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3部
181話 次世代の育成
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ハローとナルガに見守られながら、リナルドは木刀を振るっていた。
漫然と振ると、ナルガから注意されてしまう。足の位置、木刀の振り方、力の入れ方。あらゆる要素を意識し、木刀を握る。
単純な動作の中に、重要な要素が沢山詰まっている。リナルドはそう思った。かつて魔剣に封じられ、数多の使い手に握られたからか、リナルドの理解は早かった。
「ふむ、中々教え甲斐があるな。型が様になっているではないか」
「だね。それにもう片っぽも、才能があるみたいじゃないか」
そう、二人に師事を受けているのはリナルドだけではない。
なぜかミコも、リナルドと一緒に素振りをしているのだ。
「リナルドがやるなら、ミコもやるっ! のっ! お姉ちゃんっ、だからっ! ミコもリナルドをっ! 守れるようになるのっ! ……でも腕重たいー」
「無駄な力が入りすぎているからだ。力任せに振り回すな」
「だってハロー兄はぶんぶん力いっぱい振ってるもん」
「俺のは参考にするなよ、誰からも教わってない我流の斬り覚えで、太刀筋滅茶苦茶だし」
「それで当時の私と互角にやっていたのが信じられんのだが」
要は才能に任せたごり押しである。
「うー、素振りつまんないよぉ。アリス、ハロー兄、必殺技教えてよー」
「基礎も出来ていない奴が何を言う。リナルドを見ろ、黙々と素振りを続けているだろう」
「まずは、ちゃんと刃物の扱い方を学ばないとな。……剣術は所詮、命を奪う技術に過ぎない。おとぎ話みたいな、恰好いいものではないんだ。自分が扱う技術の意味、重み、そして責任。技を教えるのは、それらを覚えてからだ」
ナルガも頷いた。力を持つ二人だからこそ、自身の教える技術の意味を深く理解している。
力を持つ者には、大いなる責任が伴う。リナルドとミコには、自身の力に溺れないよう、強い心を持ってもらわなければならない。
「分かった、リナルドのお姉ちゃんだもの、ミコは途中で投げ出さないもん」
「いい子だ。その気持ちがあればお前は強くなるぞ。では素振り十回もうワンセット、集中してなかったからやり直しだ」
「うぅ~……分かりましたぁ」
ミコは渋々素振りを始めた。リナルドは指示されたセットを終わらせ、一旦休憩をとった。
「どうだ、疲れたか?」
「大丈夫、それよりお父さん、教えてほしいの」
リナルドは素振りの間に感じた疑問、体の使い方を教えてもらった。リナルドは一回一回フォームを意識していたから、自身の課題をちゃんと感じ取っていた。
ハローが教えると、すぐに素振りを再開する。そしたら格段に型が良くなっていて、両親を驚かせた。
ミコも負けじとナルガに教えを乞い、フォームを修正する。互いに刺激し合って、いい感じだ。
「お姉ちゃんがしてくれたように、僕もアマトのために、大きくならなくちゃ」
リナルドは口癖のように繰り返している。どうやら自分を、かつて守ってくれた姉と重ねているらしい。
ハローは目を細め、シェリーに想いを馳せた。
見てるか、君の弟は、立派に成長しているよ。
「いつか必ず……君を、救ってみせる」
―大丈夫だよ、ハロー。
ハローの耳元に、シェリーの声が届いた。
漫然と振ると、ナルガから注意されてしまう。足の位置、木刀の振り方、力の入れ方。あらゆる要素を意識し、木刀を握る。
単純な動作の中に、重要な要素が沢山詰まっている。リナルドはそう思った。かつて魔剣に封じられ、数多の使い手に握られたからか、リナルドの理解は早かった。
「ふむ、中々教え甲斐があるな。型が様になっているではないか」
「だね。それにもう片っぽも、才能があるみたいじゃないか」
そう、二人に師事を受けているのはリナルドだけではない。
なぜかミコも、リナルドと一緒に素振りをしているのだ。
「リナルドがやるなら、ミコもやるっ! のっ! お姉ちゃんっ、だからっ! ミコもリナルドをっ! 守れるようになるのっ! ……でも腕重たいー」
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「だってハロー兄はぶんぶん力いっぱい振ってるもん」
「俺のは参考にするなよ、誰からも教わってない我流の斬り覚えで、太刀筋滅茶苦茶だし」
「それで当時の私と互角にやっていたのが信じられんのだが」
要は才能に任せたごり押しである。
「うー、素振りつまんないよぉ。アリス、ハロー兄、必殺技教えてよー」
「基礎も出来ていない奴が何を言う。リナルドを見ろ、黙々と素振りを続けているだろう」
「まずは、ちゃんと刃物の扱い方を学ばないとな。……剣術は所詮、命を奪う技術に過ぎない。おとぎ話みたいな、恰好いいものではないんだ。自分が扱う技術の意味、重み、そして責任。技を教えるのは、それらを覚えてからだ」
ナルガも頷いた。力を持つ二人だからこそ、自身の教える技術の意味を深く理解している。
力を持つ者には、大いなる責任が伴う。リナルドとミコには、自身の力に溺れないよう、強い心を持ってもらわなければならない。
「分かった、リナルドのお姉ちゃんだもの、ミコは途中で投げ出さないもん」
「いい子だ。その気持ちがあればお前は強くなるぞ。では素振り十回もうワンセット、集中してなかったからやり直しだ」
「うぅ~……分かりましたぁ」
ミコは渋々素振りを始めた。リナルドは指示されたセットを終わらせ、一旦休憩をとった。
「どうだ、疲れたか?」
「大丈夫、それよりお父さん、教えてほしいの」
リナルドは素振りの間に感じた疑問、体の使い方を教えてもらった。リナルドは一回一回フォームを意識していたから、自身の課題をちゃんと感じ取っていた。
ハローが教えると、すぐに素振りを再開する。そしたら格段に型が良くなっていて、両親を驚かせた。
ミコも負けじとナルガに教えを乞い、フォームを修正する。互いに刺激し合って、いい感じだ。
「お姉ちゃんがしてくれたように、僕もアマトのために、大きくならなくちゃ」
リナルドは口癖のように繰り返している。どうやら自分を、かつて守ってくれた姉と重ねているらしい。
ハローは目を細め、シェリーに想いを馳せた。
見てるか、君の弟は、立派に成長しているよ。
「いつか必ず……君を、救ってみせる」
―大丈夫だよ、ハロー。
ハローの耳元に、シェリーの声が届いた。
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