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第8章 洗礼
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虎白と共に訓練を重ねた白陸兵は徐々に兵士としての自信を身に付けていく。
太吉は竹子の師団の大隊長に昇進していた。
「竹子様。 大隊の訓練完了しました。」
「ご苦労さまです。 疲れましたか?」
竹子は太吉に優しく微笑む。
「はい。 昔からお優しいですね。」
「あれ? あなたは下界からですか?」
下唇を噛んで上目使いで太吉を見る。
少し赤面した太吉は答える。
「はい。 わしは厳三郎様の赤備えでした。」
「あら。 そうだったんですね! 天上界に来たんですね。」
うつ向き険しい表情をして太吉は口を開く。
「仲間が厳三郎様を守るために死にました・・・」
「そうだったんですね。 お気の毒に・・・でもあなたは無事でよかった。」
「竹子様。 わしは死ぬのが怖いです。 誰かの盾になって死ぬなんて嫌じゃ・・・」
竹子は遠くを見て下唇を噛む。
「それはみんなそうですよ。 私だって死ぬのは怖いです。 でも虎白の盾にはなれます。」
太吉は不思議そうに首をかしげる。
「大好きなんです。 虎白の事が。 彼を守れるなら盾にでも何でもなれます。」
「それがわからないんです。 誰かのために死ねるのが・・・」
机に座って書き物をしている竹子の手は止まり太吉を見ている。
「いつかわかる日が来るでしょうか。 あなたが兵士として戦っている理由は何でしょうか?」
「わしは幼い頃より兵士になる訓練をされていました。 気がつけば兵士でした。 戦っている理由は兵士の自分しか知らないからです。」
コクコクとうなずく竹子。
「誰かのために死ねとは言いません。 でも誰かのために戦ってみてはどうですか? 例えば部下のため。 同僚のため。 あと・・・もし嫌ではなかったら私のためとか・・・」
恥ずかしそうにする竹子に太吉はまた赤面する。
「可愛いですね。」
「ええっ!?」
「竹子様は本当に可愛らしい。」
「いや、そんな・・・」
下唇を噛んで少しニヤける竹子。
「しかし可愛らしさとは別に冷静さや勇敢さまで持っている。 わしなんかじゃ考えられない。」
「褒め過ぎですよ。 昇進を決めるのは虎白ですよ・・・」
「ゴマをすっているわけではございませぬ。 決めました。 あなたのために戦える様に努めます。 恐怖に駆られて自分が生きる事を最優先してしまいそうですが・・・」
竹子は微笑んでまた書き物を続けた。
「私のためじゃなくてもいいんですよ? 誰かのために戦えるのは強さです。 恐怖に打ち勝てます。 誰だって戦場は怖い。 そんな時に誰かの顔を思い浮かべれば勇気が出てきます。」
「はい。 まだわかりませぬが見いだせる様に努めます。」
「もっと自分の大隊に目を配ってはいかがでしょうか? 兵士を「可愛がる」のも戦う勇気になるかもしれませんよ?」
少しニヤけた竹子はもう太吉を見なかった。
「ありがとうございます。 失礼します。」
そして太吉は竹子の団長室を出た。
太吉は自分の大隊に向かっていた。
「誰かのためか・・・与平。 お前さんはロクに知らない厳三郎様のために死ねたのか・・・何故だ。 お前さんの実力なら今頃師団長になれていたかもな・・・」
1人でつぶやく太吉。
「死んだら終わりだぞい。 何も残らぬ・・・そしていつの日か忘れられる・・・」
大隊に戻った太吉。
「大隊長に敬礼!!」
ザッ!!
