天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき

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シーズン

第10ー12話 原初の大木

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鞍馬王白と確かに大木は言った。


それはこの場にいる鞍馬家と安良木家の皆が聞いていた。


驚きを隠せない天白は「父上と申すのか?」と大木に尋ねると皇国に吹く暖かい風が大木を揺らして葉が音を立てている。


まるで笑っているかの様にさらさらと音を立てる大木は「愛おしい子供達よ」と話した。




「良いか息子達よ。 我ら第2世代の神族はそなたら第3世代の子供達に未来を託したのだ。 我らが暮らした星は戦いの果てに炎の星となった。 ノアという人間に力を与えた我らは方舟で別の星へ逃したのだ。」




それは石板にも書かれていた内容だった。


方舟や星などという単語はたびたび桜火が発見していたがその意味はまるでわからなかった。


皇国が神聖なものとしていた原初の大木が話す内容は、長年疑問に思っていた石板の内容そのものだった。


虎白が天白の隣に立つと「じゃあ俺らは地球の前に暮らしていた星があったのか?」と問いかけると「まだ幼き赤子であったがな」と返した。





「方舟で幾多の星へ旅立った我が子達は未来を築き上げたのだな。 中でも一番近い星である希望の星へ逃げたお前達は今日こうして生きておるわけだな。」




王白が話す「希望の星」こそが地球だった。


更に続ける王白は希望の星へ旅立った我が子達が一番多いとも話していた。


そしてここで王白は驚く事を話した。




「ガイアには会ったか?」
「なんだって!? 知っているのか?」
「無論だ。 ガイアは我らと同じ第2世代の神族だ。 それなのにやつは子供と共に希望の星へと逃げたのだ。」



ギリシア神族の始祖とも言えるガイアには虎白も一度接触していた。


それは天上大内乱の時の事だった。


ゼウスを見限って自身の側につけと虎白を勧誘していたガイアは「世界の秘密を教える」と話していた。


だがガイアはあと一歩の所でゼウス達に討ち取られてしまった。


そのガイアこそが王白と同世代の神族であり、彼女が話せなかった世界の秘密とはまさにこの事だった。


気がつけば大木の前に座り込んでいる虎白は「もっと聞かせてくれ」と話した。




「ガイアの一族は知っているはずだ。 我らの存在も方舟の事もな。」
「じゃあゼウスは知っていたのか・・・」




そうなるとゼウスが必死にガイアを口封じのために殺した事にも納得がいく。


虎白に知られてはならない過去があまりに多かったというわけだ。


万が一にガイアが第2世代の神族の話を虎白に聞かせれば、長年隠し通してきた大陸大戦の事も知られてしまう。


それを恐れたゼウスはガイアを抹殺した。


虎白は原初の大木の前に何時間も座っていた。


兄達が屋敷へ帰っても疑問を父にぶつけていた。



「じゃあ親父・・・俺達は方舟で地球に降りたんだな。」
「左様。 オーディンという若造も共にいたか?」
「ああ。 俺の大切な仲間だ。」



やがて夜になりツクヨミが能力を出している皇国の夜空で原初の大木に宿る父とその下で座る子を照らし始めた。


自身らが方舟で地球に降り立った事を理解した虎白は次に気になった事を話した。


「親父がこの木に宿っているのもそうだけどよお」と耳をかきながら話す虎白は大木に手を当てると静かに目をつぶっていた。




「どうして親父はこの木にいるんだ? それに俺の嫁にも宿っている戦神がいる。」



長年疑問であった。


魔呂はどうして戦神なのか。


それだけではない。


優子の大切な新納は遺品の銃の中に宿っている。


アルテミシアはレミテリシアの双剣に。


呂布は呂玲の方天画戟に。


これはどういった影響でそうなるのか。


問いかける虎白に対して大木は静かに夜風に打たれていた。


静寂の中で音を立てる大木は「それは」と小さい声で話した。



「選んだのだ。 その者が。」
「天上界には行かずにって事か?」
「わしは天上界という場所を知らん。 ここは浄土という世界だ。」
「オーディンは昔こう言ったよ。 世界は複数あるって。」



