kings field 蝶の森 

祥々奈々

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銃声

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 猛烈に危険な予感がする、冷や汗が額を濡らしている。
 その森に侵入するべきではないと全ての事象が最大限の警戒音を鳴らしていた。
 顎を上げて指を頸動脈に当てる、軽く息を整える。
 心拍数も変わっていない、視界も広い、冷静だ。
 脳の指示と行動が一致していない。

 「フレジィ・エミーらしくないな・・・」

 警戒音を無視して手綱を絞る、二人を全力で追いかけていた。
 朝見た連中は五人、個人の技量はどうか?武器は?銃はあるか?不明だ。
 脳が行動を否定する理由を並べ立てるが、理性と感の争いを感が制した。
 パアァアンッ 乾いた銃声音が一発、予感的中。
 「ちっ・・・」
 どっちが撃った?フローラの近従メイドも背中にマスケット銃を担いでいた、あいつか!?
  マスケット銃は連射できない、一人倒したとしても残り四人、反撃の銃声は聞こえない。
 どう考えても不利な状況に突入することになる。
 狭い街道に女二人を取り囲む四人の男たちが見えた、馬を男たちに向かって突っ込ませる。
 ガガガガッ
 「!?」
 「何だ!?」
 「危ない!」
 猛スピードで突っ込んだ馬に仰け反った男たちが慌てて後ろに飛びのく。
 バッ あぶみを蹴って二組の間にフワリと着地する。
 空中で敵の位置と装備を確認する、倒れている男の下に銃口が見えた、メイドがやったのだろう、最初に銃を持った奴を始末したのは良い判断だ、生き残ったら誉めてやろう。
 着地までの一瞬で状況を把握して次の行動へ繋げる。
 フローラたちに味方であることを認識させなければならない、後ろから撃たれては本末転倒だ。
 「助太刀する、退がれ!」
 肩越しに敵から視線をそらさず叫ぶ。
 「!!」 
 「なんだお前は!?」
 「邪魔するなら切るぞ!」
 尊大で横柄な振る舞い、こちらの体格を小さいとみて侮っている。
 「あなたはさっきの!?」フローラが前に踏み出す。
 「いけません!お嬢様、私の後ろへ」
 そうだ、距離を取って離れろ、剣撃の間合いに入るな、いいぞ、メイド。
 「・・・」
  敵に答えを返すようなことはしない、殺し合いに会話は無用だ。
 フローラとメイドは気丈に剣を構えてはいるが顔色を失くして震えている。
 戦力にはなりそうにない、一対四、数的には圧倒的に不利だ。
 考えている暇はない、千手必勝!
右端の黒装束に向かって居合一閃!ヒュオンッ 風が鳴る。
ピュッン 「熱っ!?」 ガラアッンッ 剣と共に指が落ちた。
「はっ!?はわあああああっ」
素早く指を失くした男の影に入ると身体を沈めて隣の男の膝あての隙間に突きを入れる。
ブツッ 「あがっ!?」 靭帯じんたいを切断する、もう歩けない。
 三人目がフローラたちに剣を向けた、咄嗟とっさに腰の投げナイフを投射する。
 ドスッ 首に入った、絶命はしないが激しく出血する。
 「やるな女、名前を聞いておこう?」
 「・・・」女ではないが無論答えない。
 「応えぬか・・・貴様も冒険者ならば示達を聞いているだろう、なぜムートン家を庇う?」
 仲間の窮状をみても眉ひとつ動かさない、男は長身で手が長く懐が深い、男は太ももに括ったナイフを両手に構えた、強敵だ、危険な予感はこいつのせいだ。
 「変わった剣だな、その剣さばきといい異国の者か?」
 言い終わらないうちに神速の短剣が打ち出された、剣捌きというよりボクシングだ、グローブの替わりにナイフが握られている。
 大きくバックステップ、射程外に逃れる。
 上手いフェイントだ、質問に答えていればやられていた。
 エミーは敵から見えないマントの中で刀のさやの中に小瓶を開けて液体を仕込む。
 「顔色ひとつ変えんとは・・・手加減している場合じゃないな」
 男の目が厳しさを増す、ユラユラと身体を揺らしステップを踏む、揺れてはいるが軸はブレていない、右前、左前、スイッチを繰り返す、さらなるフェイトを繰り返す。
 相変わらず無言のエミー、動き続ける男に対して前後に開いた足元を固めて静止する、爆発する一瞬に圧力をギリギリと高めるようだ。
 
 爆発の臨界点が迫った。
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