王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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落とされた証が導く先へ

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教会の前の石段に書状とブルータル辺境伯の敗残兵の物と思われる革ベルトが落ちていたのは1週間ほど前のことだった。
書には
[ミテル村より北西の丘の廃城に賊の影あり]
と書かれてあった。
書かれた美しい文字に貴族の誰かが密告したのではないかとすら思われたそうだ。
本来なら匿名の密告などは信憑性が低いとして王の耳にまでは届かないのだが、革ベルトに確かにブルータル辺境伯の紋章があったこと、ベルトに僅かな血痕があったことから治安局を通じて王の耳にまで届いたのが5日前。
そしてそのまま王はレオを呼び出した。
「北西の丘の廃城に賊が入り込んでいるらしい。」
「どうせただの噂では?」
「一緒に血とクラウディヒト辺境伯の紋のついた革ベルトが落ちていた。流石に噂では済まされん。」
「血ですか。置いたものは何者なんでしょうね。」
「分からん。まずは真偽の確認からだ。今すぐに調査しろ。もし真実ならば討伐はお前に任せる。」
「承知しました。」
表の面倒ごとは兄王が、裏の面倒ごとはレオが引き受けることで王政は成り立っていた。民衆人気の高いレオを王にと推すものも多いがレオ自身はそんなものに興味は微塵もない。尊敬する兄王の影として生きるのが性に合っていた。
斥候を送り、事実だと判明したのが二日後。
軍を引き連れて西の端にあるグンターゲン村に向かったのがその翌日だ。
あの書にはもう一つ奇妙な点があった。ミテル村にはグンターゲン村と言う更に西に寄った村が隣にある。何故グンターゲン村と書かずにミテル村と書いたのか。
軍を近場の森に隠すとクシェルを連れて村へ入る。井戸のそばにいた女がレオの姿を認めると慌てて奥へ引っ込んだ。
「王都の紋だ」
「兵だ!」
畑の手を止めた男が叫ぶ。
「村長を呼べ!」
ほどなくして白髪の老人が現れた。
一瞥すると目は見開かれ、はっとした顔をする。
「こ、これはもしや...王弟殿下であらせられますかな?」
「今はただの軍の長だ。北西の賊の噂は?」
「賊....?近頃賊が減ったと言う噂なら聞き及んでおりますが....」
なるほど。近場の賊は全て城に吸収されたということだろう。
「西の方に詳しいものはおらぬか?この先は地図に載っていない道も多い。」
「それであれば薬師をしている娘が詳しいかと。すぐに呼んで参ります。」
奥へ引っ込んだ村長の代わりに赤褐色の肌の少年が見えた。少年がこちらを見た。
強く燃える瞳と、目が合った。
 
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