366日の奇跡

夏目とろ

文字の大きさ
52 / 103
[第5章]ラブレター

05

しおりを挟む
 基本的に生徒会室の自分のデスクの上には何を置いてもいいのだが。

「ふふふーん」

 リコール前になるが、俺もお気に入りのテディベアや家族写真が入ったフォトフレームを置いていたから人のことは言えないんだけどさ。さっきからよくわからない、恐らくはオリジナルだろう鼻唄を歌いながら原稿に向かっている日向は、どうやら昨日初めて行ったコンビニにはまってしまったらしい。

「出来た! 今度こそ完璧!」

 何度も書いては消してを繰り返してくしゃくしゃになったスピーチ原稿を目の前に広げ、日向は満足そうに笑った。

「羽柴、どうよ?」
「……うん、いいんじゃないか。日向らしいよ」
「やった! マジで?」

 日向の机の上にはコンビニで売っているお菓子が散乱し、7種類のミニフィギュア付きのジュースのペットボトルが何本も並んでいる。昨日までは椿野が淹れてくれる紅茶しか飲まなかった日向を思えば大きな変化だ。うちの生徒会の会議では見られないが、他校では会議中に手元にお茶のペットボトルが置いてあったりするよな? ドラマで見たことがあるけど。
 俺も一人で仕事をしていた時には時間がなくてペットボトルのお茶とコンビニおにぎりには随分お世話になったけど、椿野がいれば絶妙なタイミングで休憩を挟み、紅茶を淹れてくれる。おまけにお茶受けに恐らくは高級洋菓子店のケーキやクッキーも出してくれるから、わざわざコンビニで買って来る必要がないんだよな。鷹司の机の上は綺麗に片付いていて、仕事に必要なもの以外は何もない。椿野の机の上には一輪挿しが置いてあって、毎日違う色の薔薇が咲いている。

 不知火の机の上には薄汚れたイルカのキーホルダーが置いてあり、佐倉の机の上は日向の机以上にジャングル状態だ。大きなフォトフレームには恐らく昔の仲間だろう写真が入れてあって、皆、見た目は恐いが気のいい仲間だということがわかる。日下部の机の上にもフォトフレームがあるが、写真は全部自撮りだったりするし。他にも美容情報誌やファッション雑誌が置いてあり、まるで美容室の待合室状態だ。

「…………」

 改めて、俺の机の上を見遣る。一人だった時のようにお気に入りのテディベアと家族のフォトフレームを飾ってみようかな、とかそんなことを思ったりなんかして。そうすると以前の俺だと無視されただろうけど、今ならいろいろとツッコミが入るだけで済みそうだ。料理好きなのはもう皆に知られたし、家事やテディベア作りも趣味なんだってカミングアウトしてもいいんだけど。

「羽柴、どったの?」
「あ、いや。なんでもない」

 日向達がうちに上がった時、荷物が片付いてなかったから幸いテディベアには気付かれなかった。寝室の枕元のボードと書斎の机の上には、しっかり置いてあったけどな。たまたまテディベアは一つの段ボールに全部入れてあって、その箱はクローゼットに仕舞ったままだったのだ。
 テディベア作りが俺の趣味だということは、槙村以外には中等部までの友達と去年のルームメイトぐらいしか知らない。生徒会役員の皆は仕事仲間であって本当の意味の友達とはまた違うから、どこまで気を許していいのか悩んでしまう。生徒会役員になってからこちら、俺はメンバーとの間に壁を作って来た。仕事以上の馴れ合いもあれだよなあって。
 けど最近その壁が崩れつつあって、どこまで踏み込んでいいのかぼっちだった俺にはその加減がわからない。そんな俺をよそに、

「羽柴、なんか仕事ない? 俺にも出来るやつ」
「あ、ああ。この書類、時間がかかってもいいから纏めてくれるか?」
「オッケー。てか、羽柴。コンビニって楽しいね。俺、すっかり気に入っちゃた」

 全商品制覇するんだと意気込む日向に思わず吹き出してしまい、

「……こほん」

 鷹司の冷たい視線を感じて、俺は仕事に向き直った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

坂木兄弟が家にやってきました。

風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。 ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

処理中です...