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2度目の新歓パーティーの願い side J
しおりを挟む2年生に進級し、彼女は正式に生徒会役員となった。春休み会えないほど忙しかったのは一時的なものだったみたいで、今まで通りクラスの友人達と過ごしている。僕とも今まで通り。
同じ役員になったエイデンとの仲を気にしてたけど、大丈夫みたいだ。むしろ彼女はエイデンに素っ気無い。
そう言えば、新入生が入ることで、女の子達からの視線をまた感じるようになった。
視線に気づいてないよう振る舞いながら学内を歩いていると、彼女が友人達といるのを見つけた。
やっぱり彼女が一番可愛いし綺麗だ。
それからも何度かデートにも誘った。以前のように理由を付けなくても受けてくれる。でももっと距離を縮めたい。
そしてあっという間に一年が経ち、3年生になる春が近づいてきた。
彼女はまた一年前のように忙しくなるのかと心配したけど、第三王子達の代わりに王宮から来ている人のお陰で、順調に準備ができてると言っていた。
とても頼りになる人みたいで、「私はまだまだ勉強しないといけないわ」と自嘲気味に言っていた。十分頑張ってるのに……。
ある日、学園をひとりで歩いていると女子生徒に声を掛けられた。そのまま人目を外れて中庭に出る。
緊張した面持ちの女子生徒と向き合う。ベージュの髪の小柄な女の子は、子爵令嬢だそうだ。僕も簡単に名乗る。
「あの、ずいぶん遅くなってしまったのですが、これ、あの時のお礼です」
僅かに震えて差し出された手には、青い糸で刺繍されたハンカチが乗っている。あの時……、僕は少しだけ考えた。
「新歓パーティーの時の……」
記憶を辿って呟くと、子爵令嬢はぱっと顔を上げた。
「そうです!覚えていてくださったんですね!あの時とても嬉しくて、すぐにお礼をと思っていたのですが、」
そこまで言うと暗い顔になった。
「ネオルト様にはノーステリア様がいらっしゃると知って、私のような者が近づくことは良くないと思いました。それでもお姿を目で追ってしまって……。それで、もしかしたら、ノーステリア様とはご友人なのではと感じることもあって……」
上目遣いで僕を見上げてくる。
「もしお相手がお決まりでないなら、次の新歓パーティーで私をエスコートしてくださいませんか」
好意を持ってもらえるのは嬉しい。けどこういう風に気持ちを求められると困ってしまう。どんな言い方をしても面倒になりそうだから。
「ありがとう。……けどごめんね。僕は彼女以外をエスコートするつもりは無いんだ」
僕を見つめたままの淡い茶色の目から涙が溢れ出す。
「本当はっ、わかってたんです。けど、諦められないなら、一度、勇気を出してみようと思ってっ」
とぎれとぎれに言いながらも涙は次々と溢れてくる。
僕はポケットから出した白いハンカチを子爵令嬢に渡し、「返さなくていいよ」と告げてその場を離れた。
春休みに彼女をデートに誘った。
隣を歩きながら「初めての春休みだわ」って戯けている。可愛い。
ふと子爵令嬢からの言葉を思い出した。『ノーステリア様とはご友人』……僕たちはそう見えるってことだよね。思わずイヤな気分になる。
「何かあったの?」
そんな様子に気づいてくれた彼女が聞いてくる。
「……1年生の子爵令嬢に新歓パーティーのエスコートを頼まれたんだ」
彼女の反応を知りたくなって、言ってしまった。眉を寄せて心配そうにしている。嫉妬はしてないみたいだ。
「勿論断ったんだけど、泣かれてしまって申し訳ない気分になったよ」
本当に、あんなに手放しで泣かれたら困るよ……。
「勇気を出したのに断られるのは、悲しいですね……。けど、断る方もツライですよね」
彼女は悲しそうに俯いた。合わせた手を握りしめている。僕だけじゃなく、顔も知らない子爵令嬢のために、本当に優しい人だ。
「そうだね……。だけど、気持ちに応えるつもりが無いのに申し出を受けるわけにはいかないよ。……僕にはずっとエスコートしたい女性がいるんだし」
途端に彼女がすんと真顔になった。
え!?これはどういう表情???彼女の感情がわからなくて内心オロオロしていると、すぐにいつもの笑顔に戻った。
彼女の瞳がいつも通り優しくて、安心した。言ってしまおう。
「ずっと、君をエスコートをしたいと思ってたんだ。けど君には生徒会の役目があるよね。……だからせめて、君にドレスを贈らせて」
今度の表情はわかる。驚いてる。
「……受け取ってくれる?」
きっと彼女は受け取ってくれる。確信はあるけどやっぱり不安は拭えない。じっと彼女を見つめて答えを待つ。
「喜んで」
彼女は戸惑った様子だったけど、はっきりとこたえてくれた。やった!
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