ってくれればそれでいい。」
「お前....重度のシスコンかよ。」
「何とでも。あ、今日は仕事じゃないか。」
「お、違うの?なら遊びに――――」
「無理。人に会うから。」
友達と、遊びたいと思ったことは働き出してから忘れた。14で働けるようになるまで、働きたくても働けなかった。1人で働くセラ姉を、ずっと見ていた。セラ姉は母親も妹も、父親のことすら悪く言わない。人を理解して諦めてしまうセラ姉はいつも損してばかりだった。
そんな姉が、やっと望んだのだ。一緒にいると、少し恥ずかしそうにして、女の子らしい顔になる。適当な男だったらぶっ飛ばしてしまおうと思ったけれどそんな心配はなさそうだった。
『放課後、ここな。』
メッセージと共に送られて来た場所はクローネンカカオが営業するカフェのようだ。レオの連れだと言うと奥に案内される。
「来たか。」
「遅くなってすみません。」
「俺も来たばかりだ。仕事、毎日入ってるのか?」
「そうですね。無い日の方が少ないです。」
「....あまり根を詰めると倒れるぞ。」
「姉は14から休み無しでした。俺が働き始めてやっとたまに友達と出かけたり出来るようになったんです。」
「....俺はお前に礼を言わないといけないな。お陰でセラと出かけられたわけだから。」
「いいんです。セラ姉のあんな顔初めて見ました。あんな顔が見れるなら、無理してでも行かせます。」
「お前の気持ちはよくわかった。そこで本題だ。」
本題。何かを話すつもりだったのは分かるが結局考えても想像がつかなかった。
「何でしょうか?」
「正直、あの環境はお前のセラにとって劣悪だ。この前みたいにセラがふらりといなくなるのも初めてじゃないんだろ?」
「はい。でもどうしようもないんです。セラ姉や俺では名義人にはなれない。」
「2つの提案だ。俺もこの件について父親と話した。未来の嫁に関わる話だからな。」
未来の嫁。聞き間違いではなくそう言った。この人はライが思っている以上に本気のようだ。
「1つ目にお前をうちの会社で雇うこと。
2つ目に俺の親名義で家を借りてお前とセラ2人で住むこと。来年になればお前は社員寮に、俺はセラと同棲出来る。どう思う?」
想像の斜め上をいく提案に頭がついていかない。
「えっと.....本気ですか?」
「至って本気だ。父親もそれがベストだろうと判断している。」
「恋人とは言え付き合って間もない他人ですよね?」
「そうかもな。でも俺はセラに惚れた時点で未来を決めてる。それは天地がひっくり返っても変わらん。」
その根拠はどこから来るんだ。一歩間違えれば酷く責任感のない言葉に聞こえるのにこの人が言うと妙に説得力がある。
「しかし....母にはどう言えば?こんな提案を聞けば癇癪を起こすのは必須です。」
「お前の仕事の件は簡単だ。新しい条件のいい職場が見つかったとでも言えばいい。家の件の方は……話さない方がいいだろうな。荷物、大してないよな?母親がいない日に学校を1日休んで引っ越す。帰って来たらもぬけの殻だ。」
「.....母のことです。学校まで乗り込んできます。」
「君のお父さんと連絡を取った。」
「え?」
「養育費の件も、お前たちが働いてる件も何も分かっていなかった。養育費の件を聞いたら激怒していたよ。確かに離婚原因は父親だ。だが養育費を使い込んでいるとなれば母親もタダでは済まない。お前たち2人を避難させた後、父親が話をつけに行く予定だ。」
「そこまでしてもらうわけには....これはうちの問題です。」
「残念ながらそうじゃない。セラの身の安全はアインハルト家、引いてはクローネンカカオ社の優先事項だ。」
本気だ。ライがどんなに頭を悩ませ、苦しんでも出来なかったことをこの人はセラのために持てる全てを使ってやろうとしている。
「.....俺は、仕事の役に立つでしょうか。」
「職場でのお前の勤務評価はすこぶる良い。セラも言うくらいだ。今から働き始めれば20を過ぎる頃には立派な社員になってくれているだろう。」
「.......分かりました。お願いします。ですが....このご恩は必ず返します。」
「うちで働いてセラを寄越してくれることがなによりの恩返しだ。お前もまだ15だ。ちゃんと人生を謳歌しろ。俺みたいにダメにならずに。」
そういう彼は何かを悟った大人に見えた。
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