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本編
58.「ヘラヘラした真っ白いガキ」
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「捨てたぁ?」
「うん。魔王は私だってのに勝手に指示出すし、自分中心だし、挙句の果てに女が魔王なんて言語道断、俺がなる……ってさ」
「そ、それで別れたのはいつ頃だ?」
「確か、2月。結婚して18年と3ヶ月だよ、18年と3ヶ月!よくこれだけもったよ、私」
何かを思い出しながら自画自賛するルル。よほどその元夫と馬が合わなかったのだろう。元々ルルは熱しやすく冷めやすいタイプで、9人の子供を産んだがほぼ全員父親が違う。
本人は決して遊んでいる訳では無い、と力説してはいるが実際のところどうなのやら。
さて、フィルとリィカはルルの恋愛事情より、元夫のことが気にかかっていた。ルルと別れた時期が、ウィルがどこぞの貴族に養子に入った時期、刺客がフィルの元に来始めた時期と妙に被るのだ。
「因みにその元夫に懐いていた、仲良くしていた子供は分かりますか?」
「あー、しいて言うなら2、7、9番目の子達だね」
「トゼル、セゼル、ナゼルの事なのです」
「トゼルはあくまで自分の正義感に従って動く奴だから大丈夫だろうよ。セゼルは注意が必要だな」
とりあえず魔族全体が敵に回るという最悪の予想は外れてくれたが、まだ魔王の子供が敵に回るかもしれない。そんなフィルの考えを見抜いてベルゼブブが詳しく言った。
「ルルの元夫がウィルに関わっているかも、何が目的かもよく分からない……。ただウィルは"世界移動"に介入するっていうのを個人でできるはずがないしな」
「スズランが作った"道"に介入したのか、そいつは?」
「え、あ、はい。そうです」
フィルの独り言にベルゼブブが反応し、咲夜達は少し驚く。ベルゼブブがスズランの存在を知っていたのが少し以外だったのだ。ミドルも知っているらしく、ほんの少し眉間に皺がよっている。
「父様、スズランって誰?」
「ヘラヘラした真っ白いガキ」
「へ、へー」
「で、そのウィルってやつは、スズランの作った"道"に確かに介入したんだな?」
「はい。その上、使えないはずの魔法を使ってきたので危うく"狭間"に落ちるところでした」
フィルの話が進むにつれ、ベルゼブブの表情が険しくなってゆく。聞いているだけの人も、スズランを知らない人も、初代魔王がそれほど危ぶむということで表情が引き締まる。
「……厄介だな」
「なのですー」
どういう事、と顔に貼り付けて不思議がる咲夜達。ウィルが何かイレギュラーなことをしたのは理解できるが、どうしてそこまで危ぶむのか分からないのだ。それに気付いたらベルゼブブが説明する。
「スズランのやつが作った"道"では魔法が使用できないと定義されてた。で、その定義を覆したのがウィルって奴だ。定義を覆せるのは、その定義を作った者と同等かそれ以上の力を持つ者だけなんだよ」
「えっ……。じ、じゃあ、ウィルには 神と同等以上の力があるんですか……?」
「いや、それはないだろ。あったらリュカなんか蹴落として竜王になってるだろうしな」
「つまり、スズランと同じ存在がウィルに憑いてるってことです?」
「ウィルは神が憑いた者……ってことか」
流石の元魔王も深い溜息をつき、眉間をほぐすように揉む。フィルの呟きが、どこか絶望的な声音になってしまったのも仕方の無いことであろう。
「うん。魔王は私だってのに勝手に指示出すし、自分中心だし、挙句の果てに女が魔王なんて言語道断、俺がなる……ってさ」
「そ、それで別れたのはいつ頃だ?」
「確か、2月。結婚して18年と3ヶ月だよ、18年と3ヶ月!よくこれだけもったよ、私」
何かを思い出しながら自画自賛するルル。よほどその元夫と馬が合わなかったのだろう。元々ルルは熱しやすく冷めやすいタイプで、9人の子供を産んだがほぼ全員父親が違う。
本人は決して遊んでいる訳では無い、と力説してはいるが実際のところどうなのやら。
さて、フィルとリィカはルルの恋愛事情より、元夫のことが気にかかっていた。ルルと別れた時期が、ウィルがどこぞの貴族に養子に入った時期、刺客がフィルの元に来始めた時期と妙に被るのだ。
「因みにその元夫に懐いていた、仲良くしていた子供は分かりますか?」
「あー、しいて言うなら2、7、9番目の子達だね」
「トゼル、セゼル、ナゼルの事なのです」
「トゼルはあくまで自分の正義感に従って動く奴だから大丈夫だろうよ。セゼルは注意が必要だな」
とりあえず魔族全体が敵に回るという最悪の予想は外れてくれたが、まだ魔王の子供が敵に回るかもしれない。そんなフィルの考えを見抜いてベルゼブブが詳しく言った。
「ルルの元夫がウィルに関わっているかも、何が目的かもよく分からない……。ただウィルは"世界移動"に介入するっていうのを個人でできるはずがないしな」
「スズランが作った"道"に介入したのか、そいつは?」
「え、あ、はい。そうです」
フィルの独り言にベルゼブブが反応し、咲夜達は少し驚く。ベルゼブブがスズランの存在を知っていたのが少し以外だったのだ。ミドルも知っているらしく、ほんの少し眉間に皺がよっている。
「父様、スズランって誰?」
「ヘラヘラした真っ白いガキ」
「へ、へー」
「で、そのウィルってやつは、スズランの作った"道"に確かに介入したんだな?」
「はい。その上、使えないはずの魔法を使ってきたので危うく"狭間"に落ちるところでした」
フィルの話が進むにつれ、ベルゼブブの表情が険しくなってゆく。聞いているだけの人も、スズランを知らない人も、初代魔王がそれほど危ぶむということで表情が引き締まる。
「……厄介だな」
「なのですー」
どういう事、と顔に貼り付けて不思議がる咲夜達。ウィルが何かイレギュラーなことをしたのは理解できるが、どうしてそこまで危ぶむのか分からないのだ。それに気付いたらベルゼブブが説明する。
「スズランのやつが作った"道"では魔法が使用できないと定義されてた。で、その定義を覆したのがウィルって奴だ。定義を覆せるのは、その定義を作った者と同等かそれ以上の力を持つ者だけなんだよ」
「えっ……。じ、じゃあ、ウィルには 神と同等以上の力があるんですか……?」
「いや、それはないだろ。あったらリュカなんか蹴落として竜王になってるだろうしな」
「つまり、スズランと同じ存在がウィルに憑いてるってことです?」
「ウィルは神が憑いた者……ってことか」
流石の元魔王も深い溜息をつき、眉間をほぐすように揉む。フィルの呟きが、どこか絶望的な声音になってしまったのも仕方の無いことであろう。
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