王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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戦いが暴くもの

明朝。戦前の張り詰めた空気が軍を包む。死を意識せずにはいられないこの瞬間、兵たちが思うのは何なのだろう。家族か、恋人か、それとも何も思わないのか。
狼煙が上がった。それと同時に鋭くなる笛。
城の中では飲み疲れて眠っている賊たちがあった。
「火事だ!!」
見張りが城に駆け込んできたのは夜が明けてすらない時間だった。たちまち城内は混乱に陥った。狼煙を見た瞬間我先にと外へ出ようとする者が門外へ溢れ出た。
「お前たち、待てっ....!」
頭である自分の静止も他所にその勢いは止まらなかった。
どうせお飾りの頭だ。傭兵団の頭をやっていたはずが、気づけば1000の軍の頭にされていた。
生きるのもやっとの生活をしていた。戦があると聞けば出向いたが、減っていく戦に苦しみ、ときに賊のような真似事もして食い繋いだ。
『力が欲しくないか?』
面をつけ、顔も見せない無機質な男はそう聞いた。
『物資と食糧は提供しよう。君が頭になって増える軍をまとめてくれればいい。』
何を言っているのか分からなかった。だが必要なものが手に入るというのは有り難かった。賊の真似事を嫌い、提案を嫌った薬師の小僧を捨てて、俺たちはその男についていった。
男の言った通り、軍は増え続けた。自分を頭に据えたのは元軍人の方が生粋の賊より扱いやすいと判断したからだろう。荒事には慣れていたが、政治のことなどよく分からない軍は言われるがまま城を根城にし、もう少しだと言われた開戦の時を待っていた。
そのはずだったのにーーーー

「頭は!」
「まだらしきものは見えていません!」
「クソッどこにいるんだ!」
大半の賊が門外に出るのを待ってから襲いかかった。賊が罠にかかったと気づいた時には遅く、丘はたちまち戦場となった。賊は面白いように倒れていく。飛び散る血と賊の身体。
(これが、戦争.....)
人を殺したことはある。飛び散る血も、身体も見たことがある。だがそれとは違う残虐さが戦場にはあった。
(頭がいない....)
逃げ惑う賊を切り倒しながら頭を探すがそれらしき者はいなかった。まだ城の中にいるのか。
それとも既に紛れて逃げたのか。
隠し扉の可能性も考えて東側にも僅かだが兵を置いている。退路はないはずーーー
『この城には地下へ通じる道がある。有事の際はここを通って逃げろ。これは家族にも教えてはならん。』
あの男は暗に何かあったら家族を捨てて逃げろと言ったのだ。
確かあの道が通じていたのは。
向きを変え、走り出した。間違っていたのならいい。だがもし合っていれば取り逃してしまう。
「おい、セラ!どこへ行く!!」
レオの声を振り切って駆けていく。時間がない。森を抜けたところに廃村があったはずだ。
木々が頬をかすめ、切れたのを感じた。
見えた。教会の隣に墓地があった。
1人の男が走り去ろうとしていた。
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