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シーズン3 ツンドラ帝国遠征編
第3−13話 鉄の忠誠心は鉄の絆
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偉大な皇帝の息子として産まれたノバ。同じく、偉大な英雄の息子として産まれてきた我が子を思うバイロンは、幼きノバに対しても同情の念を抱えていた。
「我が子もノバ殿下も......産まれながらに重荷を背負っている......」
英雄バイロンは、忠誠を誓ったノバの父の役に立とうと奮闘の日々を送っていた。気がつけば、英雄などと呼ばれ、愛する我が子に重荷を背負わせてしまったことを悔やんでいた。
「はあ......」
「浮かない顔ではないか」
「へ、陛下!?」
「息子達はきっと立派に成長していくであろう。 父である我らが息子を信じなくてどうするのだ?」
ノバの父、バイロンにとっての皇帝はそう言った。若き日に出会った皇帝と英雄は、幾多の死戦を共にしてきた。そして偶然にも、息子も同い年として産まれている。
奇妙な因縁で結ばれるバイロンと皇帝は、互いを信頼し合っていた。そんなことから、ノバにも剣術の稽古や、帝王学を語っていることが多かった。
「いいですか殿下。 強い皇帝というのは、剣技だけでなく敵国に屈しない精神力も求められます」
「剣技はお前が学べアロン」
「はい殿下。 僕は、殿下の剣となりましょう」
「これこれ。 殿下も剣技を習うのですよ」
バイロンの息子アロンと共に育っていく日々。ノバの父は、皇帝としての職務に追われて、息子と会う暇がなかった。
それに比べてバイロンは、戦争でも起きない限り役目のない武官であった。やることは、ツンドラ軍の訓練ばかり。必然的に、ノバやアロンにも関わる機会が多かった。
もはやノバに愛情すら湧いているバイロンは、日々過酷な鍛錬を行わせて、父に負けない皇帝へ育てようとしていた。そんなある日、ノバの父が何者かに暗殺されたのだ。
「バイロン......」
「はっ殿下......いえ陛下」
「俺は決めたぞ。 人間を天上界から蹂躙するんだ......」
「......お父上がそれをお望みと?」
「知ったことか! 父上を殺したのは人間で間違いない! あの日、父上が殺された時に、見知らぬ人間が走り去っていくのを民が見ている!」
その日を堺に、ノバは人間への計り知れない憎悪を抱くようになった。父を殺害したのが、人間という証拠は一切ないのだが、ノバにとっては疑いようのない事実となってしまったのだ。
バイロンはそれでも、ノバの道を正しながら今日まで歩んできた。忠誠を誓った唯一の男の息子であるからだ。
「殿下は苦しまれた......あの方の心にある闇を取り除ける者はいないのかもしれない......」
「民を苦しめ、属国に鞭打つノバを許すわけにいきません」
竹子と対峙するバイロンは、ノバのことを思い浮かべていた。
やがて、大剣を力強く握りしめたツンドラの英雄は、溢れるほどの熱き思いを胸に竹子へと斬り掛かった。
「ツンドラは滅びぬ! ノバ陛下はこれからもっと飛躍するのだ! 邪魔をするな小娘があ!」
「居合い切りっ」
巨体を仰け反らせて、大剣を高々と突き上げている。小柄な竹子が容易に懐へ飛び込めそうなほど、隙だらけだ。即座に居合い切りを行おうと、一度鞘に収めた刀に手を当てている。
そして次の瞬間、バイロンの体重が前のめりになったことを確認して居合いを行った。
「その程度で斬れるほど甘くないぞ小娘!」
「はっ!?」
バイロンは、竹子の居合いを寸前の距離で避けると、大剣を振り抜いた。慌てて刀で受け止めようと身構えた。
間一髪の所で刀で受け止めはしたが、怪力無双のバイロンの力を受け流すことはできず、弾き飛んだ。
「姉上!」
「お前も死ね小娘!」
驚く笹子が竹子の方を見ている。そして振り返った頃には、バイロンの大剣が迫っていた。笹子は、受け流そうと構えている。
その時だ。
「ぐ、ぐふっ!?」
「はあ......居合いを交わすとはお見事......ですが、私も簡単に倒れるわけにいきませんので」
口から血を流している竹子が、飛び込んできた。バイロンの横腹に突き刺さる刀を、真上に斬り上げようとしている。
しかし、バイロンは刀を素手で掴むと、強引に引き抜いた。すかさず、笹子も腹部へ刀を突き刺した。
「ええい邪魔だ! 痛くも痒くもないぞ!」
バイロンは大剣を床に突き刺すと、素手で姉妹の刀を抜き取り、二人まとめて投げ飛ばしたのだ。
半獣族特有の強靭な肉体ということもあるが、バイロンには倒れるわけにいかない理由がある。竹子と笹子に時間を割いている間に、我が子同然のノバが虎白に討ち取られるかもしれないのだ。
