ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

文字の大きさ
158 / 181

157話 フェイスの決意

しおりを挟む
 人間達の妨害をかわしながら、私達は異空間の入口を探していた。
 ディックの推理が正しければ、この街のどこかに入口があるはず。それを見つけ出して、黒幕をぶちのめさなくちゃ。
 リージョンは力を使い、くまなく周囲を探っている。でも、今の所結果は思わしくないみたい。

「どうだいリージョン」
「ぼんやりとだが、異空間の気配はするな。だが肝心の入口がな……多数の気配が混じりすぎて特定できないんだ」
「これだけの乱戦状態じゃ仕方ないか」

 ディックは苦々しそうに顔をゆがめた。私に何かできる事があればいいのだけど……。
 にしても、しっつこい奴らね。どんなに追い払ってもすぐに出てきちゃう。ってか、結構倒しているのにどうして数が減らないの?
 なんだか、無限に敵が湧き続けているような気がする。

「……ん?」

 ちょっと引っかかるところがあって、私は辺りを見渡した。
 仮に、人間達が無限に出てきていると仮定しよう。蟻が巣穴から出てくるように、当然出現ポイントがあるはずよね。

「シルフィ! 人間達がどっから来てるか分かる?」
『なんだその指示は? どこからって、街のいたるところから出てきているが。民家やら、道具屋やら、あちこちから大量にな』
「それって不思議じゃない? だって、この街の規模からして人口はせいぜい数百人が限界でしょ。でも、明らかにそれ以上の人数が入り乱れている。どう考えても変よ」

 ディック達がはっとする。明らかに、街に収容できる人数を超えた人数を見上げ、

「……異空間から人間を送り続けているのなら、リージョンが見つけられないのも説明がつく。入口が多すぎて、一が逆に特定しきれんからな」
「凄いじゃないシラヌイちゃん! それなら、お姉さんにまっかせなさい!」

 メイライトは指を鳴らし、創造の力で多数のホムンクルスを作り出した。
 あちこちを機敏に飛び回り、ホムンクルスが家々を見て回る。そしたら、一見の民家に集まり始めた。

「あそこみたいね、怪しいポイント発見よ!」
「……ならば、制圧あるのみ! 滾れ、我が邪眼!」

 ソユーズが手を翳すなり、民家の中が光で溢れた。同時に悶絶する悲鳴も。

「……フラッシュボムだ、暫くは目が見えまい。今のうちに制圧するぞ」
「ありがとうソユーズ、よし!」

 ディックがゾーンに入って、民家に突入。あっという間に峰打ちで無力化し、民家を抑えちゃった。

「悔しいけど、息ぴったりねあんたら……」
「友だからな」

 ソユーズはどこか得意げだ。でもともかく、ディックの所に行かないとね。

「どうかなリージョン」
「うむ……タンスの中が怪しいな。そこから、次元の切れ目を感じる」

 一見何の変哲もない民家の中で、リージョンが注目したのがタンスだった。
 シルフィとも合流して、見てもらう。そしたらシルフィも渋い顔をして、

『私もリージョンと同意見だ。だが、なんだこの異様な気配は? なにやら、不穏な気配が漂って仕方ないのだが』
「不穏な気配?」
「うむ、何というのかな……凄まじい欲望の気配を感じるのだ。それも、悪意に満ちた欲望の気配をな」
「シルフィがそう感じるほどの気配……何があるっていうのよ」

 私は身震いした。そしたら、ディックが肩を抱いてくれる。

「大丈夫、僕が居る。この先に何が居るかわからないけど、監獄から僕を助けてくれたように、今度は僕が君を守る番だ」
「うっ……こんな所でそんな事言わないでよ」

 あーこら! にやにやすんな四天王ども! こっちだって顔から火が出るくらい恥ずかしいんだから!

