ザ・兄貴っ！

籠の中の鳥…

『…社長、最近 機嫌がいいよな』

『ああ、なんか…

前に可愛がっていた鳥が帰ってきたらしいぜ？』


『へぇ… 鳥､ねぇ』



――…


「いい子にしてましたか？奈桜…？」



首筋を撫でる指先に、男の子はくすぐったそうに身を縮める

「…ぁ、う…っ」


―― ｸｽｯ


「本当に可愛いですね… 僕の小鳥は-」

「くすぐったいよぉ… 父さんっ」


その言葉に着物を着た男性は目を細める

「ちがうでしょう？

名前で呼びなさいと言ったでしょう？」


そう目を鋭く光らせる父さんに俺は素直に従う



「雪斗さん‥」


俺の父さんは変わってる。父さんって呼ばれると、自分が老けてるように感じるから父さんって呼ばれたくないらしい。

まぁ、俺の父さんって２０代に見えるくらい若く見えるから、本人も気にしてるんだろうね。


…でもって、根っこからの可愛がり屋。俺が小動物に見えて仕方ないってよく言ってくる。そして、暇さえあれば撫でる抱き着く、愛でる… の日々。


そんな父さ――… じゃなかった。雪斗さんは考古学者だけど、本職は表向きは社長、裏ではヤのつく職業の頭をやっている。


そんな二つの顔を持つ雪斗さんだけど、俺に対して、すっごく過保護。ほぼ屋敷や部屋から出してくれない…

外にまた行きたいってお願いしたら悲しそうな表情で言われた



『僕はもう…

奈桜、あなたの傷つく顔を見たくないんです。お前は凄く純粋です。無垢すぎて汚い外の世界に再び出すことを思うと‥


安全なこの屋敷から外に出したくない-』



悲しそうな顔をする雪斗さんに心が痛む。どうしよう‥ 父さんを… 雪斗さんを悲しませたいわけじゃないのに…


『あのね！あのね、俺､平気だよ…？ ずっと、此処にいるから… そんな悲しそうな顔をしないで』

『奈桜…』


きゅっ！と俺を抱きしめる雪斗さんに何も言えない…

そんな俺は小さな小窓から見えた空を飛ぶ鳥が… ひどく羨ましく感じた。