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序章 英国フォルティア学院
危機一髪!
しおりを挟む――‥あの後、ケーキとりんごジュースを平らげたクリフェイドは、シフォンに盗聴器などのことは話さず、軽く別れを告げてマコーネル共にシフォンの家を出た。
外に出ると、もう日が暮れていた‥
「あっ」
クリフェイドの突然の声にマコーネルは訝しげに見てくる
「どうかしましたか?」
ごそごそ…
クリフェイドはポケットを探るがやはりなかった。
「僕の七つ道具がない!」
「七つ…… 道具、ですか?」
怪訝な顔のマコーネルにクリフェイドは少し慌てた様子で早口で言った
「わ、悪い!僕は忘れ物だ!!シフォンの部屋に取りに行ってくるから、お前は先に帰ってろ」
そうまくし立てるようにいうと、クリフェイドはマコーネルを置いて、シフォンの家に戻っていった。
「………はぁ… まったく」
溜め息つき、ゆっくりと足を運ぶ先はシフォンの家――‥
クリフェイドの後を追うように向かった。
一方、クリフェイドはというと‥
シフォンの家に入ることはできたが、部屋には入れじまいだった。……というより、先ほどまでいたシフォンの部屋、その扉には鍵が掛かっていて入れないのだ。
――なぜ?
たった数分しか経っていないはずなのだが、いくら呼びかけても声は聞こえない。向こうから応答がないのだ。
だが、扉ごしに聞こえるギシギシ…っ! というベッドの軋むような音に、誰かがいるのは伺える‥。
まさか…
そんな嫌な予感を抱えつつ、クリフェイドは仕方なしに少々荒いが強行手段を取ることにした。
片足を軸に素早く体を回転させると、もう片方の足を振り上げる-
――ドカァッッ!!
原型留まらない元扉だったモノはクリフェイドの強行手段により、ぶっ壊れた。
パラパラパラ‥
埃が舞い、屑が落ちる-
メイドの女が驚くあまり固まっていた。…ベッドに縛りつけられ、ぐったり… としているシフォンに馬乗りで跨がったまま-
「何をしている!!!」
クリフェイドの怒鳴り声に屋敷内から使用人が駆けてくる
「なんですか、今の音は?!」
「シフォン坊ちゃま!どうかなさいましたか!?」
慌てて広い屋敷中から駆けてきた使用人たちは目の前の光景に絶句。
なぜなら――‥
「やはりお前か!!!レナ・クロード!シフォンから離れろ」
ベッドに縛られ、意識のないシフォンに跨がるメイドの女をベリッ!と引きはがし、床に叩きつけたのだから-
ドタッ!
「きゃぁ!! いっ… たいわね!!何すんのよ!?」
そう、メイドの女は…
メイドの服を着、シフォンの家のメイドになりすましたレナ・クロードだった‥。
「五月蝿いっ!!お前、シフォンに何をした!?」
「おい!お前もいつまで寝てるつもりだ!?いい加減起きろっっ!!!」
レナを叩きつけた後、懐から出した折り畳みナイフでシフォンを縛るロープを切る。
「何の騒ぎで―― …レナ・クロード…?」
後からクリフェイドを追ってきたマコーネルはシフォンの部屋にいるレナを見た途端、俄かに目つきが変わった。
「また… また、アンタたちなの!?いつもいつも私の邪魔ばかりっっ!!!」
マコーネルとクリフェイドにキッ!と睨み、癇癪起こすレナ、そこに使用人から連絡があり駆け付けてきたシフォンの父親。
「なっ… シフォン!? 私の息子に何をしたお前たち!!!」
「旦那様!あの方たちは坊ちゃまのご友人で、坊ちゃまを助けてくれた方たちです。あのメイドが坊ちゃまに…」
歳のいった執事がそう説明してくれた。
「お前は…っ!!クロード家の… レナ嬢!?うちの息子に何をした!!!?」
レナにシフォンの父親は詰め寄り問いただす‥
「別に… 既成事実を作ろうとしただけよ!!何が悪いのよ!? 既成事実さえ作れば世間体を気にして、いくらシフォンでも私との結婚を断れないと思ったのよ!
結局は邪魔が入って未遂に終わったんだから… 別にもういいで しょ!!!」
くんっ…
「この飲み物に睡眠薬を入れたのか」
そこにあったのはりんごジュース…。クリフェイドはそれを嗅ぐと、眉を片方、吊り上げた
「えぇそうよ!途中で目を覚まされて暴れられても困るからロープで縛ったわ!アンタの邪魔さえなければ… 私の考えた既成事実計画は完璧だったのにっ!」
―― き‥せい…事実…?
「既成事実作るためだと!?」
そのあまりに勝手で強引なレナの考えにクリフェイドの顔は引き攣る。
無論、そこにいる全員強張った顔で絶句。衝撃が強すぎて何も考えられなくなった‥。
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