ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

文字の大きさ
50 / 181

49話 いざ行け、後ろを振り向くな。

しおりを挟む
「ここ……どこ……?」

 ポルカ、どこにいるのかわからないの。
 お兄ちゃんとお姉ちゃんにだっこしてもらってたら、きゅうにまっくらになっちゃって、ひとりぼっちになっちゃった……。
 こわいな……さみしいな……お父さん、お母さん、どこにいるの? ポルカを、助けて。

『ポルカ!』
「! お父さん?」
『ここよ、ここよポルカ!』
「お母さん!? どこ、どこにいるの!?」

 だいすきなお父さんとお母さんの声がする。そしたら、お空からポルカのところに来てくれた。
 お父さんに、お母さん! ポルカのいちばんだいじな人たちだ!

「お父さん、お母さん!」
『どうして俺達を見捨てたんだ?』

 きゅうに、お父さんがポルカをぶってきた。
 とってもいたい。そしたらお母さんも、ポルカを蹴ってきちゃった。

『あなたのせいで私達はとても苦しい思いをしているのよ。あなたが勝手に逃げたせいで、私達がどれだけ痛い想いをしたと思ってるの?』
『なのにお前は一人で随分と楽しい想いをして……俺達が苦しんでいる間にぬけぬけと過ごしやがって!』
『恥を知りなさい!』
「お母さん? ……お父、さん?」

 どうしてそんなひどいことをするの? ポルカ、いけないことしちゃったの?

『お前さえ、お前さえ居なければ!』
『貴方なんか生まれてこなければよかったのに!』

 どうして? どうしてそんなことをいうの? ポルカがいたら、めいわくなの?
 いや、いや! ちがうよ、お父さんとお母さんはそんなこと言わない……ぜったい、いわないもん……!

『死ね! 死んでしまえ!』
『あなたなんか、さっさと消えちゃえばいいのよ!』
「やだ……いやだ……やめて! お父さん、お母さん!」

 ポルカ、いないほうがよかったの……うまれてこなければよかったの?
 ……やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

  ◇◇◇
<フェイス視点>

 順調に心が壊れていっているな。
 俺は、ゲートをくぐりながらクソガキの様子を見ていた。
 自分が大事にしている奴から存在を否定されるのはどうだ? これほど心が壊れる衝撃はないだろう。
 クソガキが絶望に染まれば染まるほど、ゲートは大きく、俺の力も強くなる。虚無こそエンディミオンの力だからな。
 さてと、もうじき到着か。魔王軍に新しいお土産でもくれてやるか。

  ◇◇◇
<ディック視点>

「ソユーズ、足場を作ってくれ!」
「……舞い踊れ、我が僕達っ……!」

 ソユーズの力で金属の塊が作られ、宙に浮かんだ。
 僕は四天王達を引き連れて金属の上を走り、ポルカの下へ向かっていた。
 眼下では魔王軍兵士達が避難誘導を行っている。まだ逃げ遅れた市民が大勢いる、彼らの邪魔をしないよう、空路を選んだんだ。

「四天王様達、それに、ディックか!」
「頑張ってください! 魔王様の念話で事情は分かっています!」
「どうか勇者フェイスを……絶対に倒してください!」

 兵士達から後押しを受け、僕達は走り続ける。彼らの想いを受けた以上、負けられない。

「すまんディック、あの塔付近の次元が歪んでいてな、俺の力でねじ込むと亜空間に飲み込まれる危険があるんだ」
「それなら仕方ないさ、リージョンは頼りになる、僕の背中を守ってくれ」

 ポルカの悲鳴が聞こえた気がした。同時に塔から無数の兵士達が飛び出してくる。
 ちっ、邪魔だ!