「大隊長失礼します!! ラルク中尉と申します。 周辺諸国への偵察任務に我が中隊と共に行かせてください。」
「理由は?」
「周辺諸国からの偵察兵は連日来ていました。 それがある日から来なくなりました。 何だか不思議に思ったので見に行きたいんです。」
太吉は険しい表情をしてラルクを見る。
「万が一に敵の危険を感じたら直ぐに撤退するんだ。 君の中隊だけで何かするな。」
「了解です。 では行って参ります。」
ラルクは自分の中隊を率いて同じ南側領土前衛の国を偵察するために出発した。
「はあ・・・命令もしていなにのにどうして自ら危険な任務に志願するのか・・・」
出発する自分の中隊を見ている。
「そういえば竹子様も敵がいるかも知れないとか言っていたな。 まさか周辺国は敵に襲われているんじゃないだろうな。」
不安げな表情のまま中隊を見つめる。
そして太吉の大隊を出発したラルクの中隊は1時間ほど進み武田領の付近にまで来ていた。
「これは・・・」
ラルクは小高い丘から見える景色に驚愕した。
そこからは城が見える。
しかし城は燃え上がり怒号と悲鳴が響く。
「武田軍が攻められている!!! 双眼鏡あるか?」
ラルクは双眼鏡で戦場を見る。
「冥府軍だ・・・連中が攻めてきたんだ!! 戻って急いで虎白様に報告するんだ!!」
「中隊長!!!」
ラルクの部下が叫ぶ。
その視線の先には黒い装束に黒い旗。
冥府軍の偵察部隊。
「戦闘開始だ!! 数は?」
「10人ほどです!!」
「よし!! 撃つだけ撃って敵を追い払え!! 急いで白陸に戻るぞ!!!」
バババーン!!
ライフルを一斉に撃つと冥府の偵察隊は逃げていった。
大急ぎで白陸に戻ったラルク達は太吉に見た物を話した。
「それは武田の海津城じゃな。 わしは昔武田におったのじゃ。 竹子様に報告してくる。 中隊長。 ようやった。 しっかり休め。」
太吉は竹子に報告した。
そして竹子は大急ぎで虎白の元へ向かった。
「太吉さん。 私の師団には武装する様に他の大隊長にも伝えてください。」
「かしこまった。」
しかし虎白の耳には海津城陥落の知らせ以外にも多くの敵の侵攻の知らせが入っていた。
天上界本部からの緊急招集で虎白は本部へ向かった。
虎白が不在の時は虎白の信頼の厚い竹子が指揮を執る。
「白陸にも敵が向かっているらしいぞ!!」
白陸兵は慌てて戦闘準備をする。
「弾薬を早く運べ!! 食料は後ろに下げろ!! 国民の避難を急げ!!」
訓練の成果もあり兵士達は迅速にそれぞれの仕事を行った。
そして籠城して敵を迎え撃つか出陣して野戦に持ち込むかで議論した結果、虎白も不在のため籠城で主の帰りを待つ事になった。
城の城壁から外を見る太吉。
「大隊長。 かなりの戦力で来ていますね。」
「そうじゃな・・・守りを固めろ。」
不安げな太吉は城壁をウロウロしている。
「各師団は守りに付け!!」
兵士が持ち場に付いて敵の襲来に備える。
虎白が築いた白陸城は防御要塞として素晴らしかった。
日本史のあらゆる城攻めの資料を元に作られたこの城は簡単には落とせなかった。
総大将が竹子になった事で太吉も本丸から戦況を見ている。
そして夜叉子の師団が前に出て敵を翻弄する。
「いよいよ実戦だ。 緊張する。」
「おいリークお前震えてるぞ。」
手元が震えて剣がカタカタと音を鳴らす。
「だ、大丈夫だ。 それにしてもこれは・・・」
心臓を握りつぶされる様な圧力。
半獣族の耳に響く怒号。
本気で自分を殺しに来る殺気。
訓練では味わう事のなかった緊張がリークを襲う。
「敵を焼け!!」
火の弓矢を放つ。
「おいリーク!!」
「ああ・・・火がつかない・・・」
弓に火が上手くつかずに慌てるリーク。
「放てー!!!」
遅れるリークを上官は見もせずに一斉に弓を放つ。
焼け焦げる敵。
物凄い声で悲鳴を上げる。
「ああ・・・ああ・・・」
「リーク次は弓で樽を撃つんだ!! おい落ち着けよ!!」
コカは必死にリークを落ち着かせる。
「毒入りの樽を射抜け!! 場所は覚えているな? 敵が近寄ったら撃て。」
冥府軍は火を恐れて街へ逃げ込もうとする。
しかしそこには夜叉子に仕掛けられた毒入りの樽があった。
兵士達は樽を射抜く。
「おい新兵。 あの樽を射抜け!!」
「は、はい。」
リークは弓を引いて放つ。
「は、外した・・・」
そしてもう一度放つがまたも外す。
「ど、どうしよ・・・」
「リーク!!」
パシッ!!