「僕達の役目を果たすためにも、必ず成し遂げよう。この先の、黒幕討伐を!」
『応!』

 いつの間にか、ディックが先頭を切っている。あの時と同じね、フェイスがバルドフに襲ってきた時、私達を率いて戦ったあの時に。
 なんというか、ディックも凄く立派なリーダーになったわね。彼が先頭に立ち、声を出す度に、私達は勇気づけられる。なんて言うか、四天王の副官に収めておくにはもったいないわ。
 人間だけど、ディックなら……魔王四天王におさまってもいいような気がする。そんな器の持ち主だもの。
 ディックがタンスを開くなり、中から人間が飛び出してくる。タンスの中にあった、異空間のゲートから。
 襲ってきたそいつらを一蹴するなり、ゲートが消えてしまう。成程、本当に当たりのようね。

「ゲートを閉じても無駄だぞ、空間を操る俺ならばこの程度」

 リージョンが手を翳せば、消えたゲートが蘇る。この先にパンデミックの元凶が居るのね。
 ディックと共にゲートへ入る。さぁ、鬼が出るか蛇が出るか……魔王四天王、出撃よ。

  ◇◇◇
〈アプサラス視点〉

「おいおい、あいつらタンスの中に入っちまったぜ。俺達も行くか?」

 ワイルに守られながら、あたしは屋根を伝って逃げていた。
 この街の人達は、皆あたし達を狙って追い回している。というより、あたしを捕まえようとしているのかな。ワイルよりも、あたしに視線を向けている気がする。
 そんな逃げている中で、ディック達を見つけた。なんで人間領に来てるのかわからないけど、あたし達は助けを求めようとした。
 けど、人が多すぎて、ワイルでもいなしきれなかった。結局近づけないまま、様子を見ていたら……ワイルの言った通り、民家のタンスの中に入って、別の場所へ消えちゃった。

「と言うか俺は行くけどさ。あんなこれ見よがしにゲートが開いているんだ、好奇心が騒いで仕方がない」
「あたしも、一緒に行くよ。だってここから逃げられないんだし、ディックに追いついた方が、多分安全だし」

 街が結界で閉ざされてるから、あたしもワイルも出られない。ワイルは戦えないみたいだから、ディックと四天王さんに合流した方が安全だと思う。

「ま、俺らの身の安全を考えればそれがベストか。よし、そんじゃあいくぜ!」

 ワイルはあたしを抱えると、手首からワイヤーを出して民家に飛んでいった。それでそのままの勢いでタンスに入り、ゲートをくぐる。
 ディックに会えたのは、あたしにとっても良かったよ。だって、フェイスを助けられるかもしれないから。
 絶対、ディックに会わなくちゃ。頑張らないと。

  ◇◇◇
〈フェイス視点〉

 街人をなぎ倒し、アプサラスを追いかけていたら、ディックが暴れている所に鉢合わせた。
 咄嗟に気配を隠したから、気づかれてはいないはずだ。こんなざまぁない姿、あいつには見せられない。

「見せたら、あいつの事だ……俺を助けようとするだろうからな」

 注意しながら様子を見ていると、あいつらは民家に入って出てこなくなった。そしたら間髪入れずに、ワイルに抱えられたアプサラスが民家に飛び込んでいく姿も見えた。
 急いで追いかけると、異空間のゲートが開いたタンスを見つける。成程、黒幕のヤローは異空間に身を隠していたわけだな。

「げほっ……話が早くて、助かるな」

 アプサラスは恐らく、ディックと合流しようとしているんだな。いい判断だぜ、ワイルは戦う力がない、あいつらに保護を求めるのが一番安全だからな。

「……この先に、黒幕がいるってわけなんだな、ディック」

 それに、俺にもいく理由がある。
 もし、あいつらの助けが出来るのなら、俺にもできる事があるのなら、力を貸したい。
 そしてパンデミックを終わらせられるのなら、俺は全力を尽くしたい。
 これまで重ねてきた罪を少しでも償うために、俺は剣を握らなければならないから。

「待ってろディック、俺が助けてやる。アプサラスも待ってろ、俺が救ってやる」

 今度こそ、俺は勇者になる。大事な友達を救うために。
 俺は迷わず、ゲートへ飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

処理中です...