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44話 おかえり、人間
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日曜日の羽山工業に職員達が集まっていた。サヨリヒメの住処に行くと誘ったら、結構な数が手を上げたのだ。
勿論クェーサーもその中に入っていた。念のため予備バッテリーを救に背負ってもらい、長時間活動の準備も出来ている。
「なぁ救、それ重くないかい?」
「軽いっすよ、問題ないっす」
「いやまぁ、あんたがいいならいいんだけど……2個ってあんた、60キロあんだよそれ……」
「先輩は亀仙人の甲羅でも背負ってるのかい?」
「あと4つは余裕だぞ」
合計180キロである。
「すいません救、私の活動時間が短いばかりに」
「気にすんなよ、困った時はなんとやらだ」
「歓談はここまでで良いか? では向かおうぞ!」
サヨリヒメがレンタルしたバスに乗り込み、彼女の運転で目的地へ。神様がバスを運転する社員遠足だ。
「と言うかサヨリヒメ君、バス免許持ってるんだね」
「乗り物の免許は全部取得しておるからのぉ、ジャンボジェットも運転できるぞ」
「それは凄いな……え? 航空会社で働いた事が?」
「まぁの。一時日本とドイツを往復する生活をしていたのじゃ」
犬養は苦笑した。グローバルな神様である。
仁王市の山奥へと進んでいき、森が深くなっていく。社員達は「こんな道があっただろうか?」と首をかしげていた。
「あやかしだけの道があるのじゃ。山を根城にしていると、行政がうるさいからのぉ」
「あやかしも苦労してるんだな。鬼も通勤大変だろ」
「俺は昭島だから関係ないよ。雪女も山だとミニ四駆走らせられないから日野住まいだし」
「だいだらのおっさんはどこ住みなんだ? 今日用事で来てないけど」
「六本木ヒルズ。あれで事業家だからね、海外のお偉い方とリモート会議があんだってさ」
「六本木からここまで来てんのかよ!?」
「そうなんだよ、物好きな人だよねほんと」
鬼は笑いつつ、救とポッキーを分け合った。
御堂はアマビエにお茶を渡し、
「アマビエは山暮らしだったか、不便はないのかな?」
「快適だよぉ、ボクは綺麗な水が無いと生きられないから、山じゃないとダメなんだぁ」
「なるほど、あやかしの体質によっては山でないと暮らせないのか」
「うん。だからボクは人と恋が出来ないんだよねぇ、人間を山に連れてくるわけにはいかないしねぇ」
「人とあやかしの恋って大変だなぁ……」
クェーサーはバス内の会話を聞きながら、サヨリヒメに目を移した。
人とあやかしの恋が難しいのなら、AIの場合はもっと、困難にならないだろうか……。
そう考えていたら、停車した。
「着いたぞ、全員降りるのじゃ。ここがわらわの家じゃ」
サヨリヒメの住まいへ到着したようだ。早速降りるとそこに広がっていたのは、うっそうと木々が生い茂る森であった。
「森だね」
「森ですね」
「森だな。家ってか、うん。森だな」
「連呼するでない。これでも良き所なのじゃぞ」
「空気がきれいだからハイキングにはいいかもね」
白瀬がフォローしてくれたからちょっと機嫌が良くなるサヨリヒメである。
人の目には確かにただの森に見えるが、クェーサーのカメラは何者かの影を捉えていた。
踏み込むと、狸やキツネ、ネズミと言った野生動物達が近寄ってきた。
『人間がここに来るなんて久しぶりだ、サヨリヒメから話は聞いているよ、おかえりなさい』
「キツネが喋った?」
「キツネではなくあやかしです。稲荷ではないでしょうか」
『ご名答。中々聡明なからくり人形のようだ』
動物達は一斉に着物姿の人型へ変身した。羽山工業の面々は驚くも、すぐに受け入れた。
「うわぉ、凄い光景。なんかトトロの森に入り込んだ気分だねひかるさん」
「トトロの森は所沢だけどね。もしかしてこれまで僕達が見てきた動物って、皆あやかし?」
「うんにゃ、自然の中で生活するのに便利な姿をしておるだけじゃ。皆の衆! 昨日話した通り、今日は客人を招いた。皆で宴でも楽しもうぞ!」
「勿論だとも、そのために用意しておいたからね。奥へどうぞ」
あやかし達から歓待を受けながら、羽山工業の一行は奥へと進んでいった。