「ゲホッゲホッ!! カアッ・・・」
見かねたコカが一矢で樽を射抜く。
「落ち着けよ。 そんなに難しい事じゃないぞ」
リークは終始震えていた。
スッ。
慌てるリークの横に少女が立つ。
黒髪で真っ白の肌。
12歳ほどの小柄な体で背負う長い刀。
真っ赤な瞳で敵を見て笑う。
元12死徒魔呂。
リークは初めて近くで見る魔呂に更に震える。
「こ、怖い・・・」
魔呂はチラリとリークを見て笑う。
「あらー。 私は味方なのよー? 怖い思いをするのは敵だから大丈夫よー。」
強引に城内に雪崩込もうとする冥府軍を見てただ微笑んでいる魔呂を見てリークは安堵ではなく終始恐怖を覚えていた。
城壁の上で笑う魔呂。
コカとリークはその異様な雰囲気を見て震える。
敵は決死の覚悟で城内になだれ込む。
すると体を前にゆっくりと倒す魔呂。
そして敵の前に飛び降りた。
「1人で行くのか・・・」
なだれ込んだ敵の先頭集団は甲斐と少数の兵士に食い止められている。
大渋滞になった敵は魔呂に殺されていく。
「早い。 なんだあの動きは・・・」
コカは初めて見る魔呂の戦いに圧倒される。
「ボサッとするな!! 魔呂様を援護しろ!! 弓隊は周囲の敵に放て!!」
城壁の上からは弓と射撃の雨。
地上には魔呂。
先に進むと甲斐に遭遇する。
冥府軍はただ餌食になっていった。
「虎白様だ!!!!」
コカとリークが振り返ると虎白が側近を連れて立っている。
「よし。 じゃあ反撃といくか。」
『おおおおおおおおおー!!!!!!!』
一掃した城内を虎白は兵士を連れて出陣する。
「集結地は?」
平蔵が竹子に尋ねる。
「キリス地点にマケドニア軍がいるそうです。 他にも南軍が到着する様なので急いでくいださい。 私は出陣できません・・・私の師団を頼みます。 優子と共に動いてください・・・」
竹子は悔しそうに城へ戻っていった。
「たった今。 攻城戦を防いだのにもう出陣か。 なんと行動の早い。」
平蔵は出陣する白陸軍を見ている。
「我が隊も出陣しましょう。」
「そうじゃな。 では出陣!!」
『おおおおおおおおおー!!!!!!!』
平蔵の師団も出陣して優子の師団に続く。
総勢5万の大軍の一角を担う事になった平蔵は胸が踊っていた。
「平蔵様。 虎白様からです。」
「なんじゃ?」
「今回の戦闘では優子様の師団と連動して動く様にとの事です。」
「相わかった。」
虎白には何か作戦がある。
2個師団ごとにまとめている。
不思議に思った平蔵だが何も言わず考えず、ただ主の命令に従った。
キリス地点。
到着した白陸軍は驚く。
そこにはマケドニア軍が5万いるだけで周囲には他の南軍の姿はなかった。
「あんな険しい道だ。 虎白様が見つけた抜け道がなければ我らとて・・・」
キリスへ向かう道は険しい山道。
大軍が進むには困難だった。
虎白は夜叉子の妹の修羅子の案内で抜け道を通ってキリスへ到着した。
そこに布陣するマケドニア軍は優雅に野営している。
虎白がマケドニア王アレクサンドロスと話している。
「各師団も野営しな。」
夜叉子の命令で5万の白陸軍も野営を開始した。
その晩は特に命令はなく平蔵は眠った。
しかし太吉は違った。
「偵察隊の報告は?」
「ラルク中隊長が敵の接近を確認しました。」
「来たか・・・して数は?」
「そ、それが数え切れなかったと・・・」
太吉は不意な奇襲を恐れて野営をすると必ず偵察隊を出していた。
そして偵察隊は敵の接近を察知した。
その数え切れない兵力を聞いた太吉は渋い顔をして平蔵に伝えに向かった。
そして翌朝。
双方の軍勢が対峙する。
10万の白陸、マケドニア連合軍に対して冥府軍は100万。
これには白陸軍も士気が下がった。
「これは無謀じゃ・・・」
太吉も弱気になり下を向く。
「この兵力を覆すおつもりなのか虎白様・・・」
平蔵も1人つぶやく。
「うわあ・・・」
ハンナも圧倒されている。
「・・・」
「・・・」
コカとリークは声が出なかった。
虎白はじっと敵を見ている。
兵士の不安は届いているのか。
しかし彼は一瞬不敵な笑みを浮かべて開戦の指示を出そうとしている。
太吉は竹子の師団の大隊長に昇進していた。
「竹子様。 大隊の訓練完了しました。」
「ご苦労さまです。 疲れましたか?」
竹子は太吉に優しく微笑む。
「はい。 昔からお優しいですね。」
「あれ? あなたは下界からですか?」
下唇を噛んで上目使いで太吉を見る。
少し赤面した太吉は答える。
