366日の奇跡

夏目とろ

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[第7章]心に花を咲かせましょう

04

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 めっきり暖かくなったからか5月に入ってからこちら、連日雨の日が続いている。今日も今日とて雨が降っている。これが春の長雨というものなのだろうか。奄美、沖縄地方は早くも梅雨入りしたらしい。

「ねえねえ、みんな! 見て見て!」

 どうやら皆でやったテスト勉強が攻を奏したらしく、今回の進級テストで日向は全ての教科で赤点を免れたらしかった。

「日向すげえな! 英語なんか54点もあるじゃんか!」
「えへへー、皆のお蔭だよー」
「214人中、101番かあ。総合で平均点以上取ったってことだよね。順位も最後から数えた方が早かったし、全教科赤点だったのにね」
「日向すごい。剣士朗(日下部)より上だ」
「ちょ、ようってば!」
「ふふっ。このまま行くと、来年は日向先輩もS組の一員になってるかも知れませんね」
「いや、それはねえな」
「に、兄さん……」
「まあまあ、今回は全員順位が上がったんだから」

 椿野はそう言ったが、実は俺だけは一つ順位を落としてたりするんだよな。高等部に入ってからはずっと学年首位をキープしてたんだけど、今回の進級テストで俺は鷹司に首位を明け渡してしまった。

 実は俺が学年首位だったのは去年一年間だけで、初等部と中等部の時は万年二位だったりする。いつだったか、鷹司と俺が総合で満点を取って同点首位だったこともあるが、いくら勉強しても鷹司にだけはどうしても勝てなかったんだよな。
 去年の鷹司は俺から見ても頻繁に外泊したりしてたから、おそらくは遊びほうけていたせいで少しだけ成績が落ちてたってとこかな。と言っても、俺に次いで二位だったけど。

 もしこのテストの範囲が二年生になって習った分だったら、鷹司達がボイコットしていた時の生徒会の仕事の忙しさを言い訳に出来るんだけど。生憎去年習った全てが範囲のテストだっただけに、悔しいけどぐうの音も出ないってとこだ。
 しかも悔しいって気持ちより本来の鷹司が戻ったようで、嬉しいって気持ちの方が大きかったり。鷹司とは勉強に関してはライバルだったかも知れないが、実際はA組の俺とS組の鷹司には接点もなかった。

 実は、鷹司を書記に任命した時に初めて話した。多分、鷹司は『羽柴』って苗字だけは知ってたかも知れないが、その時に初めて俺が会長だって認識したはずだ。
 俺は正直鷹司のカリスマ性に憧れていて、鷹司は俺にとって憧れであり、崇拝者とまではいかないが雲の上の存在だった。その手の届かない存在が急に目の前に来るもんだから、生徒会役員が初めて集まった日は軽くパニクっていたんだよな。

 俺はもとから表情が乏しいらしいから、無表情でぶっきらぼうなやつに見られたに違いない。俺的にはいっぱいいっぱいだっただけだったわけだが、その初日に鷹司に『帰る』と言われたのは記憶に新しい。賑やかな皆を見ながら物思いにふけっていたら、不意に鷹司と目が合った。

「……っっ」

 その鷹司が珍しく照れ臭そうに目を反らすもんだから、手の平で熱を計られた時に真正面から見た鷹司を思い出したりなんかして。
 それにしても。皆が戻って来てから俺ヘンだ。賑やかなのに慣れていないせいか、皆が喋ってる時はあまり喋れなかったりするし。

「ねえ、羽柴っち。また勉強教えてね! 料理も」
「あっ、ああ」

 日向のその一言に我に返り、俺は皆の雑談の輪に加わったのだった。
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