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突然の訪問と思わぬ言葉 side A
しおりを挟む冬休みも終わり、卒業までの時間は残り少ない……。
友人達が卒業後の行き先を次々と決めていく中、今日は大学の入学選考試験の結果のでる日だ。2年前の兄のときは、昼前には知らせが届いたのよね。今頃彼のところにも届いてるのかしら……。
何となく落ち着かない気持ちでいると、フットマンが部屋に入ってきた。
「お嬢様、ネオルト男爵家の使いの者が来ております。後ほどご子息が訪問されたいそうです」
彼の家から先触れなんて初めてだわ。
「わかりましたと伝えてください」
隣に立っていたマリと目を合わせる。マリはにやりとメイドらしからぬ顔をした。
「今日のドレスはこれですよ!場所も温室にしましたし、季節の先取りですよ」
マリは春を感じさせるピンク色のドレスを手に力説してくる。他のは持ってくる気もないみたいだ。大人しく任せることにした。
温室に向かうと、日の光が差すなか色とりどりの花に囲まれて、彼がゆったりと座っていた。髪型がいつもと違う。右サイドだけ細かく編み込まれててキリリとして見える。
私に気づき微笑む姿は、金の髪も青空色の瞳もキラキラ輝いていて、なんかもう眩しかった。
「ふぅう~ぅ」
私の斜め後を歩くマリが、私にしか聞こえないくらいで変な声を出す。ウルサイ。
「おまたせしました」
今日はどういった用件なのだろう?きっと試験結果のことよね。どうなんだろう……。
私が腰を下ろし、お茶が用意されるのを待ってから、彼が話しだした。
「突然来てしまってごめんね。君には早く伝えたくて……。大学、進学が決まったんだ」
いきなり本題がきた。意外にもあっさりした報告に驚いてしまった。けど、よかった!
「おめでとうございます!やったわ!よかった。本当におめでとう!」
勢いにまかせてお祝いの言葉を言ってしまった。もう少し気の利いた言い方だってあるのに……。
「ありがとう」
なのに彼はとても嬉しそうに首を傾けて笑ってくれた。よかった。お祝いの気持ちはちゃんと伝わったみたい。
私がのんびりそう思っていると、
「僕と婚約してくれませんか?」
予想外の言葉が彼から発せられた。
控えているマリが「ひょっ?」とまた変な声を出した。私はどう反応してよいかわからず動きを止めてしまった。
彼は言葉を続ける。
「僕は大学でまだ学ぶことがあるし、君は王宮事務官としての仕事が始まる。しばらくはそう言ったことは考えにくいと思う。けど、学園を卒業した後に、君に会えなくなるのは嫌だ。だから、君と婚約したい」
彼は立ち上がり、目の前に跪いて右手を差し出す。
「この先の時間をまだ君と一緒にいたいと思う。だから、この手を取ってください」
どうしよう。確かにこのまま会えなくなるのは嫌かもしれない。彼が大学卒業まで少なくとも3年、その間に私も仕事が少しは落ち着くのかもしれない。けど、私は将来の男爵夫人としてちゃんとできるのだろうか?
考えながら彼を見つめる。緊張のためか差し出された指先がわずかに震えているように見えた。
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「では……、よろしくお願いします」
彼の手のひらにそっと手を乗せる。彼はさらに左手を添えて、私の手を両手で包み込んだ。彼の手は緊張からか、とても冷たかった。
「ありがとう」
彼は少しだけ泣きそうな顔で微笑んだ。
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