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33話 最早後には引けない
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「ええい、どこに行きおった」
カムスサはヤマタノオロチを探していた。妖気を集めていたら、隠し場所から逃げていたのだ。
まだヤマタノオロチは完全ではない、万一見つかれば、人間でも容易く駆除できてしまう。
くまなく探すと、白蛇を見つけた。8つある頭の内、1つが欠けていた。
「お前、首はどうした? まさか人間に切られたか」
心配したのも束の間、1匹の白蛇が現れて、ヤマタノオロチと同化する。元通り8つの頭になり、カムスサはほっとした。
首を分断して、個別に動かせるようだ。
「ひやひやさせおって、どこに行っておった」
残念ながら、ヤマタノオロチに会話できる知能はない。カムスサはため息を吐いた。
……今日も街であやかしを狩ってきた。大儀のため、あやかしの未来のため。自分に何度も言い聞かせ、非道を働く度に、心がひび割れていくのを感じた。
人間社会に溶け込んでいるあやかし達を眺めている内に、自分のやっている事が本当に正義なのか、分からなくなってくる。
あやかし達は本気で人間を愛し、人間もまたあやかし達へ愛を注いでいる。驚くことに、友や意中の相手があやかしだと知っても、想いを変えぬ人間が多数居たのだ。
人間はあやかしを見下していたのではなかったのか? それでは自分のやっている事は、無意味なのではないか?
あやかしだけの世界を作ろうとするのは、同胞から愛する者達を奪う事に繋がってしまうのではないか?
それどころか、人間を追い払うために、同胞に手を下している自分は……単なる悪なのではないか?
今からでも、人間との共存に動くべきではないのか?
「……今さら、後に引けるものか」
行動には常に責任が伴う、例え過ちだとしても、後戻りなど許されない。
人間を排斥しなければ、あやかし達から力を貰わねば。どんなに間違っていても、始めた以上は止まれないのだ。
「すまぬ……だが、許せよ……」
必ずや、あやかし達の、理想の世界を、造らねばならぬ。
ヤマタノオロチを飼っていて分かったが、こいつは力を付ければ付ける程制御が難しくなる。意のままに操るには、強力な妖力を持ったあやかしを核とする必要があるようだ。
しかしそんな妖力を持ったあやかしなど、そうそう居るわけではない。
「……おい、お前……なぜお前から、サヨを感じる」
ヤマタノオロチに触れると、サヨリヒメの力を感じた。こいつ、まさか仁王まで赴き、サヨリヒメの妖力を食ったのか?
「……そうか、サヨか。あいつを、核にすれば……!」
カムスサの考えは、親として絶対に踏み超えてはならない一線だった。
だけど……焦りもあってカムスサは……迷わずそれを超えようとしていた。
カムスサはヤマタノオロチを探していた。妖気を集めていたら、隠し場所から逃げていたのだ。
まだヤマタノオロチは完全ではない、万一見つかれば、人間でも容易く駆除できてしまう。
くまなく探すと、白蛇を見つけた。8つある頭の内、1つが欠けていた。
「お前、首はどうした? まさか人間に切られたか」
心配したのも束の間、1匹の白蛇が現れて、ヤマタノオロチと同化する。元通り8つの頭になり、カムスサはほっとした。
首を分断して、個別に動かせるようだ。
「ひやひやさせおって、どこに行っておった」
残念ながら、ヤマタノオロチに会話できる知能はない。カムスサはため息を吐いた。
……今日も街であやかしを狩ってきた。大儀のため、あやかしの未来のため。自分に何度も言い聞かせ、非道を働く度に、心がひび割れていくのを感じた。
人間社会に溶け込んでいるあやかし達を眺めている内に、自分のやっている事が本当に正義なのか、分からなくなってくる。
あやかし達は本気で人間を愛し、人間もまたあやかし達へ愛を注いでいる。驚くことに、友や意中の相手があやかしだと知っても、想いを変えぬ人間が多数居たのだ。
人間はあやかしを見下していたのではなかったのか? それでは自分のやっている事は、無意味なのではないか?
あやかしだけの世界を作ろうとするのは、同胞から愛する者達を奪う事に繋がってしまうのではないか?
それどころか、人間を追い払うために、同胞に手を下している自分は……単なる悪なのではないか?
今からでも、人間との共存に動くべきではないのか?
「……今さら、後に引けるものか」
行動には常に責任が伴う、例え過ちだとしても、後戻りなど許されない。
人間を排斥しなければ、あやかし達から力を貰わねば。どんなに間違っていても、始めた以上は止まれないのだ。
「すまぬ……だが、許せよ……」
必ずや、あやかし達の、理想の世界を、造らねばならぬ。
ヤマタノオロチを飼っていて分かったが、こいつは力を付ければ付ける程制御が難しくなる。意のままに操るには、強力な妖力を持ったあやかしを核とする必要があるようだ。
しかしそんな妖力を持ったあやかしなど、そうそう居るわけではない。
「……おい、お前……なぜお前から、サヨを感じる」
ヤマタノオロチに触れると、サヨリヒメの力を感じた。こいつ、まさか仁王まで赴き、サヨリヒメの妖力を食ったのか?
「……そうか、サヨか。あいつを、核にすれば……!」
カムスサの考えは、親として絶対に踏み超えてはならない一線だった。
だけど……焦りもあってカムスサは……迷わずそれを超えようとしていた。
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