― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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- アルファード王国と黒い獅子 -

『アラルドの尋問』

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   グルルルッ


『それと… まさかと思うが、異世界を渡ると最初は馴染んでいない体に負担がかかることを忘れていたのかな?───だとすれば、君らしくないね』

意外と抜けているのかな?と首を傾げるアラルドに小さく溜め息を吐いた。


「ハァ、…アラルド。貴方もご存知だと思いますが、最近 地獄界で混み合った事情で少しトラブルが起きたんですよ。…その、なんて言うんですかね?成り行きとはいえ、久しぶりに仕事から解放された感に気持ちの昂りを抑えられなかった、というのと、

……自分が案外、現場向きなんじゃないかと思っていたところです」


「上の立場で部下にあれこれ指示したところで私が思い描いているように彼らが効率よく動けるかと言われればそうではないし。彼らにも意思があり生きているんですから当然と言えば当然でしょう。
だからこそ、現場復帰で私が直接向かうほうが全てにおいて効率的だと思うんですよ」


諦めたように溜め息をつくと、何故でしょうか。。彼が上に体重を掛けたまま、目を窄めてしまいました。

『……ほう?で、本音は?』

まるで、私自身を見透かすように半眼の目でひたりと見据えられると、何故でしょうか。視線を逸らしたくなるのは───。

「ほ、本音ですか…?」

確信ついたようにそう切り出す彼に、深い溜め息をついて投げやりに… 渋々、口を開いた。

「今まで休日返上で職務に勤しんで来たんです。部下同士の揉め事の仲裁も含め、あの男の右腕として散々働かされたんです。そんな私が長期バカンスのつもりでこちらに来たって誰も文句は言わないでしょう?」


表向きは辞めたことになっていますし、私自身もあちらに戻る気はありませんので。

  そう言い切ると、

アラルドは意味ありげにひたりと見据える。

「な、なんですか?今度は…」


     ガウゥッ!

『どうだかね…。閻魔が君をいつまでも放っておくとは思えないが。それに、自称勇者の執着ぶりは凄いと聞く。向こうで彼のせいで酷い目に遭ったと部下から聞いたが』

「・・・やはり、ご存知でしたか」

今、思い返しても覆い隠すことも忘れた溜め息が、無意識に… 唇から漏れていく。

「ええ、そうですよ。まったく、お恥ずかしい限りです。自分、直属の部下の変化にも気づかず… 彼らの仕事ぶりも長年の付き合いもあり、それなりに打ち解けていたと… 私は思っていたのですが」

『…………』

自分自身でも、どうしてアラルドに話す気になったのかはわからない。だけど、その紡ぐ唇からは次から次へと心の中に閉まっていたシコリが。本音が… 漏れていく。

止まらない本音に、胸の中に秘めていた思いを少し困ったように笑いながらアラルドに話すけれども、そのアラルドはというと… じっとこちらを見て聞き入っていた。


「彼らはいつの間にか自称勇者に魅了され、与えられたやるべき仕事を放棄し、ミスは増え… 気づいたときにはもう遅かった。注意すれば自称勇者はそんなのおかしい!私が上から命令ばかりで彼らが可哀想だと言う」

   そして、

「………そしてそんな彼らも自称勇者が味方してくれたことに気を良くして、私を責めました。自分は上から命令するだけで現場の気持ちもわからない。笑うこともできない冷徹だと… 」

確かにそうですよね、と乾いた笑みを浮かべた。

けれど、じっと今までの話しを聞いていたアラルドは徐ろに大きな肢体を起こすと、

  ぺろっ…

頬を舐められた。

「へ…?」


一瞬のことに体が固まる。
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