王白は木に宿りながらも別の世界で生きていると話した。


天上界、冥府、下界だけではなく他にも多くの世界が存在しているという事だ。


だが世界を行き来する事はできず、強力な第六感を持つ者だけが万物に宿る事ができた。


そうなってくると賢い虎白には何が起きているのか理解できてきた。




「なるほどな。 でも魔呂やベルカは天上界じゃなくて人間に宿っているのはどうしてだ?」
「その者は体を気に入っているからだろう。」
「天上界で魂は彷徨っているのかな?」




大陸大戦で戦死した者の魂は今も天上界を彷徨っていると考えた虎白は落ち着いて考え始めた。


立ち上がると「ありがとう親父」と大木を手で優しく触るとその場を離れた。


白陸で待つ妻の元へ疲れた様子で歩いて帰ると着物を脱いで風呂に入っていた。


湯船に浸かる虎白はじっと考え込んでいた。


すると風呂の扉が開いて全裸の恋華が「一緒にいい?」と話すと体を色っぽく洗い始めた。




「それで? 原初の大木はなんて?」
「非常に難しい話をしていたよ。」




体を洗い終えた恋華も湯船に入ると虎白の肩に頭をもたれかけて目をつぶっていた。


「謎は解けたの?」と話すと「まあ」と小さく返した。


だがまだ虎白には理解できない事もたくさんあった。




「魔呂はどうしてあんな子供に宿ったのかな。 それに大陸大戦で戦死した俺達の友はどこにいるんだ。」
「ベリアル天使長はジアソーレに宿ったのかしら?」
「そう考えて間違いないな。」



大陸大戦で戦死したベリアルは自身が宿りやすい体を探していたのか。


復讐心に満ち溢れるジアソーレはうってつけだったという事か。


険しい表情をして「どうしてだよ」と話すと恋華が頬にキスをした。


「大丈夫よ」と話す恋華は落ち着いた表情で湯船に浸かっていた。


小柄だが美しい体にお湯をかけて足を伸ばす美脚を眺める虎白は「終わらせないと」と静かに話した。




「ベリアルが宿っているなら話しかければ聞こえるかな?」
「スカーレットの場合ならそうね。 ベルカには聞こえているね。」
「だが問題はベリアルを説得するより前に俺がジアソーレに殺される可能性があまりにも高いって事だな・・・」




虎白が王白から聞いた内容はあまりに壮大で理解する事に時間がかかる内容だったが、今の虎白に必要な情報は十分だった。


ジアソーレの中にはベリアルが宿っている。


神族ではない人間のジアソーレが第八感を操る事が何よりもの証拠であり、その第八感はベリアルが有していた能力だ。


虎白はベリアルを説得してジアソーレの体から出てもらおうと考えていた。


だがそのためには会うしかないのだ。



「行くか・・・」
「もう竹子達には出陣させないんでしょ?」
「当たり前だ。 俺らが始めた事なんだ。 あいつらは十分やってくれた。 後は俺らが終わらせる。 それにもう母親なんだからよ。」




湯船の中で伸びをしている恋華の色っぽい体を眺める虎白は恋華を後ろから抱きしめると頬にキスをして「愛している」と話した。


恋華は虎白の腕を掴んで「同じくよ」と返したが表情は暗かった。


大きく息を吸った恋華は「あの子達には父親も必要よ」と声を震わせて話した。




「あなた死ぬ気でしょ。」
「覚悟はしている・・・いつだってそうだった・・・」
「今回の敵は今までで一番強いのよ。 ジアソーレだけじゃないわ。 ベリアルの能力は周囲の兵士にも影響を及ぼすの。 真の不死隊が守っているわ。」




