室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

文字の大きさ
174 / 516
序章 英国フォルティア学院

危機一髪!

しおりを挟む


――‥あの後、ケーキとりんごジュースを平らげたクリフェイドは、シフォンに盗聴器などのことは話さず、軽く別れを告げてマコーネル共にシフォンの家を出た。

外に出ると、もう日が暮れていた‥


「あっ」

クリフェイドの突然の声にマコーネルは訝しげに見てくる


「どうかしましたか?」

ごそごそ…

クリフェイドはポケットを探るがやはりなかった。


「僕の七つ道具がない!」

「七つ…… 道具、ですか?」

怪訝な顔のマコーネルにクリフェイドは少し慌てた様子で早口で言った

「わ、悪い!僕は忘れ物だ!!シフォンの部屋に取りに行ってくるから、お前は先に帰ってろ」

そうまくし立てるようにいうと、クリフェイドはマコーネルを置いて、シフォンの家に戻っていった。

「………はぁ… まったく」


溜め息つき、ゆっくりと足を運ぶ先はシフォンの家――‥

クリフェイドの後を追うように向かった。


一方、クリフェイドはというと‥

シフォンの家に入ることはできたが、部屋には入れじまいだった。……というより、先ほどまでいたシフォンの部屋、その扉には鍵が掛かっていて入れないのだ。


――なぜ?

たった数分しか経っていないはずなのだが、いくら呼びかけても声は聞こえない。向こうから応答がないのだ。

だが、扉ごしに聞こえるギシギシ…っ! というベッドの軋むような音に、誰かがいるのは伺える‥。


まさか…

そんな嫌な予感を抱えつつ、クリフェイドは仕方なしに少々荒いが強行手段を取ることにした。

片足を軸に素早く体を回転させると、もう片方の足を振り上げる-

――ドカァッッ!!


原型留まらない元扉だったモノはクリフェイドの強行手段により、ぶっ壊れた。


パラパラパラ‥

埃が舞い、屑が落ちる-

メイドの女が驚くあまり固まっていた。…ベッドに縛りつけられ、ぐったり… としているシフォンに馬乗りで跨がったまま-


「何をしている!!!」

クリフェイドの怒鳴り声に屋敷内から使用人が駆けてくる


「なんですか、今の音は?!」

「シフォン坊ちゃま!どうかなさいましたか!?」

慌てて広い屋敷中から駆けてきた使用人たちは目の前の光景に絶句。

なぜなら――‥


「やはりお前か!!!レナ・クロード!シフォンから離れろ」

ベッドに縛られ、意識のないシフォンに跨がるメイドの女をベリッ!と引きはがし、床に叩きつけたのだから-


ドタッ!

「きゃぁ!! いっ… たいわね!!何すんのよ!?」

そう、メイドの女は…


メイドの服を着、シフォンの家のメイドになりすましたレナ・クロードだった‥。

「五月蝿いっ!!お前、シフォンに何をした!?」

「おい!お前もいつまで寝てるつもりだ!?いい加減起きろっっ!!!」

レナを叩きつけた後、懐から出した折り畳みナイフでシフォンを縛るロープを切る。

「何の騒ぎで―― …レナ・クロード…?」


後からクリフェイドを追ってきたマコーネルはシフォンの部屋にいるレナを見た途端、俄かに目つきが変わった。

「また… また、アンタたちなの!?いつもいつも私の邪魔ばかりっっ!!!」

マコーネルとクリフェイドにキッ!と睨み、癇癪起こすレナ、そこに使用人から連絡があり駆け付けてきたシフォンの父親。

「なっ… シフォン!? 私の息子に何をしたお前たち!!!」

「旦那様!あの方たちは坊ちゃまのご友人で、坊ちゃまを助けてくれた方たちです。あのメイドが坊ちゃまに…」

歳のいった執事がそう説明してくれた。


「お前は…っ!!クロード家の… レナ嬢!?うちの息子に何をした!!!?」

レナにシフォンの父親は詰め寄り問いただす‥


「別に… 既成事実を作ろうとしただけよ!!何が悪いのよ!? 既成事実さえ作れば世間体を気にして、いくらシフォンでも私との結婚を断れないと思ったのよ!

結局は邪魔が入って未遂に終わったんだから… 別にもういいで しょ!!!」

くんっ…

「この飲み物に睡眠薬を入れたのか」


そこにあったのはりんごジュース…。クリフェイドはそれを嗅ぐと、眉を片方、吊り上げた

「えぇそうよ!途中で目を覚まされて暴れられても困るからロープで縛ったわ!アンタの邪魔さえなければ… 私の考えた既成事実計画は完璧だったのにっ!」

―― き‥せい…事実…?


「既成事実作るためだと!?」

そのあまりに勝手で強引なレナの考えにクリフェイドの顔は引き攣る。

無論、そこにいる全員強張った顔で絶句。衝撃が強すぎて何も考えられなくなった‥。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

王道学園に通っています。

オトバタケ
BL
人里離れた山の中にある城のような建物。そこは、選ばれし者だけが入学を許される全寮制の男子校だった。 全寮制男子校を舞台に繰り広げられる様々な恋愛模様を描いた短編集。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 説明は初めの方に詰め込んでます。 えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?) ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます! 5/25 お久しぶりです。 書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

処理中です...