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校舎とは離れてはいるものの、しっかりと学校の敷地内にある質素なカフェに、姫神と如月はテーブルに向かい合っていた。
ここのカフェを営んでいるのは意外な事に全員この学校の教師なのだ。しかも今日カウンターで仕事をせっせせっせとこなしているのは俺達のクラスの副担任の谷川先生。一応ボランティアということで担当する先生はランダムなのだが、だいたいこのカフェに来るとあの谷川先生がいつもせっせせっせと仕事をこなしている。谷川先生は教師の中でも割と評判が良い。歳は確か20代半ばで眼鏡をかけた女性の先生。栗色の肩まで伸びた艶のある髪に、垂れた大きい目。いつもおどおどしているが、親身になって生徒達に向き合う姿勢が評価されているのだろう。現に、俺がよく図書室にいる時に気さくに声をかけてくれたのはいつもあの人だったのだ。
_あれ?なんでだろう……誰かの事を気にした事なんてもう随分としたこと無かった筈なのに……
「…聞いてる疾?」
「………!」
_と、ここで何か冷たいものがピトッ…と頬に触れ数センチほど身体が上下した。
「もう……なんで谷川先生の方ばっか見てるの?」
「ん………?ああごめんごめんちょっと考え事してた、なんだっけ?」
視線を姫神へと戻すと、アイスコーヒーのグラスを片手に若干ムスッとした表情をしていた。
「だーかーら…疾が私を誘うのって初めてだから、何か魂胆があるんじゃないの?って聞いたんだけれども!」
姫神の手にもつグラスが揺れカランカランという音が鳴る。
この時、なんだか俺は改めて涙が出そうになった。
姫神が…いなくなってしまったはずの人がそこにいる。目の前で俺に向けて話しかけてくれる。
あの時、血溜まりの中にあったピクリとも動かなかった彼女の身体__駄目だ。今思い出しただけでも何かが込み上げてきた。
ああそうだ。あれを無かったことにする為に俺はリリィからチャンスを貰った。
変えるんだ。あの結末を。
「はははっ。お見通しみたいだなやっぱり……なら隠しても意味無いよな」
そうして俺はブレザーのポケットへと手を伸ばす。
記憶だと確かここに……
「……?何かあるの?」
「ちょ、ちょいまち」
あれ……ない……?
両サイドのポケットを確認するがお目当てのものは見つからない。
身体中に冷たい汗が吹き出る。
(あれがないと始まらないんだがー!!)
『疾様!左側の胸ポケットです!』
と、脳内に響いたのはリリィの声だった。
きっと今もこの状況を見てくれていたのだろう。
即座に左側の胸ポケットを探ってみるとそれは見つかった。
(ありがとうリリィ…助かった……!)
一応脳内で返事をしつつ俺はそれを取り出し、テーブルに置いて姫神へ見せる。
「こ、これは?」
「さて、映画のチケットがここに2枚ある」
姫神はただ目をぱちぱちさせてこちらを見てくる。
「良かったら明日、俺とあの人気の映画…見に行かないか?」
ここのカフェを営んでいるのは意外な事に全員この学校の教師なのだ。しかも今日カウンターで仕事をせっせせっせとこなしているのは俺達のクラスの副担任の谷川先生。一応ボランティアということで担当する先生はランダムなのだが、だいたいこのカフェに来るとあの谷川先生がいつもせっせせっせと仕事をこなしている。谷川先生は教師の中でも割と評判が良い。歳は確か20代半ばで眼鏡をかけた女性の先生。栗色の肩まで伸びた艶のある髪に、垂れた大きい目。いつもおどおどしているが、親身になって生徒達に向き合う姿勢が評価されているのだろう。現に、俺がよく図書室にいる時に気さくに声をかけてくれたのはいつもあの人だったのだ。
_あれ?なんでだろう……誰かの事を気にした事なんてもう随分としたこと無かった筈なのに……
「…聞いてる疾?」
「………!」
_と、ここで何か冷たいものがピトッ…と頬に触れ数センチほど身体が上下した。
「もう……なんで谷川先生の方ばっか見てるの?」
「ん………?ああごめんごめんちょっと考え事してた、なんだっけ?」
視線を姫神へと戻すと、アイスコーヒーのグラスを片手に若干ムスッとした表情をしていた。
「だーかーら…疾が私を誘うのって初めてだから、何か魂胆があるんじゃないの?って聞いたんだけれども!」
姫神の手にもつグラスが揺れカランカランという音が鳴る。
この時、なんだか俺は改めて涙が出そうになった。
姫神が…いなくなってしまったはずの人がそこにいる。目の前で俺に向けて話しかけてくれる。
あの時、血溜まりの中にあったピクリとも動かなかった彼女の身体__駄目だ。今思い出しただけでも何かが込み上げてきた。
ああそうだ。あれを無かったことにする為に俺はリリィからチャンスを貰った。
変えるんだ。あの結末を。
「はははっ。お見通しみたいだなやっぱり……なら隠しても意味無いよな」
そうして俺はブレザーのポケットへと手を伸ばす。
記憶だと確かここに……
「……?何かあるの?」
「ちょ、ちょいまち」
あれ……ない……?
両サイドのポケットを確認するがお目当てのものは見つからない。
身体中に冷たい汗が吹き出る。
(あれがないと始まらないんだがー!!)
『疾様!左側の胸ポケットです!』
と、脳内に響いたのはリリィの声だった。
きっと今もこの状況を見てくれていたのだろう。
即座に左側の胸ポケットを探ってみるとそれは見つかった。
(ありがとうリリィ…助かった……!)
一応脳内で返事をしつつ俺はそれを取り出し、テーブルに置いて姫神へ見せる。
「こ、これは?」
「さて、映画のチケットがここに2枚ある」
姫神はただ目をぱちぱちさせてこちらを見てくる。
「良かったら明日、俺とあの人気の映画…見に行かないか?」
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