19 / 181
18話 駄々洩れの本音
しおりを挟む
私はバルドフから少し離れたある場所にやってきていた。
そこがディックと約束した場所だからだ。あれが来るまでの間、服装の最終チェックをしておく。あと、バケットの死守もしなくては。
メイライト曰く、私の年齢だと白シャツを軸に着こなした方がいいとの事。ミモレ丈のフレアスカートを合わせて、ハットにサンダルをアクセント……にしているらしい。
全部メイライトの独断だから似合ってる自信ないのよね。それと、今まで隠していた尻尾を出すようアドバイスされたっけか。
「なんでこれ出せって言ったんだろ」
普段邪魔だから仕舞ってるんだけど、何か意味あるのかな。あれこれ考えてしまう。
というかあいつ遅いわね……バルドフから離れてるって言っても、普通に歩いて来れる場所よ。休日なんかは家族連れや、その……恋人同士が遊びに来るような場所なんだから。
無茶な要求してないんだから、早く来なさいよ。
「シラヌイ?」
「む、来たわね」
一時間も遅刻して、マザコンがようやくやってきた。刀を持っていない以外は、普段通りの服装だ。……こっちは準備してきたんだからあんたもしてこいや。
「遅い! こっちがどんだけ待ったと思ってんのよ、男なら急いで来なさい!」
「あ、ああ。ごめん」
「何よ、文句あるなら言いなさいよ」
「ローブ姿以外のシラヌイが新鮮で、見とれてた。似合っているよ」
ぐぬぬ……だからこいつは気恥ずかしくなる事を平気で抜かしよる……。
「お世辞はいいからさっさと行く! 男ならとっととエスコートしなさい!」
「分かったよ」
だからさぁ……なんでこうきつい事言ってんのにへらへら笑っていられるのよ。そんな余裕ぶられたら私がアホみたいじゃないのよ。
やっぱこいつ、嫌い。
「……待ち合わせ、三十分前なんだけどな」
「るっさい!」
◇◇◇
<ディック視点>
僕が連れてこられたのは、バルドフ御苑と呼ばれる場所だ。
魔王管轄の国民公園で、種々様々な樹木を植え、各地方の庭園が造られている。見所は公園中央のソウルポンドと植物園だそうだ。
樹木は魔法で常に花が見ごろに調整されているそうで、色とりどりの木々が迎えてくれる。心が落ち着いて、時間が急に遅くなったような気がするな。
「魔王様の趣味が園芸なのよ。趣味が興じすぎて大規模になったから国民公園にしたって聞いた事がある」
「趣味で出来る規模じゃないだろこれ」
意外と趣味人なんだな魔王って。
一見ふざけっぱなしのピエロに思えるけど、部下想いでもあるし、民に対しても圧政を強いるどころか平和その物。言動とは裏腹にまともな奴だ。
「御苑西側のバラ園に行きましょ。確か今、ムーンローズの展示やってるのよ」
「ムーンローズ、珍しい青い薔薇だったか。薔薇好きなんだ」
「別に好きじゃないわよ。あんなトゲトゲの花誰が好むの?」
文句を言っているけど、気分は悪くならない。今日のシラヌイはとてもとっつきやすい。
なぜなら、尻尾で全てがばればれだから。
言葉とは裏腹に、彼女の尻尾は犬のようにブンブン揺れている。あの様子だと、花の中でも薔薇が一番好きなんだろう。
待ち合わせ場所でも、僕が来るなり尻尾を大きく振っていた。一時間も前から楽しみにしてくれていたんだな。
……少なくとも、好意は持ってくれているんだよな。でもそれが恋愛感情なのか、それとも親愛の情なのか。そこまでは分からない。
聞いてみたいけど、答えが恐くて言い出せない。胸がもやついて、喉の奥が苦しくなるな。
「なぁによ? なんか文句あんの?」
「いや、可愛いなと思ってただけだよ」
「ふぁっ?」
今度は尻尾がピンと立った。凄く照れているみたいだ。普段がツンケンしているせいか、尻尾で内面が分かると凄く可愛いな。