「はい。 わしは厳三郎様の赤備えでした。」
「あら。 そうだったんですね! 天上界に来たんですね。」
うつ向き険しい表情をして太吉は口を開く。
「仲間が厳三郎様を守るために死にました・・・」
「そうだったんですね。 お気の毒に・・・でもあなたは無事でよかった。」
「竹子様。 わしは死ぬのが怖いです。 誰かの盾になって死ぬなんて嫌じゃ・・・」
竹子は遠くを見て下唇を噛む。
「それはみんなそうですよ。 私だって死ぬのは怖いです。 でも虎白の盾にはなれます。」
太吉は不思議そうに首をかしげる。
「大好きなんです。 虎白の事が。 彼を守れるなら盾にでも何でもなれます。」
「それがわからないんです。 誰かのために死ねるのが・・・」
机に座って書き物をしている竹子の手は止まり太吉を見ている。
「いつかわかる日が来るでしょうか。 あなたが兵士として戦っている理由は何でしょうか?」
「わしは幼い頃より兵士になる訓練をされていました。 気がつけば兵士でした。 戦っている理由は兵士の自分しか知らないからです。」
コクコクとうなずく竹子。
「誰かのために死ねとは言いません。 でも誰かのために戦ってみてはどうですか? 例えば部下のため。 同僚のため。 あと・・・もし嫌ではなかったら私のためとか・・・」
恥ずかしそうにする竹子に太吉はまた赤面する。
「可愛いですね。」
「ええっ!?」
「竹子様は本当に可愛らしい。」
「いや、そんな・・・」
下唇を噛んで少しニヤける竹子。
「しかし可愛らしさとは別に冷静さや勇敢さまで持っている。 わしなんかじゃ考えられない。」
「褒め過ぎですよ。 昇進を決めるのは虎白ですよ・・・」
「ゴマをすっているわけではございませぬ。 決めました。 あなたのために戦える様に努めます。 恐怖に駆られて自分が生きる事を最優先してしまいそうですが・・・」
竹子は微笑んでまた書き物を続けた。
「私のためじゃなくてもいいんですよ? 誰かのために戦えるのは強さです。 恐怖に打ち勝てます。 誰だって戦場は怖い。 そんな時に誰かの顔を思い浮かべれば勇気が出てきます。」
「はい。 まだわかりませぬが見いだせる様に努めます。」
「もっと自分の大隊に目を配ってはいかがでしょうか? 兵士を「可愛がる」のも戦う勇気になるかもしれませんよ?」
少しニヤけた竹子はもう太吉を見なかった。
「ありがとうございます。 失礼します。」
そして太吉は竹子の団長室を出た。
太吉は自分の大隊に向かっていた。
「誰かのためか・・・与平。 お前さんはロクに知らない厳三郎様のために死ねたのか・・・何故だ。 お前さんの実力なら今頃師団長になれていたかもな・・・」
1人でつぶやく太吉。
「死んだら終わりだぞい。 何も残らぬ・・・そしていつの日か忘れられる・・・」
大隊に戻った太吉。
「大隊長に敬礼!!」
ザッ!!
「大隊長失礼します!! ラルク中尉と申します。 周辺諸国への偵察任務に我が中隊と共に行かせてください。」
「理由は?」
「周辺諸国からの偵察兵は連日来ていました。 それがある日から来なくなりました。 何だか不思議に思ったので見に行きたいんです。」
太吉は険しい表情をしてラルクを見る。
「万が一に敵の危険を感じたら直ぐに撤退するんだ。 君の中隊だけで何かするな。」
「了解です。 では行って参ります。」
ラルクは自分の中隊を率いて同じ南側領土前衛の国を偵察するために出発した。
「はあ・・・命令もしていなにのにどうして自ら危険な任務に志願するのか・・・」
出発する自分の中隊を見ている。
「そういえば竹子様も敵がいるかも知れないとか言っていたな。 まさか周辺国は敵に襲われているんじゃないだろうな。」
不安げな表情のまま中隊を見つめる。
そして太吉の大隊を出発したラルクの中隊は1時間ほど進み武田領の付近にまで来ていた。
「これは・・・」
ラルクは小高い丘から見える景色に驚愕した。
そこからは城が見える。
しかし城は燃え上がり怒号と悲鳴が響く。
「武田軍が攻められている!!! 双眼鏡あるか?」
ラルクは双眼鏡で戦場を見る。
「冥府軍だ・・・連中が攻めてきたんだ!! 戻って急いで虎白様に報告するんだ!!」
「中隊長!!!」
ラルクの部下が叫ぶ。
その視線の先には黒い装束に黒い旗。
冥府軍の偵察部隊。
「戦闘開始だ!! 数は?」
「10人ほどです!!」
「よし!! 撃つだけ撃って敵を追い払え!! 急いで白陸に戻るぞ!!!」
バババーン!!