クェーサーもついて行きながら、先ほどの稲荷の言葉を気にした。
おかえりなさいとは、どういう事だろうか。
勿論クェーサーもその中に入っていた。念のため予備バッテリーを救に背負ってもらい、長時間活動の準備も出来ている。
「なぁ救、それ重くないかい?」
「軽いっすよ、問題ないっす」
「いやまぁ、あんたがいいならいいんだけど……2個ってあんた、60キロあんだよそれ……」
「先輩は亀仙人の甲羅でも背負ってるのかい?」
「あと4つは余裕だぞ」
合計180キロである。
「すいません救、私の活動時間が短いばかりに」
「気にすんなよ、困った時はなんとやらだ」
「歓談はここまでで良いか? では向かおうぞ!」
サヨリヒメがレンタルしたバスに乗り込み、彼女の運転で目的地へ。神様がバスを運転する社員遠足だ。
「と言うかサヨリヒメ君、バス免許持ってるんだね」
「乗り物の免許は全部取得しておるからのぉ、ジャンボジェットも運転できるぞ」
「それは凄いな……え? 航空会社で働いた事が?」
「まぁの。一時日本とドイツを往復する生活をしていたのじゃ」
犬養は苦笑した。グローバルな神様である。
仁王市の山奥へと進んでいき、森が深くなっていく。社員達は「こんな道があっただろうか?」と首をかしげていた。
「あやかしだけの道があるのじゃ。山を根城にしていると、行政がうるさいからのぉ」
「あやかしも苦労してるんだな。鬼も通勤大変だろ」
「俺は昭島だから関係ないよ。雪女も山だとミニ四駆走らせられないから日野住まいだし」
「だいだらのおっさんはどこ住みなんだ? 今日用事で来てないけど」
「六本木ヒルズ。あれで事業家だからね、海外のお偉い方とリモート会議があんだってさ」
「六本木からここまで来てんのかよ!?」
「そうなんだよ、物好きな人だよねほんと」
鬼は笑いつつ、救とポッキーを分け合った。
御堂はアマビエにお茶を渡し、
「アマビエは山暮らしだったか、不便はないのかな?」
「快適だよぉ、ボクは綺麗な水が無いと生きられないから、山じゃないとダメなんだぁ」
「なるほど、あやかしの体質によっては山でないと暮らせないのか」
「うん。だからボクは人と恋が出来ないんだよねぇ、人間を山に連れてくるわけにはいかないしねぇ」
「人とあやかしの恋って大変だなぁ……」
クェーサーはバス内の会話を聞きながら、サヨリヒメに目を移した。
人とあやかしの恋が難しいのなら、AIの場合はもっと、困難にならないだろうか……。
そう考えていたら、停車した。
「着いたぞ、全員降りるのじゃ。ここがわらわの家じゃ」
サヨリヒメの住まいへ到着したようだ。早速降りるとそこに広がっていたのは、うっそうと木々が生い茂る森であった。
「森だね」
「森ですね」
「森だな。家ってか、うん。森だな」
「連呼するでない。これでも良き所なのじゃぞ」
「空気がきれいだからハイキングにはいいかもね」
白瀬がフォローしてくれたからちょっと機嫌が良くなるサヨリヒメである。
人の目には確かにただの森に見えるが、クェーサーのカメラは何者かの影を捉えていた。
踏み込むと、狸やキツネ、ネズミと言った野生動物達が近寄ってきた。
『人間がここに来るなんて久しぶりだ、サヨリヒメから話は聞いているよ、おかえりなさい』
「キツネが喋った?」
「キツネではなくあやかしです。稲荷ではないでしょうか」
『ご名答。中々聡明なからくり人形のようだ』
動物達は一斉に着物姿の人型へ変身した。羽山工業の面々は驚くも、すぐに受け入れた。
「うわぉ、凄い光景。なんかトトロの森に入り込んだ気分だねひかるさん」
「トトロの森は所沢だけどね。もしかしてこれまで僕達が見てきた動物って、皆あやかし?」
「うんにゃ、自然の中で生活するのに便利な姿をしておるだけじゃ。皆の衆! 昨日話した通り、今日は客人を招いた。皆で宴でも楽しもうぞ!」
「勿論だとも、そのために用意しておいたからね。奥へどうぞ」
あやかし達から歓待を受けながら、羽山工業の一行は奥へと進んでいった。
クェーサーもついて行きながら、先ほどの稲荷の言葉を気にした。
おかえりなさいとは、どういう事だろうか。
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