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家族への報告と初めてのエスコート side J
しおりを挟む夕食時、珍しく両親が揃っていたので、まずは大学の入学選考試験の合格を報告した。
「よくやった。これからも励むように」と父が言い、母は満足そうに微笑んでいる。
「それから、アリシア・ノーステリア伯爵令嬢に結婚を申し込みました」
敢えて普通のことのようにさらりと言う。父は一瞬だけ動きを止めて「そうか」と短く言ったけど、母はそうはいかなかった。
「結婚はいいのだけど、大学はどうするの。これから忙しくなるのよ」
「彼女は王宮事務官になりますので、結婚は3年は先になると思います」
「3年も!?貴方、気が変わったらどうするの」
「……ありえません」
「そうかしら?」
母が鼻で笑うようにしてチラリと父を見た。父は何も言わない。僕もあえて反論せずに食事を進めた。
「まぁ、相手は悪くはないし、政略的な意味合いもないのだから、気軽に婚約すればいいんじゃないかしら」
気軽にするものではないと思うんだけど……。
その後父と話して、婚約の方向で話を進めてくれることになった。
貴族同士の婚姻は双方の領地を行き来するのが通例だけど、相手の領地が離れている上、僕達も卒業と進学、就職と多忙のため、とりあえず王都で両家の顔合わせをすることになった。
2年前兄君が婚約したとき、彼女もずいぶんと疲れ切っていたし、この方がいいだろう。
婚約するのだから、学園でもこれまで以上に彼女といられるかと期待したけど、そんなことはなかった。
卒業生だというのに、卒業パーティーの準備をしてるのだ。聞けば一年前の先輩方もそうだったらしいので仕方がないのか……?第三王子と公爵令嬢はいつも優雅にお茶を飲んでる印象なんだけど……。
気を取り直して、卒業パーティーのエスコートを申し入れたら、もしかしたら裏方に回るかもしれないと申し訳無さそうに言われた。
嘘だろう!?初めて他人に殺意を覚えた。しかも相手は自国の第三王子だ。
それでもなんとかドレスを贈る約束はした。けど新歓パーティーの時と同じく、抑えたものがいいそうだ。
学園での最後のパーティーなのに……。せめて彼女は僕のだとわかるようにしよう。
冬が過ぎ暖かくなってきた。今日は卒業式だ。
早めに会場に着いたけど彼女はまだ来てなかった。どうしたんだろう?彼女ならきっと誰より早く来ていると思ってたのに。
しばらくして現れた彼女に声を掛けようとしたけど、友人達の方が早かった。そのまま嬉しそうに女子生徒の輪に入ってしまった。
僕達のクラスは女子生徒が少ないためか、とても仲が良いんだよね……。
その後、形式通りの式も終わり、僕達は卒業が認められ、残すは卒業パーティーだけになった。
自室でタキシードに着替える僕はとても機嫌がいい。彼女が卒業パーティーに参加できることになったのだ。第三王子も卒業生を裏方として使うのはマズイとさすがに気づいたようで、王宮から何人か連れてきたらしい。お陰で今日は彼女をエスコートすることができる。
鼻歌まじりで髪を整える。前に何となくやってみたようにサイドを細かく編み込み、パーティーらしくダイヤを飾った。うん、前より上手くいった。タイとチーフは彼女に贈ったドレスと同じく黄色地に青い刺繍のものだ。
伯爵家のタウンハウスに馬車で向かう。これも初めてだ。思わず顔が綻んでしまう。
扉から出てきた彼女は息をのむほど綺麗だった。エンパイアラインの輝く黄色のドレス。裾の青の刺繍と耳元のサファイアのピアスが、さらに僕のものだと示しているようだ。
「ああ!思った通りだ。すごく綺麗だよ」
「ありがとうございます。本日はよろしくお願いします」
僕はかけ寄って手を差し出すと、彼女ははにかんで遠慮がちに右手をのせた。緊張してるのかな。
『僕が一緒にいるから大丈夫だよ』という思いを込めて柔らかい手をそっと握ると、彼女は驚いたように顔を上げた。ふたりの距離が近かったから、僕の視界は彼女の可愛い顔でいっぱいになった。
それからふたりで卒業パーティーの会場に入ると、予想通り女子生徒達に取り囲まれた。いつもなら彼女を取られてしまうところだったけど、今日は頑張って彼女の隣を守った。
彼女の幸せそうな顔を一番近くで見られて、最高に幸せな日になった。
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