……これ言ったら焼き殺されそうだし黙っておこう。
「ふざけた事ぬかしてんじゃないわよ、次同じ事言ったら骨まで焼き払ってやるからね」
「気を付けるよ」
本当に殺されるところだった。危ない危ない……。
そう言えば気になっていたけど、シラヌイが大事そうに持っているバケットはなんだろう。大きい物だし、重そうだな。
「それ持とうか?」
「ダメ!」
また尻尾を立てながら、シラヌイは強く拒否してくる。本気で嫌がっているみたいだ。
この様子だと、中身を聞くのもやめた方がいいか。
「これはその、とっておきというか何と言うか……ああもう、黙って付いてきなさい。これは上司命令よ!」
僕の腕を引き、シラヌイはバラ園へ急いだ。
暫くは、彼女の我儘に付き合った方がいいかな。僕としても、悪い気はしないから。
「楽しいな……こういうの」
前日まで凄く緊張していたけど、彼女と居るとそんなのも吹っ飛ぶくらい楽しくなる。シラヌイも同じ気持ちみたいだし、リージョンの言う通り、自然に過ごせばいいんだ。
胸のもやつきは、今の内は忘れていよう。
◇◇◇
<シラヌイ視点>
私が密かに楽しみにしていた、ムーンローズの展示は素晴らしい物だった。
数ある花の中でも、私は薔薇が好きだ。花びらの色が凄く鮮やかで瑞々しくて、香りも艶やかで。まるで生きた宝石みたい。
ムーンローズは最近発見された青い薔薇で、前からずっと見たいと思っていた。サファイアのような透き通った青の薔薇、神秘的だったわね。
……それはいいとして、あのバカどこ行った?
「はぐれてんじゃないわよ、全く……」
確か気とかで相手の位置を探れるらしいから、ほっといても勝手に来るとは思うけど……私を置いてけぼりにしてどこほっつき歩いてんだか。
「シラヌイ、待たせたね」
「あんたが勝手にはぐれたんでしょうが。何してたわけ?」
「売店を見かけてね、これを買いに行ってたんだ。受け取ってくれるか?」
ディックが手に押し付けてきたのは、手のひら大の黒い箱だ。
開けてみると、中には深紅の薔薇が収まっている。これ、プリザーブドフラワーだ。
「赤い薔薇が好きなんじゃないか? 他の薔薇の展示も見ていたけど、赤い薔薇を熱心に見ていたから」
「……あんたねぇ、よくまぁそう細かく見てるもんだわ。何? 私を監視でもしてるわけ?」
「そう言うわけじゃないけど」
「ま、でもいいわよ。折角あんたが買ったんだし、ありがたく貰っといてあげるわ。余計な荷物が増えたけど、突っ返したら空気読めない感じだしさぁ」
こんなの貰っても嬉しくもなんともないけど、無下に扱ったら薔薇が可哀そうだし。あくまでも薔薇が可哀そうなだけで、こいつは何の関係もないし。
……こいつ、意識してこれ用意したわけじゃないわよね? 薔薇って色と本数で花言葉に違いが出るんだけど。おまけにプリザーブドフラワーに加工していた場合、余計な一言も加わるし。
一輪の赤い薔薇の意味、もし知った上でこれ渡してたら……。
「……あんた、薔薇の意味知ってる?」
「? いや、花言葉には疎くて。ただ母さんから、女には赤い薔薇を送る物だって言われた事があったし」
「……まぁそんな事だろうとは思ったわよ」
どうせマザコンの天然か。対して期待してなかったけど。って期待って何よ。自分でも馬鹿な事考えてんなぁ私。
「けど、シラヌイにそれを渡したいと思ったのは僕の本音だ。それだけは分かってほしい」
「だぁから余計な一言加えんな!」
蹴っ飛ばすよ! 蹴っ飛ばした後に言うのもあれだけど!
人の心読んだみたいに的確な言葉返して! なんか見透かされてるような気がしてむかつくんですけど!
