天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき

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第6ー16話 武士と騎士の猛攻

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 偉業とは何かを諦めずに成し遂げた者だけが、掴む最上位の言葉だろう。


だがその道は焼けた鉄を裸足で歩くが如き険しい道だ。


 多数の者から不可能、無謀、馬鹿者などと揶揄やゆされても歩く覚悟を持った者にしか辿り着く事のできない場所こそが偉業だ。


 戦争のない天上界とは、あまりに壮大で実現の可能性はほとんどないだろうと万人が思う。


虎白が掲げている夢とはそれほどまでに、現実的ではない事を言っているのだ。


 目の前に迫るティーノム帝国軍や、今だに姿すら見せていないルーシー大公国軍の者らにこの夢の話しをすればどうなるのだろうか。


そんな事を頭の中で考えながら鎧の帯に差してある名刀、時斬りと間斬りを抜いた。


「できる事なら俺の夢を聞いてもらいたいもんだ」
「ええ同感だ。 しかし現実は対話の予知もない・・・」
「まあどうせ馬鹿にされるだけか。 だったら叩きのめす他ねえな」



 アルデンが白馬にまたがると、虎白も神馬にまたがった。


背後に控える皇国武士らは、この人間の争いに身を投じる時を待っている。


皇帝が認めた人間が掲げる夢は主の夢である。


 そう考えると、武士達は兜の緒を締めて開戦に供えた。


 一方でティーノム帝国軍はなおも優雅な音色を奏でながら、遂には双方の兵士の顔が見える距離にまで迫った。


緊迫した重苦しい空気の中、一人の貴族が声を響かせた。



「第一列!! 構え、狙え!! 撃てー!!!!」



 皮肉なほどに美しく並んでいる貴族の軍隊は、横一列に並んだ歩兵らが一斉に銃撃を始めた。


視界を遮るほどの白煙が立ち込める中、平原はしばらくの静寂を保った。


 白煙が消えるよりも前に射撃隊の二列目が前へ出てきた。


やがて白煙が消え、二列目が射撃を始めようとした時だ。


指揮を執る貴族の、自信に満ち溢れた表情が一瞬にして曇った。


 白煙が消え視界が開けば、大勢倒れるスタシア兵の姿が見えるだろうと心待ちにしていた貴族は眼前で弾丸を完璧に弾き返した皇国武士が横一列に立っている姿を見た。


これにはスタシア兵からもざわめきが生まれた。


 そして彼らの真ん中に立っているのは、神族の皇帝である。


「悪いな。 こっちにも譲れねえもんがあるんだよ。 って事で蹴散らすから覚悟しろ」



 神馬にまたがったまま、不敵な笑みを浮かべる虎白が貴族の視界に入った瞬間。


皇国武士が横一列に並んでいる隙間から湧き出す様に飛び出したのは、赤き王と配下の騎士達だ。


 射撃を無力化された衝撃を隠しきれない貴族は、第二列目に命令を出す事を忘れている。


すると別の貴族が騎兵隊を率いて颯爽と現れたではないか。



「射撃はもういい。 歩兵共、我ら貴族騎兵についてこい」



 銀色の鎧に身を包んでいる彼らは、貴族のみで構成されている騎馬隊だ。


幼少期から馬術と剣術を叩き込まれている彼らはスタシア軍と激突した。


穏やかな平原からは優雅な笛の音色が消え、たちまち喧騒と激しい馬蹄が響き渡る戦場と化した。


 人間達の争いを後方で見ている虎白はしばらくの間隔を開けて、乱戦へと加わった。


「各々!! スタシア兵を援護しろ」



 御意と返す武士達は、凄まじい速さで乱戦へ飛び込むと次々にティーノム帝国兵を蹴散らし始めた。


模擬演習用の衝撃信管オイルを装備していると言えど、生命に関わるほど激しい戦闘がこうして開幕したのだ。


 スタシア、ティーノム開戦の一報は北側領土の全域にあっという間に広まり、多方面で囲んでいる連合軍も動き始めた。


迎え撃つはアルデンの信頼厚い四聖剣と、誇り高き騎士達。


 各方面をたったの五千名で防御するスタシアに対し、迫りくる連合軍は十万とも二十万とも言われている。


次々に蹴散らしている虎白と皇国武士らの、鋭い瞳にも平原が見えなくなるほどのティーノム帝国軍の姿が写っていた。


 大激戦が展開される戦場で、虎白は周囲を見ながら戦っていた。



「兵力で負けているんだ。 包囲されちまうな」
「殿!! 下知を!!」
「さらに兵を百に分けて五箇所に防衛線を作れ、包囲されるなよ」
「御意に!!」



 広大な平原で平行線の様に激突したスタシアとティーノムだが、兵力に勝る貴族の軍隊はやがて円形に包囲してくるのは明白。


虎白は配下の武士らを左右の端から、等間隔に配備してスタシア軍を援護させた。


 皇国武士らの強さは先のアーム戦役で証明した。


一柱で十人、二十人の人間を容易に倒せる彼らが展開されれば、包囲されても簡単には崩されないというわけだ。


散らばっていった家来達を見届けた虎白は、さらに周囲を見渡した。



「指揮している貴族を優先的に倒せ」
「かしこまった」
「そこの茶色い馬に乗ってるやつからだ」
「御意!!」



 指揮官を倒す事によって、指揮系統を麻痺させようとしている。


 第六感で攻撃の気配を感じ取り、第七感によって攻撃速度を早めている皇国武士の強さは、ティーノム帝国軍に戦慄を与えた。


触れる事もできない神族の武士を前に貴族の指揮官に新たな指示を求めるが、落馬して気絶していく。


 歩兵共の視界に写るのは、優雅に振る舞う指揮官ではなく常軌を逸した強さの皇国武士の姿だ。



「もうすぐ崩れるぞ!! アルデンは無事か!?」



 たったの五千名で数万のティーノム帝国を圧倒しているが、虎白らが加わっているからこその善戦か。


この状況で総大将のアルデンが倒れれば、敗北は必至というわけだ。


 心配した様子で赤き王を探すと、ティーノム帝国兵が空中に吹き飛んでいるではないか。


虎白の鋭い瞳には躍動する赤き王が、鮮やかな髪の毛をなびかせていた。


 アルデンは一刀で敵を倒すと、瞬きほどの速さで次々に斬り進んでいるのだ。



「に、逃げろー!!!!」



 開戦から僅か数分。


貴族の軍隊は背中を見せて逃げ始めたのだった。
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