ライフルを一斉に撃つと冥府の偵察隊は逃げていった。
大急ぎで白陸に戻ったラルク達は太吉に見た物を話した。
「それは武田の海津城じゃな。 わしは昔武田におったのじゃ。 竹子様に報告してくる。 中隊長。 ようやった。 しっかり休め。」
太吉は竹子に報告した。
そして竹子は大急ぎで虎白の元へ向かった。
「太吉さん。 私の師団には武装する様に他の大隊長にも伝えてください。」
「かしこまった。」
しかし虎白の耳には海津城陥落の知らせ以外にも多くの敵の侵攻の知らせが入っていた。
天上界本部からの緊急招集で虎白は本部へ向かった。
虎白が不在の時は虎白の信頼の厚い竹子が指揮を執る。
「白陸にも敵が向かっているらしいぞ!!」
白陸兵は慌てて戦闘準備をする。
「弾薬を早く運べ!! 食料は後ろに下げろ!! 国民の避難を急げ!!」
訓練の成果もあり兵士達は迅速にそれぞれの仕事を行った。
そして籠城して敵を迎え撃つか出陣して野戦に持ち込むかで議論した結果、虎白も不在のため籠城で主の帰りを待つ事になった。
城の城壁から外を見る太吉。
「大隊長。 かなりの戦力で来ていますね。」
「そうじゃな・・・守りを固めろ。」
不安げな太吉は城壁をウロウロしている。
「各師団は守りに付け!!」
兵士が持ち場に付いて敵の襲来に備える。
虎白が築いた白陸城は防御要塞として素晴らしかった。
日本史のあらゆる城攻めの資料を元に作られたこの城は簡単には落とせなかった。
総大将が竹子になった事で太吉も本丸から戦況を見ている。
そして夜叉子の師団が前に出て敵を翻弄する。
「いよいよ実戦だ。 緊張する。」
「おいリークお前震えてるぞ。」
手元が震えて剣がカタカタと音を鳴らす。
「だ、大丈夫だ。 それにしてもこれは・・・」
心臓を握りつぶされる様な圧力。
半獣族の耳に響く怒号。
本気で自分を殺しに来る殺気。
訓練では味わう事のなかった緊張がリークを襲う。
「敵を焼け!!」
火の弓矢を放つ。
「おいリーク!!」
「ああ・・・火がつかない・・・」
弓に火が上手くつかずに慌てるリーク。
「放てー!!!」
遅れるリークを上官は見もせずに一斉に弓を放つ。
焼け焦げる敵。
物凄い声で悲鳴を上げる。
「ああ・・・ああ・・・」
「リーク次は弓で樽を撃つんだ!! おい落ち着けよ!!」
コカは必死にリークを落ち着かせる。
「毒入りの樽を射抜け!! 場所は覚えているな? 敵が近寄ったら撃て。」
冥府軍は火を恐れて街へ逃げ込もうとする。
しかしそこには夜叉子に仕掛けられた毒入りの樽があった。
兵士達は樽を射抜く。
「おい新兵。 あの樽を射抜け!!」
「は、はい。」
リークは弓を引いて放つ。
「は、外した・・・」
そしてもう一度放つがまたも外す。
「ど、どうしよ・・・」
「リーク!!」
パシッ!!
