― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

- アルファード王国と黒い獅子 -

『イシュメルと - 琥珀 - 』

「ち… ちょっと待ってください！！」


説明しようと口を開きかけたイシュメルに慌てて待ったを掛ける。


「困りますよ！！確かに家族という枠に入ったほうが行動しやすいというアラルドの提案には乗りましたが、私はそもそも家族ごっこをしに来たわけではありませんし…

それに学園に通ったとしても人間の教えることに学べることなどありませんよ」


琥珀の口からさらっと出た人間に対する不快感を示す言葉は分かりやすくもイシュメルのその表情を曇らせた。

「……なるほど、噂の琥珀さまは人間嫌いなのかな？」


───が、何を思ったのか。悪魔らしく口角を上げたかと思えば、その声を押し殺して笑っていた。

「…何か、おかしいですか？」

「いや、すまない。笑うつもりはなかったんだが…。意外と感情豊かなんだと思ってな。
まあ、その件に関しては時期を見てあの人に…父に相談してみるよ。

───つまり、の言うところ、魔界の… 悪魔学校なら問題ないと？」


そういう解釈でいいのかな？とクツリと喉で笑うイシュメルに琥珀は黙り込んでしまった。

「？…どうした、急に黙り込んで」

イシュメルは黙り込んだ琥珀の顔を覗き込もうとしたが、プィッとそっぽ向く琥珀に堪えきれなかったのだろう…。ブフッ!と吹き出す声に琥珀の片眉を吊り上げたのは同時だった。くっくっと笑いながら、背を向けるイシュメルの肩は小刻みに揺れていて…

「───先ほどから、私の反応で弄んでますよね」

そう言って嘆息する琥珀は

「悪魔という種族はそういう生き物だからな」

此処で暮らしていくつもりなら慣れろ、と笑うイシュメルの手を煩わしげにその手を払いのけた。