ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

文字の大きさ
69 / 181

68話 愛ゆえに、シラヌイは力を求める。

しおりを挟む
「……ふむ、ミストルティンとケーリュネイオンを使用した、武具の強化か」

 私はソユーズに、ある相談を持ち掛けていた。
 この世界に存在している、神と鬼の魔石。ミストルティンとケーリュネイオン。その扱いについてを。
 ミストルティンは神の魔石と呼ばれている、使用者の力を増幅させる作用を持った魔石だ。けどその強化に体が耐え切れず、使えば自身を滅ぼしてしまう謂れがある。
 ケーリュネイオンは鬼の魔石と呼ばれる、使用者の命と引き換えに力を発揮する魔石だ。けど吸収する魔力量が多すぎるせいで、使えば即座にミイラとなってしまう物だ。
 ……改めて見ると、どっちもやばい代物よね。

「……その二つは非常に危険な魔石だ、そうまでして武具を強化しようとする理由は?」
「ディックのためよ」

 温泉であいつと話して、煌力がディックを滅ぼすための物じゃないって分かった。それはいいけど、だったら私は何もしなくていいの?
 答えはNO。あいつが先に進むんなら、私だって一緒に行かなくちゃ。
 今私とディックの間には、大きな差が開いている。となればコツコツ積み重ねていくのは遅すぎる。
 なら近道に頼るっきゃない。となると、メイライトが教えてくれた二つの魔石を使って無理やり強化するのが一番よ。

「だから、金属を操るあんたに意見を貰いたいの。魔石の扱いも熟知してんでしょ」
「……ふむ、気持ちは分かったし、手を貸してやりたいが……あの魔石はとてもじゃないが我でも持て余す。まともに扱えそうなのは、魔王様くらいだろうか。いくらシラヌイにも勧められる物ではない」
「だとしても、私は止まりたくない」
「……言うと思ったよ。ならば手を貸すほかないか、下手に突っぱねれば、一人勝手に無茶をしそうだからな」

 流石、付き合い長いだけあって私の性格を熟知しているわね。もしあんたが断ったら独学でどうにかするつもりだったもの。

「さて……頼られたからには、応えなければな。実を言うと、魔石の併用に関しては、理論だけは完成させていたのだ」
「あら話が早い。なら早速」
「まぁ待て……理論だけと言っただろう? 実用化には不安が残るのだ」
「何よ勿体つけて、言ってごらんなさい」
「……まず、二つの魔石の特性を理解してもらう。魔石は自身の傍に居る生物に反応し、そいつに対し魔力をそれぞれ与えて奪う。理由や原理は不明だがな」
「なんか生きてるみたいよね、聞くだけでも不思議だわ」
「うむ……併用する事で互いのデメリットを解消するのは、理論上可能だ。力の奔流に耐え抜く体があれば、というのが前提になるがな」
「となると、薬で強化して」
「……それは身を亡ぼすだけだ。もっと考えを変えてみろ、自分に力を流すから負荷がかかるのなら、負荷を代替してくれる生物を見つければいい」
「ああ、なるほど。例えば私の傍に、妖精や動物とかを置いといて、そいつに魔石の魔力が流れるルートを作れば」
「……魔石の併用が可能になる。だが机上の空論にすぎん、武具として使うなら、我々より小さな生物にせねばならない。だが、そんな生物が果たして魔石の力に耐えきれるかどうか」

 かなり難しいわね、つーか無理かも。
 アイディアとしてはいいのだけど、アブソーバーになる生物が耐え切れないんじゃなぁ……。

「……一応、道具自体はある。これをシュヴァリエにつけておけ」

 ソユーズが渡してきたのは、羅針盤のような丸型の飾りだ。これをつけておけば、とりあえず私に魔石の力が行かなくなるみたい。
 あとは、力を代替えしてくれる何かを見つければいいのだけど。

「そんな都合のいい生物なんて居るのかしら」
「……知らんな。こればかりは流石に、自力で探すしかない」
「だよねぇ……けどありがとう、糸口がつかめただけでもでかいわ」
「……また何かあれば頼ってくれ」

 勿論。他の四天王の事は……多少抜けているけど、物凄く頼りにしているから。
 よし、そうと決まればメイライトに頼んでミストルティンとケーリュネイオンを作ってもらおう。

  ◇◇◇

 って事で、二人の手も借りて、シュヴァリエ・改の完成だ。
 メイライトに作ってもらった魔石をはめ込み、ソユーズが用意したアブソーブシステムを取り付けている。これで魔石の力を利用、出来るはずなんだけど……。