ベリアルは大陸大戦の際に部下の天使達をも能力下に入れていた。


攻撃を受ければ相手は倍の威力を受けていた。


かの有名な不死隊を仮に皇国武士が斬ればその痛みは倍になって返ってくるというわけだ。


高い神通力を擁する皇国武士でも生きていられるかわからない。


だが恋華は次に愛する夫が何を言うのかは長年の付き合いでわかっていた。


こういった場合必ず夫は「俺だけで行く」と話すのだ。


虎白が口を開くよりも前に「あなただけには行かせない」と先に言い切った。




「なんでわかったんだよ。」
「何年一緒にいると思っているの?」
「はあ・・・」


夫婦は風呂からでると夜風に当たりながら晩酌を始めた。


栄華を極める白陸の夜景を見ながら黄昏れる虎白は「そりゃ死にたくねえよ」と小さい声で話していた。


だがジアソーレの復讐心とベリアルの能力は相性が良すぎたのだ。


皇国の精鋭雪花軍団でさえも歯が立たなかった。


何人かの不死隊は倒せたが、雪花軍団の負傷者の数も多かった。


万が一に強引に戦闘を行えば多大な犠牲が出ると判断した虎白はいつになく慎重だった。


同時にジアソーレもメテオ海戦から長年、虎白の戦術を研究している分慎重であったのだ。


不気味な膠着状態が続く天上界と冥府ではいつ戦闘になるのかわからないといった緊迫した空気が続いていた。


皇国軍は桜火の大和領に駐屯して万全の状態だ。


虎白の一声でいつでも進撃できる。


だがその虎白が未だに動こうとしていなかった。


盃を片手に虎白は「まあ覚悟は持っておくべきだ」とつぶやいた。




「ただ問題は他にも死ぬやつが出る事にある・・・死んだ俺の部下は到達点に行くのか? それとも親父が言っていた別の世界に行くのか? それがわからない・・・」




天上界で命を落とした者が到達点に行く事は経験を持って理解していた。


だが神族が死ねばどこへ行くのか。


虎白は父の王白が到達点にいない事から神族は到達点へと行けないのではと考えていたのだ。


大切な皇国武士や高天原の皆々が戦死する事を考えると、強行的に冥府侵攻はできなかった。




「大勢死なせてきた・・・到達点の存在を知った時には安心した。 俺の白陸兵は安らぎと共にある。 だが神族はわからねえ・・・じゃあ俺が最初に行ってみないとな。」
「ヴァルハラは? あなたの愛したフレイヤが暮らすヴァルハラがあるんだから。」



大陸大戦で共に戦った北欧神族のフレイヤ達は信じていたヴァルハラに辿り着いていた。


なら神族も必ず行く場所があるはずだと話す恋華の言葉を聞いた虎白は「確かにな」と小さい声で返した。


すると立ち上がって寝室へと歩き始めた。


そして横になると恋華を抱いて眠った。


やがてアマテラスの朝焼けが虎白を目覚めさせると寝室を出て竹子が振る舞う朝食を堪能すると城を出て高天原へ向かおうと歩き始めていた。


すると背後から名を呼ばれて振り返ると皇国武士に護衛されるペデスが駆け寄ってきた。




「おはようございます叔父上!!」
「朝飯食ったか?」
「いただきました。」



爽やかな笑顔を見せる若者は虎白と朝の散歩を楽しんでいる。


栄華を極める白陸の帝都を物珍しそうに見ている若き冥王は「叔父上」と呼び止めると視線の先には子供と手を繋いであるく親子の臣民の姿があった。


「白斗とはあの様な事がありましたか?」と尋ねるペデスの表情はあまりにも寂しそうであった。


肩を組んだ虎白は「一度もねえ」と笑みを浮かべながら話していた。




「僕と同じだ・・・」
「そうだ。 白斗のやつを叩き起こしてキャッチボールでもやるか!!」
「本当ですか!? お忙しいのでは?」
「少しぐらい構わねえよ。 俺も息子と長年やりたかったんだよ。」




すると虎白は宮衛党に乗り込むほどの勢いで入っていくと「白斗はいるか?」と衛兵に話した。


驚く衛兵は慌てて白斗の元へ案内した。


「起きろ白斗!!」と声を上げると扉を開けて「起きてますよ」と目をこすりながら出てくると珍しく機嫌の良さそうな虎白を見て不思議そうにしていた。


「キャッチボールやるぞ」と話す虎白を見て目を細める白斗は「は、はあ」と力のない返事をした。




「長年やりたかったんだ。 少しだけだがやろうぜ。」
「ま、まあいいですよ。 でもどうしていきなり。」
「僕が頼んだんだ。」
「お前かあ・・・」


乗り気でグローブとボールを持つ虎白とペデスとは異なり白斗は何をしているのだこいつらといった表情をしていた。


だがそんな事お構いなしにペデスにボールを投げる虎白は楽しそうな表情をしていた。


すると白斗へボールを投げたペデスも少年の様な笑顔を見せていた。


ペデスからのボールをグローブに収めた白斗は「何をしているのですか俺達は?」と虎白を見ていた。





「何ってお前、キャッチ・・・」
「そんな事はわかっています!! ですから朝からどうしてこんな事をしなくてはならないんですか!?」
「僕が頼んだんだよ!! いいじゃないかやろうよ!!」