……これのお返しがこんなのだと思うと、気分も滅入ってくるなぁ。
『いい、シラヌイちゃん。これを出すタイミングはきちんと考えるのよ。御苑の植物園を回った後、さり気なく広場に誘って出しなさい。ムード作ってからの方が効果てきめんよ!』
メイライトはそう言っていたけど、本当なのかなぁ……。
「ほれ次。植物園行くよ」
御苑内には温室がある。魔王様が適当に育てた各地の樹木や植物を展示している場所だ。
雰囲気出すために鎧や剣も置かれていて、これがまたいい味出している。割と好きだな、こういう場所。
ディックはどうだろう。さっきから無言なもんで、ちょっと気になる。
「……どしたの?」
ディックはやけに険しい顔をしていた。しきりに辺りを見渡していて、何かを警戒しているようだった。
「なんかあった?」
「いや、なんでもない。多分気のせいだよ」
「……ふーん」
まぁ何かあったとしても私が居るし、気にする必要はないかな。
それに問題はこの後だ。温室から出たら、バケットを突き出してやる。ただそれだけの事なのに、妙に緊張してくる。
悟られないようにしよう。折角頑張ったんだから、こいつを驚かせてみたいし。
やばい、反応が気になりすぎて緊張してきた。お願いばれないで。
「一度休憩しようか。広場も近いし」
「そ、そーね」
なんで心の声バレてんだろう。空気読め過ぎて逆に恐いんだけど。
好都合と言えば好都合か。おかげでバケットを出すタイミングも計りやすい。
……大丈夫、何度も練習したし、何度も作り直したし。指を怪我してまで作ったんだから、文句言ったら焼き殺すからね。
広場の場所取ったし、よし、言い出すなら今だ……!
「あ、あのっ! これ!」
勇気を出してバケットを突き出す。と同時に……温室が爆発した。
爆風でディックもろともひっくり返ってしまった。おまけに温室から悲鳴が聞こえてくる。
「何、これ。一体何が……!」
温室から無数の触手が生えてきている。他にも種子が弾丸のように飛んできたり、急激に成長して大木に育ったり、異常事態が起こっている。
「何よこれ……いや、それより避難させるわよ」
「ああ、急ごう!」
被害を出す前に対処しないと、四天王の名折れ。早急に避難を進めていると、
『あーはっはっは! 素晴らしい、素晴らしいぞこの効き目!』
温室から、高笑いが聞こえてきた。
※赤いバラの花言葉は「あなたを愛しています」。一輪のバラの意味は「一目惚れ」、「あなたしかいない」。
ディックの送ったプリザーブドフラワーは、「貴女だけを愛しています」という意味になります。
さらにプリザードフラワーには永遠に、という意味もあるので、一輪のプリザードローズは「永遠に貴女だけを愛しています」になりますね。
そこがディックと約束した場所だからだ。あれが来るまでの間、服装の最終チェックをしておく。あと、バケットの死守もしなくては。
メイライト曰く、私の年齢だと白シャツを軸に着こなした方がいいとの事。ミモレ丈のフレアスカートを合わせて、ハットにサンダルをアクセント……にしているらしい。
全部メイライトの独断だから似合ってる自信ないのよね。それと、今まで隠していた尻尾を出すようアドバイスされたっけか。
「なんでこれ出せって言ったんだろ」
普段邪魔だから仕舞ってるんだけど、何か意味あるのかな。あれこれ考えてしまう。
というかあいつ遅いわね……バルドフから離れてるって言っても、普通に歩いて来れる場所よ。休日なんかは家族連れや、その……恋人同士が遊びに来るような場所なんだから。
無茶な要求してないんだから、早く来なさいよ。
「シラヌイ?」
「む、来たわね」
一時間も遅刻して、マザコンがようやくやってきた。刀を持っていない以外は、普段通りの服装だ。……こっちは準備してきたんだからあんたもしてこいや。
「遅い! こっちがどんだけ待ったと思ってんのよ、男なら急いで来なさい!」
「あ、ああ。ごめん」
「何よ、文句あるなら言いなさいよ」