「……これ使ったらどうなっちゃうんだろう」
「さぁ、どうなるのかしらぁ」
「……どうなるのだろうな」

 メイライトもソユーズも、魔石を使った所を見た事ないから首をかしげている。にしてもこの魔石、見ているだけで不思議な気持ちになるわね。
 ミストルティンは目が覚めるような水色をしている。粒子を零しながら輝いていて、神秘的な空気が漂っていた。神の魔石と呼ばれるのも頷けるくらい、綺麗な魔石だ。
 ケーリュネイオンは血のような深い紅色をしている。時折黒いオーラをほとばしらせ、まるで獲物を狙っているように禍々しい空気を携えていた。鬼の魔石の異名は伊達じゃない。

「神と鬼を同居させて大丈夫なのかしら」
「そうねぇ、特に鬼が殺されそう」
「……確かリージョンは、鬼族だったな」

 バツイチリージョンの顔が思い浮かんだ。……駄目かもしれない。

「ともあれ、一回試してみましょ。実験用のホムンクルスを出してあげるわね」

 メイライトの力で、ピクシー大のホムンクルスが現れた。これが戦闘に邪魔にならないサイズらしい。
 アブソーブシステムを起動し、ホムンクルスと同期させる。これで魔石の魔力がホムンクルスに流れるようになったわね。

 そんじゃ、早速試してみましょう。

 訓練場に場所を移して、狙いを定める。とりあえずファイアボールを使ってみればいいわよね。
 って事で使ってみた途端、シュヴァリエが轟音を立てて震え始めた。
 驚く間もなく、まるで爆裂魔法のような、超巨大な火球が飛び出す。的に着弾するなり、壁が吹っ飛び、建物が消滅して、天まで届く黒煙が舞い上がった。
 余波で空気が弾け、一瞬周囲が真空になる。そこへ吸い込まれる空気の圧力がさらなる爆発を起こして、バルドフ全域に激震を走らせた。

「……危ない所だった」
「あ、ありがと、ソユーズ……」

 ソユーズが金属の盾を作ってくれなきゃ死んでたかもしれない……何これ、本当にファイアボール? 私、使う魔法間違えた?
 ……神と鬼が同居したら、破壊神が生まれちゃった……。

「シラヌイちゃん大丈夫?」
「え、ええ……アブソーブシステムはちゃんと機能したみたい。だけど……」

 ホムンクルスは爆散していた。力の奔流に耐え切れなかったみたいね。
 たかがファイアボールが超上級魔法に昇華したんだもの、そんなのを小さなホムンクルスが耐え切れるわけがない。

「……実験なのに、事故報告書じゃ済まないレベルの大惨事になったわね」
「これ、損害額どれくらいかしらぁ……」
「……考えたくないな」

 三人でため息をつく。目の前の事は、とりあえず後で考えよう。
 机上の空論は正しい理論だって事は分かった、アブソーバーさえしっかりすれば、あの暴力的な力を使いこなせるはずなんだけど……。

「もっと強いホムンクルスは作れる?」
「できるけどぉ……サイズアップしちゃうわ。そうなったら戦闘の邪魔になっちゃうわよ」
「……そもそも、強化したところで耐えられるのか? それにこの過剰火力だ、コントロールするにも難儀だろう」
「うーん……」

 あと一歩で完成なのに、悔しいな。……ってかそもそも動物を利用して使う時点で人道的におかしな話よね。
 はぁ……この計画はなかった事にしようかな。

「なんだなんだ!? この被害は!?」
「ってシラヌイ!? 皆も……これはどういうことだ!?」

 騒ぎを聞きつけて、ディックとリージョンが駆け込んできた。
 事情を話すと、二人とも険しい顔になる。

「シュヴァリエを魔石で強化だと? 危険すぎる、どうして勝手に仕出かした」
「今回ばかりは、僕も怒るよ。どうしてこんな事をしたんだ?」
「それは……」

 隠しても意味ないので、素直に話した。ディックの煌力に並ぶような力が欲しいって。
 そしたらディックはため息をついた。

「……家に帰ったら、しっかり話そう。ここで話しきれる事じゃない」
「ごめんなさい……」

 はぁ、大失敗だわ……メイライト、ソユーズ、巻き込んでごめんなさい……。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~

チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。 「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。 「……お前の声だけが、うるさくない」 心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。 ----- 感想送っていただいている皆様へ たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。 成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...