王弟が愛した娘ー音に響く運命ー現代パロ

Aster22

文字の大きさ
65 / 79

甘さに紛れた不安

しおりを挟む
甘さに紛れる不安
「楽しかったか?ショッピング。行ってきたんだろ?」
エリシアたちと出かけた次の週。珍しく早帰り出来たらしいレオが家に来た。
「うん、楽しかったよ。アメリスもエリシアもデート行くって」
「へえ、彼氏いんのか?」
「まだ。それにエリシアの相手アレスだって。なんか意外だった。あ、レオ誰にも言わないよね?」
「お前が言うなって言ったらクシェルにも言わねえよ。つーかアレスか。それなら安心だな。あの睨みが効いたか。」
「睨んだの?」
どことなく気まずそうなレオ。
「……」
「なによ。アメリスが言ってたよ?私のとこ来る男の子殺しそうな目で見てるって。」
「いや、まあそれは間違ってないんだが。……あの保健室連れて行ってもらった日、覚えてるか?」
「保健室?……ああ、あの頭痛かった日?」
「そう。あの時アレスが話に来てただろ。お前が馴れ馴れしくあいつと話すのに腹が立って頭痛いなんて仮病を使ってあいつを睨んだんだ。」
こんなことをする人間のどこが完璧なんだ。
「呆れた。仮病だったの?変なことばっかり言ってると思ってたけど。」
「……俺も必死だったんだ。お前が鈍いから。」
「そんなに鈍かった?レオは女の子に慣れてると思ってたからよく分からなかったのよ。」
「分かってるよ。過去の俺の悪行が招いたんだろ……でも惚れた女に明らかにお前を狙ってる男と仲良くしたらと言われたらショックなんだよ。」
「アレスは単に漫画の話がしたくて来てたのかと思ってたの。」
「そんなわけがあるか。お前夏休み明けの学園祭、どうするつもりだ。」
「どうするって……普通に働くけど。」
「正直隠しておくのは難しいぞ。」
「分かってるけど……出来るだけ頑張るの。どうしても無理なら諦める。」
「全く……分かったよ。セラ、こっち向け。」
言われた通りレオの方を向けば降ってくるのはキス。引き寄せられた腰にある手は強くて、離してくれそうにない。頬に添えられた手が首筋をなぞって、降りていく。その瞬間ハッとしたようにセラを引き離した。
アメリスの言葉がよぎってしまう。
『手、出されてないの?』
聞きたくなる。でも聞くのはどうしたって恥ずかしい気がした。
その時買った物の存在を思い出す。
「あ……」
「どうした?」
「レオ、待ってて。」
包んでもらった物を部屋から持ってくる。
「これ、プレゼント。ほんとに気持ちだけなんだけど。」
「俺、誕生日じゃないぞ?」
「レオには沢山してもらったから何かしたくて。」
「そんなこといいのに。……開けていいか?」
「うん。」
プレゼントを開けてもらう時は緊張する。人が、いつだって喜んでくれるとは限らないから。
緊張するセラに反してレオは嬉しそうに
包みを開けていく。出てきたものを見たレオの顔が綻んだのを見て、セラの緊張も解けた。
「キーケースか。お前がこうやって気にしてくれるの、すげえ嬉しい。大事にする」
「それなら仕事にも使えるかと思って……喜んでくれてよかった。」
「ああ、使う。セラ、愛してる。」
「なに急に……ん……ゃ……」
レオの、鋭い目。そこに愛が混じると妙に色気があって、いつも心臓は甘く跳ねてしまう。
「私も、レオが好きだよ。」
「なあ、いつか愛してるって言ってくれるか?」
「がんばる……」
「はあ……俺そろそろ限界かも。」
「なにが……」
その時、ドアが開く音がしてライが帰ってきた。
「ただいまーあ、レオさんお久しぶりです。俺、また邪魔しました?」
「いや、俺はお前に救われてる。」
「んー、俺的にはレオさん我慢しすぎな気もしますけど。」
「それ弟が言う言葉じゃないぞ……」
なんの話をしているのかは分からないがレオが来る前に仕込んだご飯の続きを作ってしまう。
三人で食べるご飯は美味しい。ライと二人も平和だけど三人になると賑やかになって、楽しくなる。
レオを見送るとピアノを弾いた。楽しさと賑やかさは浮かびかけた不安を、沈み込ませていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。 姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。 しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──? 全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

借りてきたカレ

しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて…… あらすじ システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。 人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。 人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。 しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。 基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

精一杯のエゴイスト

宮内
恋愛
地方都市で地味に働く佐和。以前の恋のトラウマに縛られて四年も恋愛から遠ざかる。そんな佐和に訪れた出会い。立ち止まる理由ばかりを探しても止まらない想いの先にあるものは。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...