「ゲホッゲホッ!! カアッ・・・」
見かねたコカが一矢で樽を射抜く。
「落ち着けよ。 そんなに難しい事じゃないぞ」
リークは終始震えていた。
スッ。
慌てるリークの横に少女が立つ。
黒髪で真っ白の肌。
12歳ほどの小柄な体で背負う長い刀。
真っ赤な瞳で敵を見て笑う。
元12死徒魔呂。
リークは初めて近くで見る魔呂に更に震える。
「こ、怖い・・・」
魔呂はチラリとリークを見て笑う。
「あらー。 私は味方なのよー? 怖い思いをするのは敵だから大丈夫よー。」
強引に城内に雪崩込もうとする冥府軍を見てただ微笑んでいる魔呂を見てリークは安堵ではなく終始恐怖を覚えていた。
城壁の上で笑う魔呂。
コカとリークはその異様な雰囲気を見て震える。
敵は決死の覚悟で城内になだれ込む。
すると体を前にゆっくりと倒す魔呂。
そして敵の前に飛び降りた。
「1人で行くのか・・・」
なだれ込んだ敵の先頭集団は甲斐と少数の兵士に食い止められている。
大渋滞になった敵は魔呂に殺されていく。
「早い。 なんだあの動きは・・・」
コカは初めて見る魔呂の戦いに圧倒される。
「ボサッとするな!! 魔呂様を援護しろ!! 弓隊は周囲の敵に放て!!」
城壁の上からは弓と射撃の雨。
地上には魔呂。
先に進むと甲斐に遭遇する。
冥府軍はただ餌食になっていった。
「虎白様だ!!!!」
コカとリークが振り返ると虎白が側近を連れて立っている。
「よし。 じゃあ反撃といくか。」
『おおおおおおおおおー!!!!!!!』
一掃した城内を虎白は兵士を連れて出陣する。
「集結地は?」
平蔵が竹子に尋ねる。
「キリス地点にマケドニア軍がいるそうです。 他にも南軍が到着する様なので急いでくいださい。 私は出陣できません・・・私の師団を頼みます。 優子と共に動いてください・・・」
竹子は悔しそうに城へ戻っていった。
「たった今。 攻城戦を防いだのにもう出陣か。 なんと行動の早い。」
平蔵は出陣する白陸軍を見ている。
「我が隊も出陣しましょう。」
「そうじゃな。 では出陣!!」
『おおおおおおおおおー!!!!!!!』
平蔵の師団も出陣して優子の師団に続く。
総勢5万の大軍の一角を担う事になった平蔵は胸が踊っていた。
「平蔵様。 虎白様からです。」
「なんじゃ?」
「今回の戦闘では優子様の師団と連動して動く様にとの事です。」
「相わかった。」
虎白には何か作戦がある。
2個師団ごとにまとめている。
不思議に思った平蔵だが何も言わず考えず、ただ主の命令に従った。
キリス地点。
到着した白陸軍は驚く。
そこにはマケドニア軍が5万いるだけで周囲には他の南軍の姿はなかった。
「あんな険しい道だ。 虎白様が見つけた抜け道がなければ我らとて・・・」
キリスへ向かう道は険しい山道。
大軍が進むには困難だった。
虎白は夜叉子の妹の修羅子の案内で抜け道を通ってキリスへ到着した。
そこに布陣するマケドニア軍は優雅に野営している。
虎白がマケドニア王アレクサンドロスと話している。
「各師団も野営しな。」
夜叉子の命令で5万の白陸軍も野営を開始した。
その晩は特に命令はなく平蔵は眠った。
しかし太吉は違った。
「偵察隊の報告は?」
「ラルク中隊長が敵の接近を確認しました。」
「来たか・・・して数は?」
「そ、それが数え切れなかったと・・・」
太吉は不意な奇襲を恐れて野営をすると必ず偵察隊を出していた。
そして偵察隊は敵の接近を察知した。
その数え切れない兵力を聞いた太吉は渋い顔をして平蔵に伝えに向かった。
そして翌朝。
双方の軍勢が対峙する。
10万の白陸、マケドニア連合軍に対して冥府軍は100万。
これには白陸軍も士気が下がった。
「これは無謀じゃ・・・」
太吉も弱気になり下を向く。
「この兵力を覆すおつもりなのか虎白様・・・」
平蔵も1人つぶやく。
「うわあ・・・」
ハンナも圧倒されている。
「・・・」
「・・・」
コカとリークは声が出なかった。
虎白はじっと敵を見ている。
兵士の不安は届いているのか。
しかし彼は一瞬不敵な笑みを浮かべて開戦の指示を出そうとしている。
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一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―
酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。
でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。
女神に導かれ、空の海を旅する青年。
特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。
絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。
それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。
彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。
――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。
その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。
これは、ただの俺の旅の物語。
『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』
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