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シーズン1序章 消えた神族と悲劇の少年
第16話 暗闇に光る一筋の光
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それはまさに死物狂いの脱出劇であった。周囲を怨霊の軍隊に囲まれている、虎白と竹子達は、自分の武器と身につけた技術のみを頼りに死地を脱するために走った。
道を塞ぐように立ちはだかる、怨霊の兵士を何度も斬り捨てた。やがて一同は窮地を脱して、広いショッピングモールにまで辿り着いていた。
「はあ......まさに危機一髪だったな」
「虎白? どうして敵の攻撃を未然に防げるの?」
首をかしげる竹子は言った。虎白は、刀を鞘に収めると、長椅子に腰掛けた。
「それは、神業ってやつだな。 別にふざけているわけじゃねえ。 どうしてか、これは良く覚えているんだ。 『第六感』って技をな」
世に言う第六感とは、遠くの者の気配を感じ取ったり、会話している相手が、話す前に何を言おうとしているのか、感じ取れる力だ。
虎白が話した「神業」について、気になる竹子は、さらに詳しく話しを聞いた。
「故郷のことも覚えてねえ......なのに刀術やら第六感の力は、覚えてんだよなあ。 俺は、敵が次にどんな行動をするのか、大体の予測ができる」
そう話している虎白を見る一同は、驚いた様子だ。それもそのはず、あの死地を脱する時、虎白は何かに導かれているかのように、進路を変更して走っていた。
気まぐれのようにも見えた進路変更は、驚くことに敵兵が手薄になるほんの僅かな隙間を通っていった。
「連中は、俺達の道を塞ぐように、兵士の壁を何重にもして通れなくしてやがった。 だが、兵士を動かすってことは、隙間が微かにできるってことだ。 俺は、第六感で敵が次に隙間を空ける場所を予測して走ったんだ」
まさに神業というわけだ。竹子は虎白の言葉を聞いて、強い安心感と同時に、底知れぬ謎の深さも感じていた。
あの死地の中で、そこまで冷静な判断をし続けられるのだろうか。ひょっとして、この虎白という神は、以前にもこのような経験があったのではないか。だとしたら、この男は一体何者なのか。
「どうした竹子?」
「う、ううん。 なんでもないよ」
「俺が怖いのか?」
「ふふっ。 それも第六感?」
「いいや。 顔を見ればわかるよ」
長椅子から立ち上がった虎白は、竹子の頭を優しく撫でると、腕を組んで遠くの景色を眺めている。男らしく知的な雰囲気を放つ、虎白は竹子の恋心を刺激し続けていた。
当の虎白は、乙女心を刺激している自覚はなく、今後のことを深刻な表情で考えている。
「本当にこれからどうするか......永遠に追いかけ続けられるのかな......」
「なんじゃ弱きですな鞍馬どん」
新納が髭を触りながら笑っている。虎白の隣に立つと、その昔に霊界を守っていた皇国武士の話しを始めた。
「鞍馬どんの戦いを見て、思い出した。 狐のお侍は、みんな強かったとよ」
「連中と話したことは?」
「なかよ。 わしら人間が、気安う話しかけられる相手じゃなかったと」
「じゃあ連中がどこへ行ったのかもわからねえなあ......」
今後の見通しも立たず、怨霊から逃げ続ける日々に嫌気が差していた。その時だ。
夜空を見ている虎白の目に映るのは、金色に輝いた何かが、降ってきているのだ。そして金色の何かは、虎白らの目の前に落ちた。
ショッピングモールを飛び出して、落下地点へ向かった一同は、武器を手にして警戒している。
「俺が見てくるから、近づくな」
刀を抜いた虎白は、静かに一歩一歩近づいた。落下地点に立ち込める、金色の煙の中へ消えた虎白を皆が、心配そうに見つめている。
「おいみんな来てみろ!」
虎白の声が聞こえ、一同は煙の中へ飛び込んだ。そこで、虎白が何かを持って立っている。表情は目を見開いて、驚いた様子だ。
「金色の矢だ......それに巻きつけられているは、手紙だぜ......」
酷く困惑している虎白は、恐る恐る手紙を広げると、短い文章が書かれていた。
「明日の明け方に、迎えに行く。 それまで生き延びろ。 天王より」
虎白には、心当たりはなかった。一体誰が迎えに来るのだろうか。そして「天王」とは誰を意味しているのか。
「なんだこれ」
「虎白の仲間のお侍さん達じゃない?」
「天王ってのは俺の仲間なのか?」
「わ、わからないけれど、迎えに来てくれるんだから、敵じゃないよ!」
それは竹子にとって、暗闇に光る一筋の光だった。永遠に続くかと思われた怨霊からの追撃から、解放されるのだ。相手が誰だか知らずとも、この場から逃がしてくれるというのなら、是非すがりたいものだ。
得体の知れない手紙に困惑する虎白の、背中を押して迎えを待つべきだと話している。
「罠だったらどうするんだ?」
「だって考えてみてよ! 夜空から金色の閃光を放って落ちてきたんだよ? 『天王』と名乗っているのも、納得行くと思わない?」
