幼なじみプレイ

夏目とろ

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【第3話】幼なじみプレイ

05

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 壱人の隣ならどんな美人が並んだって違和感はない。それこそ前カノの結木さんのような。彼女は学校一とも言える美少女で、壱人と並ぶととても絵になる。
 普段のかっこ、つまりは女装なしの俺だと間違いなく単なる幼なじみに見えているはずで、だとしたら女装した俺が立つとどう見られるのかが何故だか不意に気になった。

 そう言えば昔からコスプレをしているが、自分から男だとばらさなければバレたことはない。それだけ俺は女顔をしているんだろうが壱人と歩いている時は振り返るみんなが壱人に見惚れているし、そのお陰で目立つことはない。けど、それってどーよ。
 まだ壱人の彼女は、ごく普通の女の子だと噂が立つ方がマシな気がした。色ぼけした壱人は俺のことを世界一かわいいとか本気で馬鹿なことを思ってそうだし、俺のささやかな悩みにも気付いてないだろう。

「……彼女、か」

 で、普段の俺は壱人の単なる幼なじみ。まあ、学校とか外でいちゃこらするわけにもいかないし、壱人とはクラスも違う。
 最近の壱人は学校で彼女と一緒にいないことで、クラスでも目立つクラスメートとよくつるむようになったみたいだ。俺はと言えば廊下で壱人と擦れ違ったら挨拶くらいは交わすようにはなったが家では四六時中一緒にいるわけで、学校で話す話題がない。

 結果、今までと同じ。壱人との学校での関係は変わらなかった。ただ、壱人は普段から柔らかな表情かおをするようになり、擦れ違うたびに極上の笑顔を向けられる。
 そのたび胸きゅんでドキドキするんだけど、俺らの関係がバレはしないか気が気じゃない。その笑顔のお陰で壱人は前以上にモテるようになったみたいだし、モテる彼氏を持つといろんな心配事ばかり募るみたいだ。

「これって……」

 嫉妬か?
 ……誰に?

 壱人のことを好きな女の子か、それとも壱人の隣を歩く例の可愛い彼女に?
 つか。それ、俺だし!

 顔面から熱めのシャワーを浴びて髪を洗い、壱人のにおいのシャンプーに少しだけ欲情してる気もするが、気にしないことにしてシャワーの詮を閉めた。
 いいのかな俺、壱人の隣にいても。女装した自分に嫉妬してるなんて馬鹿げてると自覚しつつ、壱人が待つ部屋へと向かう。

「壱人……、って。おい、こら」

 部屋へ戻ると壱人はベッドに仰向き、大いびきをかいて爆睡していた。
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