「ぐ、ぐふっ......人間風情が吹き飛ばして死ななかったことに驚きもあるが......どうだっていい。 貴様なんぞに陛下を討たせるわけにいくまい......さあ行くぞ小娘!」
大剣を床から抜き取ると、バイロンはもの凄い剣幕のまま襲いかかってきた。竹子と笹子は、倒れたままだ。
「我が子もノバ殿下も......産まれながらに重荷を背負っている......」
英雄バイロンは、忠誠を誓ったノバの父の役に立とうと奮闘の日々を送っていた。気がつけば、英雄などと呼ばれ、愛する我が子に重荷を背負わせてしまったことを悔やんでいた。
「はあ......」
「浮かない顔ではないか」
「へ、陛下!?」
「息子達はきっと立派に成長していくであろう。 父である我らが息子を信じなくてどうするのだ?」
ノバの父、バイロンにとっての皇帝はそう言った。若き日に出会った皇帝と英雄は、幾多の死戦を共にしてきた。そして偶然にも、息子も同い年として産まれている。
奇妙な因縁で結ばれるバイロンと皇帝は、互いを信頼し合っていた。そんなことから、ノバにも剣術の稽古や、帝王学を語っていることが多かった。
「いいですか殿下。 強い皇帝というのは、剣技だけでなく敵国に屈しない精神力も求められます」
「剣技はお前が学べアロン」
「はい殿下。 僕は、殿下の剣となりましょう」
「これこれ。 殿下も剣技を習うのですよ」
バイロンの息子アロンと共に育っていく日々。ノバの父は、皇帝としての職務に追われて、息子と会う暇がなかった。
それに比べてバイロンは、戦争でも起きない限り役目のない武官であった。やることは、ツンドラ軍の訓練ばかり。必然的に、ノバやアロンにも関わる機会が多かった。
もはやノバに愛情すら湧いているバイロンは、日々過酷な鍛錬を行わせて、父に負けない皇帝へ育てようとしていた。そんなある日、ノバの父が何者かに暗殺されたのだ。
「バイロン......」
「はっ殿下......いえ陛下」
「俺は決めたぞ。 人間を天上界から蹂躙するんだ......」
「......お父上がそれをお望みと?」
「知ったことか! 父上を殺したのは人間で間違いない! あの日、父上が殺された時に、見知らぬ人間が走り去っていくのを民が見ている!」
その日を堺に、ノバは人間への計り知れない憎悪を抱くようになった。父を殺害したのが、人間という証拠は一切ないのだが、ノバにとっては疑いようのない事実となってしまったのだ。
バイロンはそれでも、ノバの道を正しながら今日まで歩んできた。忠誠を誓った唯一の男の息子であるからだ。
「殿下は苦しまれた......あの方の心にある闇を取り除ける者はいないのかもしれない......」
「民を苦しめ、属国に鞭打つノバを許すわけにいきません」
竹子と対峙するバイロンは、ノバのことを思い浮かべていた。
やがて、大剣を力強く握りしめたツンドラの英雄は、溢れるほどの熱き思いを胸に竹子へと斬り掛かった。
「ツンドラは滅びぬ! ノバ陛下はこれからもっと飛躍するのだ! 邪魔をするな小娘があ!」
「居合い切りっ」
巨体を仰け反らせて、大剣を高々と突き上げている。小柄な竹子が容易に懐へ飛び込めそうなほど、隙だらけだ。即座に居合い切りを行おうと、一度鞘に収めた刀に手を当てている。
そして次の瞬間、バイロンの体重が前のめりになったことを確認して居合いを行った。
「その程度で斬れるほど甘くないぞ小娘!」
「はっ!?」
バイロンは、竹子の居合いを寸前の距離で避けると、大剣を振り抜いた。慌てて刀で受け止めようと身構えた。
間一髪の所で刀で受け止めはしたが、怪力無双のバイロンの力を受け流すことはできず、弾き飛んだ。
「姉上!」
「お前も死ね小娘!」
驚く笹子が竹子の方を見ている。そして振り返った頃には、バイロンの大剣が迫っていた。笹子は、受け流そうと構えている。
その時だ。
「ぐ、ぐふっ!?」
「はあ......居合いを交わすとはお見事......ですが、私も簡単に倒れるわけにいきませんので」
口から血を流している竹子が、飛び込んできた。バイロンの横腹に突き刺さる刀を、真上に斬り上げようとしている。
しかし、バイロンは刀を素手で掴むと、強引に引き抜いた。すかさず、笹子も腹部へ刀を突き刺した。
「ええい邪魔だ! 痛くも痒くもないぞ!」
バイロンは大剣を床に突き刺すと、素手で姉妹の刀を抜き取り、二人まとめて投げ飛ばしたのだ。
半獣族特有の強靭な肉体ということもあるが、バイロンには倒れるわけにいかない理由がある。竹子と笹子に時間を割いている間に、我が子同然のノバが虎白に討ち取られるかもしれないのだ。
「ぐ、ぐふっ......人間風情が吹き飛ばして死ななかったことに驚きもあるが......どうだっていい。 貴様なんぞに陛下を討たせるわけにいくまい......さあ行くぞ小娘!」
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