「ローブ姿以外のシラヌイが新鮮で、見とれてた。似合っているよ」
ぐぬぬ……だからこいつは気恥ずかしくなる事を平気で抜かしよる……。
「お世辞はいいからさっさと行く! 男ならとっととエスコートしなさい!」
「分かったよ」
だからさぁ……なんでこうきつい事言ってんのにへらへら笑っていられるのよ。そんな余裕ぶられたら私がアホみたいじゃないのよ。
やっぱこいつ、嫌い。
「……待ち合わせ、三十分前なんだけどな」
「るっさい!」
◇◇◇
<ディック視点>
僕が連れてこられたのは、バルドフ御苑と呼ばれる場所だ。
魔王管轄の国民公園で、種々様々な樹木を植え、各地方の庭園が造られている。見所は公園中央のソウルポンドと植物園だそうだ。
樹木は魔法で常に花が見ごろに調整されているそうで、色とりどりの木々が迎えてくれる。心が落ち着いて、時間が急に遅くなったような気がするな。
「魔王様の趣味が園芸なのよ。趣味が興じすぎて大規模になったから国民公園にしたって聞いた事がある」
「趣味で出来る規模じゃないだろこれ」
意外と趣味人なんだな魔王って。
一見ふざけっぱなしのピエロに思えるけど、部下想いでもあるし、民に対しても圧政を強いるどころか平和その物。言動とは裏腹にまともな奴だ。
「御苑西側のバラ園に行きましょ。確か今、ムーンローズの展示やってるのよ」
「ムーンローズ、珍しい青い薔薇だったか。薔薇好きなんだ」
「別に好きじゃないわよ。あんなトゲトゲの花誰が好むの?」
文句を言っているけど、気分は悪くならない。今日のシラヌイはとてもとっつきやすい。
なぜなら、尻尾で全てがばればれだから。
言葉とは裏腹に、彼女の尻尾は犬のようにブンブン揺れている。あの様子だと、花の中でも薔薇が一番好きなんだろう。
待ち合わせ場所でも、僕が来るなり尻尾を大きく振っていた。一時間も前から楽しみにしてくれていたんだな。
……少なくとも、好意は持ってくれているんだよな。でもそれが恋愛感情なのか、それとも親愛の情なのか。そこまでは分からない。
聞いてみたいけど、答えが恐くて言い出せない。胸がもやついて、喉の奥が苦しくなるな。
「なぁによ? なんか文句あんの?」
「いや、可愛いなと思ってただけだよ」
「ふぁっ?」
今度は尻尾がピンと立った。凄く照れているみたいだ。普段がツンケンしているせいか、尻尾で内面が分かると凄く可愛いな。
……これ言ったら焼き殺されそうだし黙っておこう。
「ふざけた事ぬかしてんじゃないわよ、次同じ事言ったら骨まで焼き払ってやるからね」
「気を付けるよ」
本当に殺されるところだった。危ない危ない……。
そう言えば気になっていたけど、シラヌイが大事そうに持っているバケットはなんだろう。大きい物だし、重そうだな。
「それ持とうか?」
「ダメ!」
また尻尾を立てながら、シラヌイは強く拒否してくる。本気で嫌がっているみたいだ。
この様子だと、中身を聞くのもやめた方がいいか。
「これはその、とっておきというか何と言うか……ああもう、黙って付いてきなさい。これは上司命令よ!」
僕の腕を引き、シラヌイはバラ園へ急いだ。
暫くは、彼女の我儘に付き合った方がいいかな。僕としても、悪い気はしないから。
「楽しいな……こういうの」
前日まで凄く緊張していたけど、彼女と居るとそんなのも吹っ飛ぶくらい楽しくなる。シラヌイも同じ気持ちみたいだし、リージョンの言う通り、自然に過ごせばいいんだ。
胸のもやつきは、今の内は忘れていよう。
◇◇◇
<シラヌイ視点>
私が密かに楽しみにしていた、ムーンローズの展示は素晴らしい物だった。
数ある花の中でも、私は薔薇が好きだ。花びらの色が凄く鮮やかで瑞々しくて、香りも艶やかで。まるで生きた宝石みたい。
ムーンローズは最近発見された青い薔薇で、前からずっと見たいと思っていた。サファイアのような透き通った青の薔薇、神秘的だったわね。
……それはいいとして、あのバカどこ行った?
