憑かれ男子

夏目とろ

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憑かれ男子

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 さ迷える霊魂がこうやって俺の後ろを憑いて来るのは、たいていは何かを俺に伝えようとしている時だ。もしかしたらこの元イケメンは、この世に何らかの未練を残しているのかも知れない。

「なあ、お前、うちの学生なの?」

 トイレで一人になったのを見計らい、俺は元イケメンに聞いてみた。

『…………』

 言葉にさえしなかったけど、元イケメンは小さくこくりと頷いた。

「何か俺に言いたいことでもあんの?」

 続けてそう聞いてみると今度もこくりと一回、首を縦に振る。もしかして元イケメンは喋れないんだろうか。一般的な霊は俺の心に直接話し掛けて来るが、元イケメンはそれもない。

「どうやって死んだか聞いていい?」
 こくり。
「殺された?」
 ぶんぶん。
「じゃあ、やっぱ事故なんだ」
 こくこく。

 何度かそんなやり取りを繰り返すと、彼が事故死したことがわかった。自分が事故死したことを自覚していると言うことは……、

「もしかして、この世にやり残したことがある?」

 そう聞いてみると元イケメンは大きく一回、頷いた。

 やっぱそうかと思いつつ、俺は元イケメンのことを考えてみる。そう言えば元イケメンは最初からあの教室にいたわけじゃなくて、途中から俺の前に姿を現した。

「もしかして俺が幽霊と交信出来るから俺の前に現れた?」

 これもこくりと一回、頷いて見せる。

「じゃあ、事故現場はあの教室じゃないんだ?」
 こくり。(うん)
「あのさ、よかったらそこに案内してくれる?」
 こくこく。(いいよ)

 そうして今度は、元イケメンの後を俺が着いて行くことになったのだった。

 俺だけにしか見えない、華奢に見えて案外がっしりした背中を追う。この大学に入学して一週間が経ったけど、元イケメンが俺の前に初めて姿を現したのは三日前のことだ。今思い返すと、あの教室以外で姿を現すことはなかったけど、俺はいつも身近に彼の気配を感じていた。

 幾分か涼しくなった風が頬を撫でる。一般的に幽霊が現れるのは夜とされているが、実は昼間にも普通に見えていたりする。
 人波に紛れて交差点を堂々と歩いていたり、ベンチに座って辺りをぼんやり眺めていたり。普通の人にはそれが見えないだけで、俺にはゾンビ映画に出て来るゾンビのように見えている。たまに生きてる人と間違えて、ぶつかってしまったそれに謝ったりもして。
 彼の後を追うこと十数分、

「ここ?」
 こっくり。(そう)

 元イケメンの事故現場は、カウンセリングルームに続く階段下の踊り場だった。
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