だが白斗は衛兵にグローブを手渡すと「俺は政務がありますから」とその場から去っていった。


首をかしげる虎白はペデスに「続きやるか」と笑っていた。


しかし浮かない表情となったペデスは「止めておきましょう」と近づいてきた。




「叔父上すいませんでした忙しいのに・・・」
「白斗は空気読めねえなあ。 あいつ早く冥府を叩きに行きたいんだろ。」
「確かに僕がここにいるのもおかしいか・・・」



ただ親子の時間を味わってみたかった。


ペデスは本心を押し殺して皇国武士に連れられて居住地へと戻っていった。


その場に残って座り込む虎白はやがて寝そべって大空を見ていた。


大きく深呼吸をした虎白は「急かされてんな」と白斗の様子を見てつぶやいた。


すると寝転ぶ虎白の隣に来て共に寝転ぶ黄緑色の女が笑っていた。




「仕方ないなーメリッサがパパとキャッチボールやるかあ。」
「メリッサか!! パパとやってくれるのか?」
「優しいだろお!! ははは!!!!」



満面の笑みを浮かべるメリッサが衛兵からグローブを受け取ると虎白とキャッチボールを始めた。


細身のメリッサだったが随分とノビのあるボールを投げてくるではないか。


「おお」と驚く虎白はとても嬉しそうに娘との時間を楽しんでいた。


30分ほど楽しむとメリッサが近づいてきて「お腹空いたよパパ」と甘えてきた。




「昼飯でも食いに行くか。」
「おーいいねえ。 メリッサお寿司食べたいなあ。」



親友の最愛の娘にして今では虎白にとっても最愛の娘となったメリッサは宮衛党の軍総司令となっていた。


軍事が苦手なメルキータの代わりにウランヌと軍隊を指揮するメリッサは今では白陸で大物だった。


噂に聞く賢いメリッサの評判とは異なり、虎白の前で嬉しそうに寿司を食べるのはあどけない少女だ。



「パパ冥府と戦いに行くの?」
「そうだな。 メリッサ達を守らないと。」
「でも相手強いんでしょ?」



心配そうに話すメリッサの頭をなでると「大丈夫」と返した。


寿司を食べて満足げなメリッサと共に店を出て宮衛党へ向かっていると空から九龍が舞い降りてきた。


巨大な龍は地上へ近づくと半獣の見た目となり虎白の前に着地した。


メリッサは九龍に丁寧に挨拶すると青い髪の毛や独特の瞳を物珍しそうに見ていた。



「メリッサ殿下。」
「殿下ー? ダメだよお白斗怒るよお・・・」



九龍や他の神族達は活躍を続けるメリッサの存在を虎白の後継者と見ている者も多かった。


何よりメリッサは軍事だけではなく内政面でも卓越した才能を魅せていた。


政治担当大臣となった猫の半獣族の美桜達からも厚い信頼を得ていたメリッサは、もはや宮衛党だけではなく白陸軍からも一目置かれていた。


それに比べ白斗は白陸軍との演習でも将軍に小言を言われては口論をする始末だった。


当然、気がつけば「次の後継者はメリッサ様だ」という声が出てきていた。


眼の前にいる九龍もそう思っていた。

目を細める虎白は「九龍行くぞ」と龍の見た目に戻った九龍の背中に乗るとメリッサを見て優しく微笑んでいた。




「またキャッチボールやろうな!!」
「いいよお。 お寿司も行こうね!!」



愛する娘の満点の笑顔を見届けた虎白は九龍と共に大空へ飛び立つと高天原を目指した。


到着すると既に幼馴染の神族達が集まっていた。


話の内容は既にわかっている。


最後の戦いに出る時だ。


ベリアルが宿っていると知った今、ジアソーレの元まで行って堕天使となったベリアルを説得する他なかった。


虎白は九龍の背中から降りると「みんな」と声を発した。




「やろう。 俺達の戦いを終わらせよう。 人間のためにな。」



静かにうなずいた一同は鎧兜を身に着けて桜火の大和領へ向けて出発したのだった。


戦争のない天上界へ。


始めた戦いの終結へ向けて。
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