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ネオルト男爵家との食事会 side A
しおりを挟む今日はネオルト男爵家との顔合わせの日。両家の顔合わせと言ってもレストランでの食事会だ。
貴族の婚姻は家の繋がりを重要視するので、婚約を結ぶ際はお互いの領地を行き来しながら交流を深めることが多い。
兄のときも王都のタウンハウスに招いたあと、春休みにお互いの領地で何日か過ごしていた。……私は行けなかったけど。
けど今回は、男爵家が領地のないこと、我が家の領地が遠方にあり仕事で多忙な男爵はすぐには来られないこと、私達も就職や進学を控えていることを踏まえて、この形になったそうだ。
兄のときも同じタイミングだったから大変ではあったのだけど……。男爵様がお忙しいなら、後で来ていただいた方がいいわ。せっかくならゆっくりしてもらいたいもの。
今日のレストランは男爵家が手配してくれた。なかなか予約のとれない人気店だ。
男爵家の屋敷ではないのね……。
古くは、娶る側が相手の家族を屋敷に招き入れ、結婚後の生活を見せることで誠意を示したのだそうだ。
兄のときも食事や装飾に双方所縁のものをふんだんに取り入れて、相手への敬意を演出していた。……少しやりすぎてた気もするけど。
最近では貴族でもレストランで行うことも増えているそうだ。男爵家は新しいから、伝統的な考えには拘らないのかもしれない。
男爵家に嫁ぐのだから、私も柔軟に考えられるようにならないといけないわ。……兄のときと比べてしまうなんて良くないわよね。私は自分で思っていたより、我が家の当たり前に囚われてるのかもしれない。
両親と兄と4人で馬車に乗り、王都の高台にあるレストランに向かう。エントランスには支配人が待っていて、大きな窓から王都を一望できる眺めの良い部屋に案内された。
男爵家はまだ来ていないようだ。約束の時間にはまだ早いものね。せっかくだから窓からの眺めを楽しんでよう。
しばらく母と景色を眺めていると、時間ぴったりに彼とご両親が現れた。
彼と目が合うと緊張しているように見える。
「これはこれは、お待たせしました」
ネオルト男爵が鷹揚に声を上げた。……うちの方が爵位は上のはずなのだけど……。あまり気にしない方なのかしら?
横目で父の様子を伺うと、言葉を返さずに微笑んでいる。
「ネオルト男爵家の長子ジェラルドと申します。本日はお時間をいただきありがとうございます」
彼が一歩前に出て、私の両親達に挨拶をした。彼の丁寧な態度に、とりあえず席につき話をすることになった。
初めてお会いする彼のお父様は、落ち着いた色の金髪に茶色の瞳の一見優しそうな方だった。確か年齢は私の父の少し上。顔立ちは違うけど、笑うと雰囲気が彼と似ている。
彼のお母様は大輪の薔薇のような方だった。何ていうか、凄い。顔立ちも輝くような色味も彼とそっくりなのだけど、雰囲気が妖艶な感じがする。白地に深紅の薔薇模様の艶やかなドレスもとてもよくお似合いだ。男爵様と年の差もあるように見える。
両家でしばらく会話をしていると、男爵は機嫌よさそうに兄に大学について聞いてきた。
「私は領地経営を主に学んでますが、今は特産開発に繋がりそうな加工技術についても研究してます」
お兄様、そんなことをしてたのね。忙しそうにしているはずだわ……。
それを聞いて男爵様は笑い声を上げた。
「そうですか。息子にはこれから事業経営と、他国と協力した事業展開について学ばせる予定です。学内で会いましたらどうぞよろしく」
他国との事業展開……。それも初めて聞いたわ。
「ところでノーステリア領は風光明媚で、特に夏の避暑地に良いだと思うのですが、そういった利用はされないのですか?」
男爵は続けて父に質問してきた。
「避暑地としての利用はすでにされております。ただ我が領に別邸を構えてくださってる方々は、王都の柵から離れての時間を大切にされてましてね」
そうなのだ。あまり表立ってはいないけど、うちの領地には貴族の別邸が結構存在している。お忍びに使ってる方も多いし。
「開発はなされないと」
「そうですね。全くとは言いませんが、我が領を好いてくださってる方々を大切にしたいと思っております」
うんうん。時間を重ねて得た信頼は特に大切にする。領地の個性を守り育てるのが我が家の方針なのよね。
「なるほど!流石、伝統ある伯爵家は私どもが計り知れぬ考えをお持ちですな。ははは」
「…………」
帰りの馬車の中、両親も兄もほとんど何も話さなかった。
後日、当人達が望むのならと婚約は交わされた。政略的意味のないことも何故か書き加えられた。
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