天冥聖戦 外伝 帰らぬ英雄達

くらまゆうき

文字の大きさ
55 / 99

第55章 再び戦士の元へ

しおりを挟む
軍備を整えた白陸軍は再度戦士の国との戦いを始めるために中間地点へ出陣した。


戦士の国は一度の敗北では折れない。


再び立ち上がり、白陸や天上界打倒のために中間地点へ向かった。


しかし白陸は既にエリュシオンの動きを把握していた。


虎白の優秀な大将軍達。


情報将校のサラ。


現地偵察のエヴァ。


撹乱工作のお初。


白陸の影の様に動く彼女達の活躍で虎白は常にエリュシオンより有利に動けた。


そしてサラからの報告で準備を行う虎白は兵を召集して中間地点へ向かった。




「まだディノ平原に来るのか。 悪いが正々堂々なんて俺は興味ないぞ。 春花の空軍を先に行かせろ。 エヴァの話なら敵は戦闘機を出せない。 というより持ってねえ。」




鎧兜をつけた虎白は側近の莉久と話している。


少し離れた場所にある飛行場では大将軍春花の空軍が離陸する。


轟音が聞こえ始めた。


しばらくすると1機また1機と天上界の大空へ飛び出した。



「虎白様。 爆撃機50機。 戦闘機13機が離陸しました。」
「まあ十分だろ。 陸戦隊も行くぞ。」
「はは。」



そして陸軍も前進を始めた。




ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!


バーンッ!!


ダダダダダダッ!!!




虎白達には聞こえている。


空軍の爆撃音が。


それは先頭を歩くハンナ達にはもっと聞こえていた。


戦闘機や爆撃機が空を飛んでいる。


あの先では何が起きているのか。





「竹子・・・」
「春花の空軍が焼き尽くしているね。」
「あんなの生き残れない・・・」



エリュシオンが布陣しているはずの丘を削り取るほどの爆撃。


更に白陸軍は近づいた。


怒号や悲鳴が聞こえ始める。


丘の上から立ち込める煙。


まるで地獄絵図だ。




「伝令です。 竹子様。 爆撃地点には右翼軍のレミテリシア様が向かいます。 中央軍はこのまま進んでください。 間もなく接敵するとの事です。」
「伝令!!! 一大事です!! 左翼軍前方からこちらに向けて敵別働隊の接近!! か、数は大軍で見当もつかないとか・・・」




竹子は下唇を噛んだ。


ハンナは隣で唖然としている。


戦場に出ていればいつだってある。


予想外の事態は。


ナイツのエヴァ達でさえも見切れないほど広い戦場。


エヴァ達の監視をかいくぐり大軍が動いていた。





「竹子様ー!! 来ます!! 敵接近!! 戦車隊です。」
「機甲師団について歩兵前進。 乱戦に移行します。」
「敵確認!! レギオンです!!」
「レギオン。 こちらの情報では咲羅花家との抗争で破れて沈黙していたとか・・・」



エリュシオンに君臨する二大勢力。


咲羅花家とレギオン。


初戦で完膚なきまでに粉砕したのは咲羅花家。


武士の様な軍装の兵士達。


正々堂々と戦う事を誉れとして虎白に挑んで大敗した。


そして今、竹子達の前に現れた軍団。


中世ヨーロッパの騎士の様な軍装。


それに似つかわしくない銀色の戦車。


このレギオンを率いるディアボロ。


その存在は情報を巧みに操った。


天上界には内部抗争で沈黙と言いながらも咲羅花家と共に初戦に出陣したが戦いもせずに撤退した。


気づかれずに戦力を温存していた。


そして今、大将軍エヴァの目すらもかいくぐりこの場に現れた。。


白陸軍の側面を強襲したレギオンは戦車を中心に進んでいる。


5年の歳月で白陸軍も近代戦闘を取り入れた。


アーム戦役で近代戦闘に翻弄された白陸軍は5年間で戦車を含む近代兵器を多く使用していた。


銀色のレギオン機甲師団に対峙する純白の白陸機甲師団。


そして多くの歩兵が戦闘を始めた。




ボンッ!!


ドッカーンッ!!




「私なら斬れる。 鉄の馬も何でも。 背負います。 この戦車を作った者も操る者の魂も。」
「竹子!? まさか戦車を!?」
「大丈夫。 5年の修行は無駄じゃなかった。 第六感硬化。 第七感。」




薙刀を持った竹子はゆっくりと戦車の前に出る。


白陸の戦車兵が驚いて竹子を止めるが聞いていない。


レギオンは竹子に攻撃を集中する。




「あの小柄な女を撃てー!! あいつは白陸の守護神だ!!」




ボンッ!!



ダダダダダダッ!!!!!




「退けません。 5年もの間。 私なんかを信じて待っていてくれた方々がいるから。 守りたいから。 だから。 斬ります。 そして。 背負わせていただきます!」




スパッ



ドッカーンッ!!!!



戦場は一瞬静まり返った。


たった一刀で。


たった一刀で戦車を真っ二つにした光景に。


竹子は止まらなかった。


敵陣深くまで。


竹子は薙刀で戦車を破壊した。


異次元の強さを見せつけた。


ハンナはその後ろ姿を見ていた。


涙目になってつぶやいた。




「もう・・・ずっと泣いていたのに・・・どうしてそんなに強いの? だから生きていけるんだよ竹子。 私は。 そんなに小さい体で色んな事背負って泣いても歩むから。 だから。 死ぬ気でついていきたくなるんだよ竹子・・・中央軍全軍!!! 竹子様に続けええええええ!!!!!!!!!!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




竹子は戦車を次々に破壊したが白陸軍の戦車も破壊されていく。


ハンナや白神隊も乱戦へと身を投じた。


誰一人恐れていない。


小さな体で長い薙刀を振るっている我らが都督様。


いつだって勇気が湧いてくる。




「竹子!!! もっと上に行こう!! もっともっと!! この世界のその先を見ようよ!!!」
「ふふ。 もちろん! 全軍敵を蹂躙してください!! 一兵たりとも逃さないでください!!」



レギオンの側面強襲は咲羅花軍を救う形になった。


しかし白陸軍は砕けなかった。


何度も死戦を生き抜いてきた百戦錬磨の猛者達。


猛反撃を開始した白陸軍はレギオンと一進一退の戦闘を続けた。


中央軍のみでレギオン全軍を足止めした。


そして。




「伝令!!! 竹子様!! 右翼軍のレミテリシア様が敵軍の壊滅を確認してこの戦線へ向かっています!!」
「伝令!!!! 左翼軍の夜叉子様がレギオンの側面を強襲!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




中央軍の士気は爆発した。


竹子の動きに応えるかの様に各所の大将軍が動き出した。


これも竹子の力なのか。


ハンナは胸を熱くしながら戦っていた。




「竹子の動きに応える様に。 夜叉子様が強襲をかけた。 そしてレミテリシア様が向かっている。 負けるもんか!! こんな素晴らしい方々がいて負けるもんか!!」



とにかく奮戦した。


ハンナは一体何人の敵を倒したのか。


ルーナは見ていた。


ハンナの奮戦を。




「いやいや・・・竹子様も凄いけど・・・少佐・・・もう1人で敵の1個小隊ぐらい潰している・・・いいか全員!! 少佐を死なせるな!! このままレギオンをエリュシオンに押し返してやれ!!」



ルーナは冷静にハンナの周囲に分隊を配置していった。


竹子もハンナも敵を圧倒している。


しかし誰かが冷静に指揮を執らなくてはならない。


又三郎とルーナは白神隊を竹子とハンナを守る様に動かした。


どちらも必要な事だ。


敵を圧倒する武力も冷静な采配も。


その両方をできるのは虎白ぐらい。


誰もがわかる事だ。


だから虎白は皇帝なのだ。


しかし竹子達にはできない。

だから支える。


それが側近なのだから。




「又三郎中佐。 竹子様の右に更に2個分隊を配置しても構いませんか?」
「いいや大尉。 ハンナの右に置け。 しばらくは彼女らに暴れさせてやるのじゃ。」
「了解。」



白神隊はまるで1つの生き物の様に自在に動く。


竹子とハンナ。


白神隊の最強の2人。


この2人の破壊力を支える又三郎とルーナの指揮。


剣と盾を持った1つの生き物の様に。




「伝令!!! 美楽隊です!! 竹子様は!?」
「今はわしが指揮しておる。」
「では中佐!! こちらで敵の指揮官3名を討ち取りました! 間もなく崩れるかと!! それではご武運を!!」




レギオンも驚いている事だろう。


機甲師団で強襲しても崩れない中央軍の強さに。


しかしレギオンも馬鹿ではない。


そしてレギオンにも背負うものがある。



「中佐。 何か来ます。」
「わかるのか?」
「第六感。」
「何が来る?」
「騎兵。 数は2000。 何か持っている。 騎馬突撃じゃない。 何を狙っている。」




ルーナはこの乱戦の中でも敵の気配を感じ分けていた。


5年で得たルーナの驚異の第六感。


又三郎はルーナを信じた。


竹子とハンナの周りの部隊を増やした。




「もう。 来ます。」




ガッシャーン!!




「騎兵突撃!! 今だ!!」



バリンッ!!


バリンッ!!


騎兵は乱戦にするわけではなく何かを投げていた。


レギオンの騎兵は突撃ではなく白神隊に急接近して何かを投げた。


そして火矢が飛んできた。


ルーナは気がついていた。


しかし1人ではどうする事もできなかった。


味方や竹子やハンナを守る事しかできなかった。




「命の選別か・・・すまないみんな。 竹子様と少佐を守らないといけないんだ・・・その時が来たら私も迷わず盾になるから・・・」




ボワッ!!!




『ああああああああああ!!!!!!!!!!!! 焼けるー!! 助けてえええええ!!!!』



白神隊に投げつけた物は油の入った瓶。


火矢が放たれて一気に燃え上がる白神隊は何百と燃えた。


ルーナはそれでも冷静だった。


速やかに竹子とハンナを守り後退を開始させた。



「おのれ!!!! 大尉!! 反撃するぞ!!」
「いいえ中佐。 味方が燃えている間に後退しましょう。 敵は第1軍に狙いを絞って進んでいます。 ここで踏ん張れば犠牲者はもっと増えます。」
「貴様!! 誉れはないのか!! 死にゆく味方を置いて行けと!?」
「誉れじゃ戦には勝てません・・・悔しいのは私だって・・・第六感でこうなる事まで気づいていた。 でも・・・どうにもできなかった・・・だから考えた・・・仲間の敵を討つために後退するんです。」



怒る又三郎だったが冷静さを取り戻した。


ルーナと共に白神隊の後退を始めた。


破竹の勢いでレギオンを倒していたが進撃はここで止まった。


竹子とハンナは戦いを止めて後退を開始する。


周囲を見渡すと燃える白神隊と美楽隊。


レギオンは第1、2軍を押し返している。


竹子と優子は囲まれつつあった。




「竹子!!」
「まさか火計をしてくるとは。 この乱戦で。 随分賢い指揮官が敵にいる。 ハンナ。 怪我は?」
「私は大丈夫。 それより優子様と美楽隊も危ない。 私達を包囲しようとしている。 早く下がらないと。 中央軍も崩壊してしまう。」




意地は捨てる。


それが生き残る術。


ここで焼け死んだ仲間のために踏ん張れば全滅する。


焼けた仲間はもう助からない。


彼らのためにここは下がって必ず敵を討つ。


ハンナは下がる中央軍を見ていた。




「退路は1つ。 我々の真後ろにはまだ敵が少ない。 ここには白神と美楽がいる。 それに我らが竹子と優子様も。」




竹子はハンナを見ている。


優子も近づいてきて刀を抜く。


この死地で生還するには中央突破のみ。


レギオンがまだ完全に囲みきれていない今しかない。


先頭を走るのは武力が高い者。


そして生き残るべき者。


命の選別。


白神、美楽の下士官は後方についた。




「少佐。 私は後方に残ります。」
「ルーナ!!」
「暴れたりないので。 すいませんがお先にどうぞ。 では。」



ルーナは颯爽と後方に戻っていった。


後退するにあたって一番危険なのは当然だが後方。


敵が逃げるこちらの背中を斬りに来る。


ルーナはそれを自ら志願して向かった。




「自分の判断でみんなは焼けた。 命ぐらいかけないと死んだみんなに怒られる。 いつでも死ぬ覚悟はできている。 竹子様と少佐は死なせない。 美楽隊も下がれ!! ここは私の部隊でいい!!」
「大尉!! お仕えできて光栄でした!! みんなの元へ行きましょう!」
「馬鹿な事言うな!! お前達も死なせない! 少し耐えたら直ぐに下がるぞ!」



ルーナは少し前に出た。


部下よりも前に。


これ以上死なせたくない。


ルーナは自分が盾になるつもりだった。




「命をかけないと見えないものもある。 父さんは言っていた。 ずっと馬鹿みたいって思っていた。 でも父さん。 今ならわかるよ。 父さんは守りたい人がたくさんいたんだね。」



ルーナの父は第二次世界大戦で戦死した。


今は天上界で一般人として仲間と平和な日々を過ごしている。


その後ルーナも爆撃で命を落として天上界に来た。


ずっとわからなかった。


父が命をかけて戦う理由が。


だが今やっとわかった。


守りたい。


みんなを。




「てめえらかかってこい!!! 簡単には死なないぞ!! 白神の大尉だ!! 私を殺せば大手柄だぞ!! できるならな!!!」
「大尉を殺せー!!!!」
「紫雨さん。 見ていてください。」




ダダダダダダダダダッ!!!!


ルーナは銃撃を簡単に避けている。


ほんの一瞬だが銃弾が発射される前に動いている。


レギオン兵には避けている様にしか見えない。




「何だこいつ!! 当たらないぞ!!」
「万物の気配・・・」



いとも簡単に銃撃を避けると慌てたレギオン兵が装填している。


そしてその時。


ルーナは力を解き放った。


囁く様に。



「第七感・・・」



気がつくとレギオン兵達は大勢倒れていた。


見えもしない速さでルーナは斬っていた。


表情は恐ろしく冷静。


無念無想。


ルーナは集中していた。




「第六感・・・竹子様と少佐は下がれた。 私の部隊も下がれー!! 一目散に走って構わない!! さあお前ら。 続けようか。」




そしてルーナはまたしてもレギオン兵を斬り始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世
恋愛
 おケツに強い衝撃を受けて蘇った前世の記憶。  日本人だったことを思い出したワタクシは、侯爵令嬢のイルメラ・ベラルディと申します。 一応、侯爵令嬢ではあるのですが……婚約破棄され、傷物腫れ物の扱いで、静養という名目で田舎へとドナドナされて来た、ギリギリかろうじての侯爵家のご令嬢でございます……  しかし、そこで出会ったイケメン領主、エドアルド様に「例え力が弱くても構わない! 月50G支払おう!!」とまで言われたので、たった一つ使える回復魔法で、エドアルド様の疲労や騎士様方の怪我ーーそして頭皮も守ってみせましょう!  頑張りますのでお給金、よろしくお願いいたします!! ーーこれは、回復魔法しか使えない地味顔根暗の傷物侯爵令嬢がささやかな幸せを掴むまでのお話である。

処理中です...