「うーん......まあ行く宛もねえしな。 もし、怪しかったら直ぐに逃げるぞ」
どの道、いつまでもショッピングモールに留まることはできない。こうしている今にも怨霊が現れるかもしれないのだ。
怪しくても、助けてくれると書いてあるのなら、すがる他なかった。一同は、あと一日だけ、怨霊からの攻撃に耐えることにした。
道を塞ぐように立ちはだかる、怨霊の兵士を何度も斬り捨てた。やがて一同は窮地を脱して、広いショッピングモールにまで辿り着いていた。
「はあ......まさに危機一髪だったな」
「虎白? どうして敵の攻撃を未然に防げるの?」
首をかしげる竹子は言った。虎白は、刀を鞘に収めると、長椅子に腰掛けた。
「それは、神業ってやつだな。 別にふざけているわけじゃねえ。 どうしてか、これは良く覚えているんだ。 『第六感』って技をな」
世に言う第六感とは、遠くの者の気配を感じ取ったり、会話している相手が、話す前に何を言おうとしているのか、感じ取れる力だ。
虎白が話した「神業」について、気になる竹子は、さらに詳しく話しを聞いた。
「故郷のことも覚えてねえ......なのに刀術やら第六感の力は、覚えてんだよなあ。 俺は、敵が次にどんな行動をするのか、大体の予測ができる」
そう話している虎白を見る一同は、驚いた様子だ。それもそのはず、あの死地を脱する時、虎白は何かに導かれているかのように、進路を変更して走っていた。
気まぐれのようにも見えた進路変更は、驚くことに敵兵が手薄になるほんの僅かな隙間を通っていった。
「連中は、俺達の道を塞ぐように、兵士の壁を何重にもして通れなくしてやがった。 だが、兵士を動かすってことは、隙間が微かにできるってことだ。 俺は、第六感で敵が次に隙間を空ける場所を予測して走ったんだ」
まさに神業というわけだ。竹子は虎白の言葉を聞いて、強い安心感と同時に、底知れぬ謎の深さも感じていた。
あの死地の中で、そこまで冷静な判断をし続けられるのだろうか。ひょっとして、この虎白という神は、以前にもこのような経験があったのではないか。だとしたら、この男は一体何者なのか。
「どうした竹子?」
「う、ううん。 なんでもないよ」
「俺が怖いのか?」
「ふふっ。 それも第六感?」
「いいや。 顔を見ればわかるよ」
長椅子から立ち上がった虎白は、竹子の頭を優しく撫でると、腕を組んで遠くの景色を眺めている。男らしく知的な雰囲気を放つ、虎白は竹子の恋心を刺激し続けていた。
当の虎白は、乙女心を刺激している自覚はなく、今後のことを深刻な表情で考えている。
「本当にこれからどうするか......永遠に追いかけ続けられるのかな......」
「なんじゃ弱きですな鞍馬どん」
新納が髭を触りながら笑っている。虎白の隣に立つと、その昔に霊界を守っていた皇国武士の話しを始めた。
「鞍馬どんの戦いを見て、思い出した。 狐のお侍は、みんな強かったとよ」
「連中と話したことは?」
「なかよ。 わしら人間が、気安う話しかけられる相手じゃなかったと」
「じゃあ連中がどこへ行ったのかもわからねえなあ......」
今後の見通しも立たず、怨霊から逃げ続ける日々に嫌気が差していた。その時だ。
夜空を見ている虎白の目に映るのは、金色に輝いた何かが、降ってきているのだ。そして金色の何かは、虎白らの目の前に落ちた。
ショッピングモールを飛び出して、落下地点へ向かった一同は、武器を手にして警戒している。
「俺が見てくるから、近づくな」
刀を抜いた虎白は、静かに一歩一歩近づいた。落下地点に立ち込める、金色の煙の中へ消えた虎白を皆が、心配そうに見つめている。
「おいみんな来てみろ!」
虎白の声が聞こえ、一同は煙の中へ飛び込んだ。そこで、虎白が何かを持って立っている。表情は目を見開いて、驚いた様子だ。
「金色の矢だ......それに巻きつけられているは、手紙だぜ......」
酷く困惑している虎白は、恐る恐る手紙を広げると、短い文章が書かれていた。
「明日の明け方に、迎えに行く。 それまで生き延びろ。 天王より」
虎白には、心当たりはなかった。一体誰が迎えに来るのだろうか。そして「天王」とは誰を意味しているのか。
「なんだこれ」
「虎白の仲間のお侍さん達じゃない?」
「天王ってのは俺の仲間なのか?」
「わ、わからないけれど、迎えに来てくれるんだから、敵じゃないよ!」
それは竹子にとって、暗闇に光る一筋の光だった。永遠に続くかと思われた怨霊からの追撃から、解放されるのだ。相手が誰だか知らずとも、この場から逃がしてくれるというのなら、是非すがりたいものだ。
得体の知れない手紙に困惑する虎白の、背中を押して迎えを待つべきだと話している。
「罠だったらどうするんだ?」
「だって考えてみてよ! 夜空から金色の閃光を放って落ちてきたんだよ? 『天王』と名乗っているのも、納得行くと思わない?」
「うーん......まあ行く宛もねえしな。 もし、怪しかったら直ぐに逃げるぞ」
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