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1話 Start Up Quasar
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ぱちりと、電源が付いたように意識が灯った。
頭の中に0と1の羅列が、螺旋状になって浮かんでくる。やがてはっきりと自分を認識できるようになると、
「やった、成功だ!」
「マジかよ! やったな御堂!」
目の前にある、透明な壁の前で……沢山の人々が大喜びしている姿が目に移った。
ここはどこだろう。彼はきょろきょろと辺りを見渡した。
彼はワンルームの部屋に立っていた。ベッドにテーブル、椅子、そしてキッチンと、生活に必要な物が一通り揃っている。だけども、彼には全部必要ない物だ。
だって彼は、食事をとる事も無ければ睡眠もとらないのだから。
姿見に、自分の姿が映った。まるでヒーローを思わせる、青とシルバーを基調としたアーマーを着用した人物が立っていた。緑のツインアイが、力強く輝いていた。
ぼんやりしていると、眼鏡をかけたショートヘアの女性が身を乗り出してきた。童顔で愛らしい容姿をした、ワイシャツが良く似合う人だ。
「私の事が分かるかい? 君自身の事は?」
「貴女は御堂ひかる、私を生み出したエンジニアです。そして私は、貴女によって作り出された人工知能:クェーサーです」
「その通り! どうだい先輩、クェーサーは私とちゃんとした会話が出来ているよ!」
「いや本当凄いな、まさか辺鄙な町工場にこんな物作れる奴が居るとは思わなかったぜ」
御堂の隣で男がはしゃいでいる。救命と言う名の男だ。タオルをバンダナのように頭に巻き付けている彼は、油まみれのつなぎを着込み、腰に工具を提げている。工場の作業員と言う表現がぴったりだ。
改めて、彼は外の世界を眺めた。
東京都郊外、仁王市にある製造会社、羽山工業。社員数30名程の中小企業。彼が居るのは、この会社のオフィスにある、デスクトップパソコンの中だ。
羽山工業ではあるプロジェクトが進行している。それは「感情を持った、人に寄り添える人工知能」の作成だ。
この企業は主に部品を製造しているが、2年前から新たにスマホアプリの開発事業にも手を出していて、既に4つの特許を持つまでに成長している。
成長中の事業を更に躍進させるため、羽山工業は人の生活に欠かせぬ存在となったスマホに、人と寄り添う心を搭載させると言うコンセプトで新しいアプリの制作を行っていた。
スマホがもっと人に寄り添えれば、高齢者の孤立や、虐待等で精神的支援を求める子供の気軽な相談相手になれる。そのためには知能だけでなく、心と感情を搭載する必要がある。
クェーサーはこの計画によって、自ら考え成長するAIとして生み出されたのである。
「これで私達の夢を叶えられる、君は私達にとって、大きな希望の光だよ。クェーサー」
「あーなんだっけ? 確か宇宙で一番明るい星だったっけか?」
「全然違うよ。無数にある銀河の中で、特に眩い活動銀河核をクェーサーって呼ぶんだ。「人の新たな未来を照らす希望の光となる」って願いを込めて名付けたんだよ。全く、先輩は頭悪いなぁ」
「考えるのは全部御堂に任せてるからな、今後もよろしく頭脳担当」
「はいはい、少しは自分でもやってよ肉体担当先輩」
二人のやり取りを眺めながら、彼もとい、クェーサーは首を傾げた。
この二人は、どうしてあんな無意味なやり取りをしているのだろう。
頭の中に0と1の羅列が、螺旋状になって浮かんでくる。やがてはっきりと自分を認識できるようになると、
「やった、成功だ!」
「マジかよ! やったな御堂!」
目の前にある、透明な壁の前で……沢山の人々が大喜びしている姿が目に移った。
ここはどこだろう。彼はきょろきょろと辺りを見渡した。
彼はワンルームの部屋に立っていた。ベッドにテーブル、椅子、そしてキッチンと、生活に必要な物が一通り揃っている。だけども、彼には全部必要ない物だ。
だって彼は、食事をとる事も無ければ睡眠もとらないのだから。
姿見に、自分の姿が映った。まるでヒーローを思わせる、青とシルバーを基調としたアーマーを着用した人物が立っていた。緑のツインアイが、力強く輝いていた。
ぼんやりしていると、眼鏡をかけたショートヘアの女性が身を乗り出してきた。童顔で愛らしい容姿をした、ワイシャツが良く似合う人だ。
「私の事が分かるかい? 君自身の事は?」
「貴女は御堂ひかる、私を生み出したエンジニアです。そして私は、貴女によって作り出された人工知能:クェーサーです」
「その通り! どうだい先輩、クェーサーは私とちゃんとした会話が出来ているよ!」
「いや本当凄いな、まさか辺鄙な町工場にこんな物作れる奴が居るとは思わなかったぜ」
御堂の隣で男がはしゃいでいる。救命と言う名の男だ。タオルをバンダナのように頭に巻き付けている彼は、油まみれのつなぎを着込み、腰に工具を提げている。工場の作業員と言う表現がぴったりだ。
改めて、彼は外の世界を眺めた。
東京都郊外、仁王市にある製造会社、羽山工業。社員数30名程の中小企業。彼が居るのは、この会社のオフィスにある、デスクトップパソコンの中だ。
羽山工業ではあるプロジェクトが進行している。それは「感情を持った、人に寄り添える人工知能」の作成だ。
この企業は主に部品を製造しているが、2年前から新たにスマホアプリの開発事業にも手を出していて、既に4つの特許を持つまでに成長している。
成長中の事業を更に躍進させるため、羽山工業は人の生活に欠かせぬ存在となったスマホに、人と寄り添う心を搭載させると言うコンセプトで新しいアプリの制作を行っていた。
スマホがもっと人に寄り添えれば、高齢者の孤立や、虐待等で精神的支援を求める子供の気軽な相談相手になれる。そのためには知能だけでなく、心と感情を搭載する必要がある。
クェーサーはこの計画によって、自ら考え成長するAIとして生み出されたのである。
「これで私達の夢を叶えられる、君は私達にとって、大きな希望の光だよ。クェーサー」
「あーなんだっけ? 確か宇宙で一番明るい星だったっけか?」
「全然違うよ。無数にある銀河の中で、特に眩い活動銀河核をクェーサーって呼ぶんだ。「人の新たな未来を照らす希望の光となる」って願いを込めて名付けたんだよ。全く、先輩は頭悪いなぁ」
「考えるのは全部御堂に任せてるからな、今後もよろしく頭脳担当」
「はいはい、少しは自分でもやってよ肉体担当先輩」
二人のやり取りを眺めながら、彼もとい、クェーサーは首を傾げた。
この二人は、どうしてあんな無意味なやり取りをしているのだろう。
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