「はぐれてんじゃないわよ、全く……」
確か気とかで相手の位置を探れるらしいから、ほっといても勝手に来るとは思うけど……私を置いてけぼりにしてどこほっつき歩いてんだか。
「シラヌイ、待たせたね」
「あんたが勝手にはぐれたんでしょうが。何してたわけ?」
「売店を見かけてね、これを買いに行ってたんだ。受け取ってくれるか?」
ディックが手に押し付けてきたのは、手のひら大の黒い箱だ。
開けてみると、中には深紅の薔薇が収まっている。これ、プリザーブドフラワーだ。
「赤い薔薇が好きなんじゃないか? 他の薔薇の展示も見ていたけど、赤い薔薇を熱心に見ていたから」
「……あんたねぇ、よくまぁそう細かく見てるもんだわ。何? 私を監視でもしてるわけ?」
「そう言うわけじゃないけど」
「ま、でもいいわよ。折角あんたが買ったんだし、ありがたく貰っといてあげるわ。余計な荷物が増えたけど、突っ返したら空気読めない感じだしさぁ」
こんなの貰っても嬉しくもなんともないけど、無下に扱ったら薔薇が可哀そうだし。あくまでも薔薇が可哀そうなだけで、こいつは何の関係もないし。
……こいつ、意識してこれ用意したわけじゃないわよね? 薔薇って色と本数で花言葉に違いが出るんだけど。おまけにプリザーブドフラワーに加工していた場合、余計な一言も加わるし。
一輪の赤い薔薇の意味、もし知った上でこれ渡してたら……。
「……あんた、薔薇の意味知ってる?」
「? いや、花言葉には疎くて。ただ母さんから、女には赤い薔薇を送る物だって言われた事があったし」
「……まぁそんな事だろうとは思ったわよ」
どうせマザコンの天然か。対して期待してなかったけど。って期待って何よ。自分でも馬鹿な事考えてんなぁ私。
「けど、シラヌイにそれを渡したいと思ったのは僕の本音だ。それだけは分かってほしい」
「だぁから余計な一言加えんな!」
蹴っ飛ばすよ! 蹴っ飛ばした後に言うのもあれだけど!
人の心読んだみたいに的確な言葉返して! なんか見透かされてるような気がしてむかつくんですけど!
……これのお返しがこんなのだと思うと、気分も滅入ってくるなぁ。
『いい、シラヌイちゃん。これを出すタイミングはきちんと考えるのよ。御苑の植物園を回った後、さり気なく広場に誘って出しなさい。ムード作ってからの方が効果てきめんよ!』
メイライトはそう言っていたけど、本当なのかなぁ……。
「ほれ次。植物園行くよ」
御苑内には温室がある。魔王様が適当に育てた各地の樹木や植物を展示している場所だ。
雰囲気出すために鎧や剣も置かれていて、これがまたいい味出している。割と好きだな、こういう場所。
ディックはどうだろう。さっきから無言なもんで、ちょっと気になる。
「……どしたの?」
ディックはやけに険しい顔をしていた。しきりに辺りを見渡していて、何かを警戒しているようだった。
「なんかあった?」
「いや、なんでもない。多分気のせいだよ」
「……ふーん」
まぁ何かあったとしても私が居るし、気にする必要はないかな。
それに問題はこの後だ。温室から出たら、バケットを突き出してやる。ただそれだけの事なのに、妙に緊張してくる。
悟られないようにしよう。折角頑張ったんだから、こいつを驚かせてみたいし。
やばい、反応が気になりすぎて緊張してきた。お願いばれないで。
「一度休憩しようか。広場も近いし」
「そ、そーね」
なんで心の声バレてんだろう。空気読め過ぎて逆に恐いんだけど。
好都合と言えば好都合か。おかげでバケットを出すタイミングも計りやすい。
……大丈夫、何度も練習したし、何度も作り直したし。指を怪我してまで作ったんだから、文句言ったら焼き殺すからね。
広場の場所取ったし、よし、言い出すなら今だ……!
「あ、あのっ! これ!」
勇気を出してバケットを突き出す。と同時に……温室が爆発した。
爆風でディックもろともひっくり返ってしまった。おまけに温室から悲鳴が聞こえてくる。
「何、これ。一体何が……!」
温室から無数の触手が生えてきている。他にも種子が弾丸のように飛んできたり、急激に成長して大木に育ったり、異常事態が起こっている。
「何よこれ……いや、それより避難させるわよ」
「ああ、急ごう!」
被害を出す前に対処しないと、四天王の名折れ。早急に避難を進めていると、
『あーはっはっは! 素晴らしい、素晴らしいぞこの効き目!』
温室から、高笑いが聞こえてきた。
※赤いバラの花言葉は「あなたを愛しています」。一輪のバラの意味は「一目惚れ」、「あなたしかいない」。
ディックの送ったプリザーブドフラワーは、「貴女だけを愛しています」という意味になります。
さらにプリザードフラワーには永遠に、という意味もあるので、一輪のプリザードローズは「永遠に貴女だけを愛しています」になりますね。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる