リトル君の魔法学園生活

鬼灯

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43_終業式

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待ちに待った夏休み前日。残すは、終業式のみになった。講堂の椅子に座って待つ時間が暇だ。

「リトルは帰省するの?」

「うん。帰省しないとうるさいからな…。セルトもするんだろ?」

「まぁ、しないとね。どうせ、食堂閉まっちゃうし。ヒルエは?」

「俺は帰らない。まぁ、リトルの保護者にお世話になるがな」

ヒルエは家に帰りたくないと言ったからフィルさんに頼んで、一緒に帰る。部屋はたくさんあるし。

「じゃあ、当分会えなくなるね」

「寂しいな」

「どうせ夏休みなんてすぐだ。1週間前にはだいたいのやつが寮に戻ってくるらしいしな」

「俺も1週間前には帰るよ。セルトは?」

「僕はパーティーに出席しないといけないから2日前かな」

流石はセルト。前に聞いたがセルトは由緒正しい魔法使いの一族だそうだ。

「ギルはどうするんだろう」

「あいつも帰省するだろうよ。噂じゃあいつの一族は代々闇属性らしいしな。学園ここよりは居心地がいいだろうよ」

「なら安心だな。」



「静粛に」

うるさかって講堂にイケボが響いた。視線を向けると舞台の上に会長がいた。いつ見てもイケメンだ。滅べ。

「「キャああああああああ」」

「静粛になるわけねえよな」

「ごもっとも」

ヒルエは耳を塞ぎ、セルトは呆れていた。

「うるせえ。燃やすぞ」

会長は炎を左腕に灯す。それと同時に講堂は静かになった。

「これより終業式を始める。全員起立」

全員が一斉に立つ。

「敬意を示せ」

生徒は自分の右手に炎を灯し、心臓に当てる。これは昔からの伝統的な敬意の示し方だ。

「理事長からの挨拶を頂戴する」

会長がそう言うと、舞台の袖からいつものように派手な着物を着た理事長が出てきた。

「あい。ご機嫌麗しゅう。今日という日を皆、待ち望んでいたことでありんしょう。明日からは夏休み、存分に楽しんでくんなまし。けども、コウリア学園の生徒としての振る舞いは忘れず、恥ずることのない行いをどうかお願いいたしんす。以上でありんす」


「礼。直れ」

生徒は炎を灯すのをやめる。そんな感じで終業式は問題なく進んで行く。

「これで終業式をを閉会する。礼」

『終わり…終わり…なんて素敵なヒビキなんだろうねぇ。胸が踊る』


いきなり声が聞こえた。おじいさんの声。陽気であるが毒々しく、気楽であるが重々しい声だ。

「出できんす」

理事長がそう言うと先生達が生徒を守るようにまばらに立つ。生徒会・風紀委員も同じように立っている。

『私はここには居ないよー?』


「思念伝達でありんすか。姑息な」

『なんとでも、私は予言を伝えにきただけですからねぇ』

「予言なんて聞きたくないでありんす。予言者の言うことほど信じられないものはないでありんす」

『クク、違いない…違いない…。しかし、君に対しての予言じゃないからねぇ。君が信じるか信じないかは関係ないんですよ』

「ほぉ、誰に対する予言でありんしょう」

『…封印は解かれる!失われしトワイライトのメモリーは蘇るであろう!』

「トワイ…ライト…」

《ドクン》

心臓が大きくはねた。息苦しく、目の前が霞む。

「リトル!大丈夫!?」

「おい、しっかりしろ!」

霞む視界の中、宙に浮かぶ男の姿が見えた。初老を迎えた紳士だった。

『…もうしばしの辛抱ですよ』

そう言って笑った男と目があった。そこで俺の意識は闇に落ちた。
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