「迎撃準備! 僕に続いてくれ!」

 先陣を切って、兵士達を切り刻む。シラヌイが炎で焼き払い、リージョンがゲートで体を引きちぎり、メイライトが時止めで行動を封じ込め、ソユーズが光線で粉砕する。次々に襲ってくる敵を、四天王の力を借りて跳ね除けた。
 それに魔王のバックアップもある。兵たちを押さえつけ、僕達にかかる負担を抑えてくれていた。

「ディックちゃん、上、上!」
「えっ、なんだあれは」

 塔から新しいタイプの敵が現れた。一言でいえば、空飛ぶ船だろうか。まるで軍艦のように巨大な船が、塔から次々に出現していた。
 その船から砲撃が降ってくる。リージョンとメイライトが迎撃しているけど、濃密な弾幕でどうしても足が止まってしまう。

「シラヌイ、ソユーズ! 船を壊すよ!」

 飛ぶ斬撃で船を打ち落とし、シラヌイとソユーズがそれぞれ炎と光線で粉砕する。だけど船もまた、無限に現れていた。
 くそ、倒せない相手ではないけど、いちいち相手にしていたらきりがない!

『お困りのようだな、青年!』

 突然、自信満々な声が聞こえた。
 この大胆不敵な声、聞いた事がある。まさか、まさかあいつが!?

『魔王様から援軍要請を受けたのでな、予定を繰り上げて出港させてもらったぞ!』

 振り返ると、魔王城の後方から、空飛ぶ戦艦が現れていた。
 ドクロマークを船首に着け、スターアニスを描いた帆を掲げる海賊船だ。青い炎を船底に燃やしてやってきた海賊船から、聞き覚えのある高笑いが聞こえてくる。

『宇宙一の大海賊、イン・ドレカー! 友の危機にただいま参上!』
「やっぱり……ドレカーだ!」

 最高の援軍が来てくれた! サプライズ好きすぎるだろあいつ!

『君にはダイダラボッチを倒してもらった恩がある、それを返さぬは男として筋が通らない。だろうクミン』
『……その通りです、旦那様』
『というわけだ青年、シラヌイ! 君達は突き進め、大切な人が囚われているのだろう? 必ず助けてみせろ! それこそが宇宙一の男と女の条件なのだから!』
「ああ、わかった!」
「助かります、ドレカー先輩!」

『空の敵は私に任せろ! この海賊船、ハバネロに勝てる船などない! ガラン! 船のコントロールを私に渡せ! 今夜だけは四天王、「海賊のドレカー」として復帰させてもらおうではないか!』
『あいあいさー!』
『いつもの熱いメドレー、頼むんだなキャプテン!』
『はっはっは! 任せろ!』

 海賊船ハバネロの炎が激しくなった。船全体が燃えて、船首に強固なシールドが展開される。

『Lets, party time! 激しいロックを奏でてやろう、俺のシャウトに聞き惚れろぉ!』
『Yahooooooooo!!!!』

 ドレカーが歌い始めた直後、ハバネロが特攻を始めた。
 音速で突進し、船に体当たりをかます。シールドを槍にして、巨大な船を真っ二つに粉砕してしまった。
 って砲撃戦じゃないのかよ!? 体当たりで船壊す船長って初めて見たぞ。

「ドレカー先輩お得意の特攻ね、撃ち合いをするより弾が節約できる最高の戦法、だそうよ」
「ただの無謀な突撃だろあれ。けど倒してくれるならどうでもいいか!」

 つっこんだら負けだ、上は任せて僕達は前に行こう!
 ドレカーのハートフルな歌をバックに、塔まで到着する。そしたらハヌマーンが光り出し、僕の手足に装着された。

『止まれ、主達』
「どうした?」
『……これより先には、どうやら主とシラヌイしか向かえぬようだ』
「なんだって?」
『エンディミオンの力が強く働いている。我の加護を受けられる者でなければ、負荷に耐え切れず消滅する危険がある』
「そうか……皆」
「分かっている。というより、お前達二人が行くのがふさわしいだろう」
「……ポルカはディックとシラヌイを求めている。我々はここでバックアップしよう」
「退路の確保は任せて頂戴! さ、早く行ってあげて!」

 これだけ心強いバックアップはないな。僕はシラヌイと手を握り合い、塔へ向いた。

「フェイス……ポルカを泣かせた罪は、万死に値するわ!」
「その鼻持ちならない顔面に、重い一撃をくれてやる!」
『行こう!』

 僕とシラヌイは、ポルカの待つ塔へと飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~

チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。 「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。 「……お前の声だけが、うるさくない」 心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。 ----- 感想送っていただいている皆様へ たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。 成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...